巫女を守りし風の竜
だが、それでも嘲笑の声は早苗の耳へと響き、彼女の心をズタズタにしていく。
そして早苗にとって最もショックだった出来事、彼女がひそかにあこがれていた男子も、それに同調していた声も聞いてしまう。
「‥‥そっか‥東風谷さんってそういう人だったんだ‥なんかショックだな‥‥」
ふとしたきっかけでその言葉を耳にしてしまった時に早苗が感じたショックはほかの比ではなかった。自身が抱いていた淡い思いまでもが無惨に踏みにじられた痛み、苦しみ、そして‥‥‥絶望。
そのときの記憶までもが、嫌でも鮮明に甦ってくる。
「やめて‥お願い‥もう‥‥‥やめてぇ‥」
まるで世界のすべてが自分を否定し、蔑み、哀れんでいるかのような孤独感を早苗が感じ始めた‥‥その時!
「早苗!しっかりしなさい!」
その声を聞いた瞬間、早苗は我に返る。そして顔を上げた彼女の目に映ったのは『つい一瞬前に放たれ』自分に向かって飛んで来る無数の魔力弾の輝きだった。
よけられない!
直感で早苗はそう確信し、直撃の衝撃に備えて守りの構えを取った‥次の瞬間!
『竜符!螺旋描きし三つの柱!』
その宣言が聞こえた次の瞬間!早苗がいる場所を中心に光弾を伴った巨大な竜巻が巻き起こり、迫り来る魔力弾の攻撃から早苗を守る!
そして次の瞬間、早苗が目にしたのは空間を渡って突然出現した『見知らぬ人物』の後ろ姿だった。
「‥‥これは耐久型のスペルカード。三つの大竜巻を生み出し、一つが術者もしくは任意の誰かを守り、残りの二つの竜巻から放つ弾幕で相手を攻撃する。つまり、これは相手を倒すためではなく、誰かを守るためのスペルカード」
そう言いながらその相手・嵐は早苗が手放した大幣を手に、早苗に対して背中を向けたまま油断無く周囲に視線を這わせる。しかし‥‥そんな嵐の後ろ姿に対して早苗は‥‥