プロローグ 前編 雨神の挑戦
本編の前日譚に当たります。
人と妖が共存する忘れられし幻想の楽園、幻想郷。そしてその幻想郷を守る使命を担う博麗神社の巫女、霊夢と外界からこの幻想郷にある妖怪の山へと転移した守矢神社とのいさかいが起きる少し前のある日、秋雨降りしきる守矢神社を訪れる一人の少女がいた。
その少女は見かけに似合わぬ不敵、というよりは生意気そうな表情で神社の本殿を睨みつけると‥‥
「ここね!外の世界から来たっていう神社は!誰でもいいから出てきなさい!」
「‥‥誰ですか?あなたは?」
訪問者の勇ましい声を聞きつけて神社の本殿から姿を現したのはこちらも一人の少女。その少女に訪問者は名乗る。
「あたしは天瑞時雨子!この幻想郷に古くから住む雨神よ!あんたたち!新参者の神のくせにこのあたしをないがしろにするとはいい度胸ね!」
訪問者が発したその挑発的な名乗りに対し、相手の少女は傲然たる振る舞いで応じる。
「‥‥そちらこそ言ってくれますね。この守矢神社は外の世界においてははるか古より存在する由緒正しき御方を祀る神社なのですよ」
「ふん!外の世界でどれだけ有名だったか知らないけど、そんなのここじゃ何の関係もないわ!」
そう言い合って互いに一歩も引かぬ両者。その時、神社の本殿の奥から御柱と注連縄を背負った女傑が姿を見せる。
「‥‥ほう、面白いねぇ」
「神奈子様!」
「時雨子とか言ったか?あんたがもし、この早苗に勝てたらあたしが相手になってやるよ」
「‥‥ふん、見くびられたものね!神であるあたしが人間相手に負けるわけないわ!」
だが‥‥‥現実は非情である。




