援助その三 『援助の確執』
翌日あいにくの天候の中、イズミたちの学校では大騒ぎになっていた。
「これ逆援交じゃないの?」実波はスマホで撮った証拠の写メをイズミに突きつける。
「え? てか、なんでこんな写メ撮ってんの?」イズミはこそこそと後をつけてきてこんな写メまで撮っていた、実波に逆ギレする。
「このおっさんキモくね?」そこへ男子がたちが手を叩きながらおちょくるように割って入る。
「エンコー! エンコー! エンコー!」エスカレートしていく男子たち。
これではらちがあかないとイズミたちは場所を変えて屋上に行くことにした。
「それは、あたしの親戚のおじさんで生活保護を受けていて……だからお金を仕送りにいってるだけよ」イズミは説明するもわかってもらえずじまい。
「逆にそうだとしても、あなた金づるにされてるかもよ?」この確信めいた実波の言葉に一瞬ドキっとした。たしかにしんぴょうせいはあるからだ。
「あたしが、一緒に行って問い詰めてあげる」そういうと実波は教室に戻っていった。
夢見るお嬢様の心は揺らぎ始めていた。
昼時に信介はネトゲーに使うポイントカードをコンビニに買いに行く。
「一万円分お願いします」うっすらとヒゲが伸びてきいる三日目に風呂に入ったものの服は一週間同じ服を着ている。洗濯なんてたまにするかしないかだ。
生活保護と毎月イズミからの援助金一万円でネトゲーにはまる悪循環を、イズミは作ってしまったのだ。
夕方の四時ぐらいにドアをノックする音が聞こえてきた。
「誰だよ……今いいとこなんだよ。ったく」めんどくさそうにドアを開けるとイズミが立っていた。
「あ、あの……お風呂はいつ入りましたか? その服昨日も着てましたよね?」もじもじしながら聞くイズミ。
「帰れ」ドアを閉めようとしたとたんそこへ実波が横から口を挟む。
「あなた、警察に言いますよ!」実波の言葉に一瞬ドキっと肝を冷やす信介だったが、逆に言い返した。
「俺は、頼んじゃいない。悪いのは勝手に仕送りしてきたお前だ」イズミの顔に指をさしながら無実を訴える。
「断れなかったんですか?」正論を言ってきた実波に信介は言葉をにごらす。
「怖いね~。実に怖い」そこへパチンコで勝って上機嫌の連太がやってきた。
「君たちは逆に脅迫をしてるわけだからね。金を俺たちに渡してヤバくなったら警察かい? だったらはじめからやるんじゃないよ」連太は怒鳴り声を上げた。
「け、警察呼びますよ?」ビビりながら実波はスマホを取り出して警察に連絡を取ろうとしたとき連太が十万を見せびらかしてきた。
「お金なら返せるよ。計六万だったよね? 仕送りしてきたの」連太は六万をイズミに渡して勢いでチャラにしてもらうことにした。
「中には悪いおっさんたちがいるから気をつけてね」連太は手を振りイズミたちを見送った。
ふに落ちない実波は腹を立てていたが、イズミはモヤモヤした気持ちでいた。
「あのおっさんに信介さんはお金を横流ししていたのかな?」イズミは悲しくて今にも泣きそうで胸がはちきれそうだ。
「最低だよね」実波はイズミを抱き寄せて背中をさする。
「あたし行ってくる」そういうとイズミは信介のもとへと走っていった。息切れしそうなぐらい目いっぱい走って信介のドアをノックする。
「あんだよ、うっせな」ネトゲーに負けてイライラしている信介は怒鳴ろうとしたが、逆にイズミが声を張り上げた、
「信介のバカ! あたし、あなたのことが本当に本当に好きだったのに。だからおこずかいやバイトで稼いだお金を仕送りして援助して少しでもお役に立ちたかったのに」唇をかみしめて涙を流すイズミ。
「いやー、今時いないよこんな純情な子」連太はそれを見て自分のやってきたことを反省する形となった。
信介もその思いに感化されて身のわきまえを痛感した。
たった一七歳の少女にダメおっさん二人は自分の愚かさを気づかされるとは思いもよらなかった。
「ごめんな……イズミ、俺間違ってたよ。人生を投げ出していたんだ。お前という存在がいなければ、俺はもう死んでたかもな」信介は近々自殺しようとしてたことを明かした。
それは生きていてもろくなことないし、生きる意味が見つからなかったからだ。
ただ食って、飲んで、クソして自分は何一つ社会に貢献してないと信介は思い悩んでいたのだ。
誰にも相談できないでいた。
ただ唯一の救いは死ぬ勇気がなかったことだ。
遺書を部屋の中からもっきて破り捨てる信介。
「しんちゃん、何で相談してくれなかったんだよ? みずくさいぞ」連太は泣きながら信介の手を握りしめる。
「ごめんよ、連さん……こればかりは言い出せなかった。でも、俺にも小さな希望ができた。それは惚れた女を幸せにしなきゃならいってことだよ」照れくさそうにイズミの顔を見つめる。
「信介さん……私と付き合ってください」イズミは信介に告白する。
「ダメだ……」無情にもそれを断る信介。
「どうして、あたしに惚れてるんでしょう?」イズミは信介の胸に飛びつきせがむ。
「今はダメだ……俺は仕事をみつけなきゃならないし、お前はまだ未成年だ。三年後にまだ俺のことが好きであれば付き合ってやる。それまでいっぱい青春を楽しめよ」信介はそういうと部屋の中に戻っていった。
「イズミちゃん、君はまだ若いしこれからいろんな出会いが待っている。だからしんちゃんのことは俺に任せとき」連太は優しくイズミに声をかけると、信介の部屋に入っていく。
「しんちゃん、大人だね。いやー今の時代君らみたいな純粋な人はいないよ。泣きな胸を貸してやるよ?」信介の背中をポンと叩く。
「気持ち悪いよ。連さん」ダメおっさんたちは深夜飲み明かす。




