身の程知らずな挑戦者
「へぇ~そこのあんた、やるじゃない!」
突然二人の耳に生意気そうな少女の声が聞こえてくる。
「誰です!」
声のするほうへと視線を向ける二人、
そこに浮かんでいたのは人間にすれば十歳くらいの少女。だが、背中から生やしている蝶のような羽と彼女の周囲に漂う白い半透明の塊が、彼女を人以外の何かである事を如実に物語っていた。
「い、一体何者ですか!あなたは!」
勇ましく手にした大幣を振りかざしながら、早苗がその少女に対し誰何の声を上げるが、彼女はそれを無視し、嵐に対してこう言う。
「今、雨雲を吹っ飛ばしたそこのあんた!あたしと勝負よ!」
「断る」
「む!むむ~!何でよ~!」
にべもなく拒絶する嵐に憤る少女。だが、それでも嵐は取り合わない。
「‥‥あんた、多少雰囲気は違うけど妖精でしょ?あたしは自分を安売りしない主義でね、いちいち妖精一匹を相手に遊ぶ気はないのよ。
それでもあたしに挑みたければ、まず、それなりの力を持っていることを見せなさい」
「い、言ったな~だったらそっちのキャベツ!あたしと勝負だ!」
嵐が相手にしてくれない事を悟った少女は挑戦の矛先を早苗へと向けてくる。
「キ、キャベツ?それってわたしのことですか!む~!失礼な妖精さんですね!いいでしょう!相手になってあげます!先輩!見ていてください!」
そうして少女の挑戦にあっさりと応じた早苗は、ふわりと嵐の前へと進み出ると大幣を構えて戦闘態勢へと入る。
一方で嵐はというと‥‥
「‥‥早苗もまだまだね~あの程度の挑発くらい、軽~く受け流さないと」
「東風谷様は良くも悪くもまじめですからね」
実体化して自分の肩に乗る風と軽口を叩きながら事態を見守っていた。
「それにしても‥早苗がキャベツなら霊夢はトマト?それともリンゴかしら?」
「では霧雨様はさしずめゴボウでしょうか」
「あの子、ホウキに乗っているしね」
「然り」
ここで一章が終了、二章へと続きます。