妖精との弾幕戦
『あ~にんげんだ~』
『あそびあいてだ~』
『あそんで~』
能天気な声と共に、羽根を生やした少女たちが大勢、群れを成して飛んでくる。
「先輩!」
「‥‥妖精か、異変が起こると活気づくのよね、連中」
「た、たくさんいますよ~」
「早苗‥妖精相手の弾幕戦は初めて?」
「え‥ええ」
「‥‥‥んじゃ、そこで見ていなさい。蹴散らすから」
「え?」
嵐は腰に帯びていたホルスターから拳銃を抜く。両手に手にした拳銃‥どう見ても時代錯誤なリボルバー式の拳銃の引き金を彼女が引くと、まるで多銃身のガトリング砲のように大量の光弾が光弾攻撃を仕掛けようとしていた妖精たちに向かって撃ち出される。
『うひゃぁぁぁぁ~』
それを見た妖精たちは、あわてふためきながら回避しようとするが、嵐の光弾によって形成された弾幕に逃げ場を失うと次々撃ち落され、消え去っていく。
「あらら‥ずいぶんあっさり消えちゃうんですね~」
「異変が起きると、たいがい自然のバランスが崩れるからね。連中の存在も不安定になる。だから、少ない衝撃を受けただけでも存在を維持できなくなって消えてしまう」
運よく回避した一部の妖精たちも、嵐が弾幕の中に混ぜて放っていた追尾弾に追いかけられると、さすがに逃げ切れず、消滅していく。
「それにしても‥‥容赦ないですね~先輩~」
「‥‥大丈夫よ。どうせ連中は自然さえなくならない限り、しばらくすれば復活するし」
「‥‥そ、そうなんですか」
「そうなのよ‥‥でも、だからこそ無鉄砲で困るのよね‥そろそろ右が尽きるか‥」
やおら、嵐はそう呟くと左手の拳銃で射撃を続けつつ、右手に持っている力を使い果たした拳銃をホルスターに収めると、別のホルスターに収めていた銃を取り出して射撃を継続する。
そして、左手に持っていた拳銃の力が無くなると、また同じように‥‥
「すごい‥‥」
そうして攻撃の手を休めない嵐の様に早苗はしばし見とれていたが‥‥やがて、
「そ、そうだ‥‥先輩、わたしも手伝います!」
その早苗の声に嵐は一瞬、逡巡するが‥‥
「‥‥ま、いいか。んじゃ、あたしの後ろからでいいから、撃ちもらした相手をお願い」
「了解です!」
そうして早苗も攻撃に加わり、二人は妖精たちを撃退する。しかし‥‥今の弾幕戦で放出された力に誘われたのか、更に無数の妖精たちが前方の彼方から雲霞のごとく見え始める。