援助その二 『援助の横流し』
翌日、晴天い恵まれた月曜日。
学校帰りに、親友の実波と別れると、二万を封筒に入れて信介のアパートに向かうイズミ。しかしドアをノックしても誰も出てこない。
仕方なくメッセージを封筒に書いてドアのポストに封筒を入れて行く。
五時過ぎに信介は連太と一緒にパチンコから帰ってきた。信介はうるさいところが苦手でパチンコには普段行かないのだが、この日は連太に無理矢理連れてかれたのだ。
「じゃあ、また明日ね。しんちゃん」連太は自分の部屋に戻り晩酌の準備をする。
信介がポストを開けるとメッセージ入りの封筒があった。
「これでおいしいもの食べて下さい。あとお風呂にもちゃんと入ってヒゲも剃ってね。清水イズミより」メッセージにはそう書いてあった。
「めんどくせえな。まさか俺に惚れてんのか?」信介はその封筒を開けて目を丸くした。二万円が入っていたからだ。
「おいおい、こいつは逆援助じゃねえか?」脳裏にいろんなことが思いうかぶ。
(警察に捕まりはしないか? 法律に引っかからないか?)あれこれ考えてるうちに連太がドアを開けて入ってきた。
慌てて封筒を後ろに隠す。
「しんちゃん、何隠したん?」そう言って近寄ってくる連太を左手で押しのける。
「なんでもないすよ」明らかに動揺している信介に連太は左手を掴み無理矢理手を引っ張る。力は連太のほうが上なのでもうどうしようもない。
「実は……」いきさつを説明する信介。
「おいしすぎる。儲けもんじゃん。たぶんそれは体の関係をもたなければ警察には捕まりはしないよ。後は区役所の職員にどう隠すかだな。見つかればお金をその分返さないといけないからな」連太は秘密にしてやる代わりに一万を横流しするように言ってきた。
「飲むか?」グイっと顔を近づけてにらみつけてきた、
「わかった。連さんに毎月一万渡すよ」不本意ながらも交渉は成立し二人は酒を交わし合う。
そんな事とはつゆ知らず、イズミは陽気な気分でベッドにもぐりこみ恋愛ファンタジーを膨らましていた。
「あたしの王子さまがようやく見つかった。フフフ」少し夢見がちのお金持ちのお嬢様はそのまま眠りについた。
その後、信介は毎月の一万円をネトゲーの軍資金につぎ込むことにした。生活態度が改まるどころか、以前に増してネトゲーに没頭することとなった。
そして連太はパチンコに横流しの一万を消費する始末。ダメ友オヤジたちは純粋な少女の恩を仇で返していた。
一ヶ月が過ぎてまた二万円が援助されるころに、実波は最近のイズミが浮かれているのを目の当たりにして怪しいと後をつけていった。
お嬢様がボロアパートに行くものだから実波は不審に思いしばし様子を見ていた。するとイケメンの中年男が出てきて、イズミが何やら封筒を渡している。
それをスマホの写メで激写して明日学校で問い詰めるつもりでいた。実波はその場からひっそりと立ち去り帰宅する。
「やっぱり、ヒゲ剃ったほうがイケメンだよ」信介に二万円が入った封筒を手渡すと走りゆく。
「あらやだ、かわいい子じゃない」陰でこっそり見ていた連太ごまをすりながら近寄って、一万円を催促する。
「あーざす」一万円を受け取るとわざとらしく頭をペコペコと下げる。
「連さん、もうやめない?」言いにくそうに口を挟む信介。
「何でよ? おいしいじゃない。大丈夫だって体の関係さえ持たなければさ」もはや連太はイズミをおいしい金づるとしてみていた。
だが、信介は警察に捕まるとかじゃなくかわしそうに思えてきたのだ。




