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援助学生  作者: 琴内光乃
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援助その一 『援助開始』

※過激な表現は控えておりますが、多少あるかもしれません。

心地よい春の風が吹き抜けるとある豪邸の庭園で二人は出会った。

偶然か?

必然か?

どっちでもいい。

清潔感あふれる高青年に少女はの心はときめいた――


清水家では親戚が集まりご令嬢のイズミの誕生パーティーが行われていた。

「あの、よければ名前を教えてください。私は清水イズミ」風にあおられ乱れるストレートの長い髪を整えながらその男性に言葉をかけた。

「お嬢様がこんな貧乏人なんかと口きいていいのか?」そっけない態度をとり男はポケットに手を入れて歩いて行ってしまった。

それが四月七日の出来事だった。


その後一ヶ月が過ぎた日曜日に、イズミは両親から聞き出した住所を訪ねると古いボロアパート。

おそるそおそるドアをノックするとヒゲをこれでもかと伸ばした男性が出てきた。髪の毛はぼさぼさでひどく臭い。

「あん? 誰?」その男は眠たげに大きなあくびをして頭をボリボリとかきむしるとフケが落ちてきた。

「あの、飯島信介(いいじましんすけ)さんは引っ越されましたか?」イズミはその気持ち悪い男にドン引きしながらおそるおそる訊く。

「俺が、飯島だけど」めんどくさそうに答えると信介はドアをバタンと閉めた。


ショックを隠せないイズミはもう一度ドアを叩く。

「うるせー、俺は今ネトゲーに忙しんだ」理不尽にキレられるイズミはふてくされそのボロアパートをトボトボと後にした。

家に帰り母親に二度と信介のところには行くなと説教される。

何もかもが理不尽。

同じクラスで親友の池内実波(いけうちみなみ)にこのことをスマホのメールで相談すると「やめときな」と返信が返ってきた。

「だよね……汚い男だったし……」ベッドに横たわり天井を見上げてボソっと物悲しそうに独り言をいう。


時計の針が五時を指すころに、信介はネトゲーに負けた腹いせにやけ酒をあおっていた。

「ったく、なんであいつがこんなとこまで来る。まさか俺のことを見張ってんじゃねえのか?」酒に酔ってブツブツと独り言を言いながらキレる信介。

コンコンとドアをノックする音が聞こえてきた。

「うっせーな、誰だよ……ったく」めんどくさそうにドアを開けると酒のつまみを持った男が立っていた。

「何、もうはじまってんの? しんちゃん」なれなれしいその男は信介の飲み仲間、藤田連太(ふじたれんた)、無職で生活保護を受けている信介のダメ友だ。

「しんちゃんは、まだ三十三だからこれからだよなあ。俺なんて三十六で終わってるよ」酒をクイっと口に流し込みながら信介と語り合う。

「連さん、俺はもう人生積んでるよ」コップに酒を注ぎながら答える。

「何言ってんだよ。人生何が起こるかわかんねえよ?」信介の肩をポンポンと叩きながら大笑いする連太。

酒が空っぽになったころに連太はパチンコの勝負費を信介に借りる。

「連さん、貸しがもう四万じゃないすか……」と、言いつつもいつもお世話になっている連太に渋々一万を渡す。

「あんがとね。大勝ちしたら絶対返すから」連太は陽気に鼻歌を歌いながら、1階の自室へと帰っていった。

時計の針は十時を過ぎていた。

「あ~、風呂入らんとな。今日で一ヶ月か、大分ヒゲも伸びてきたしな」そういうとめんどくさそうに一枚刃のヒゲ剃りをもって風呂場に行く。


同時刻、イズミは湯船につかり信介の事を考えていた。

「生活保護か……きっとお金に困っているんだ。だから、お風呂にも入れないで不潔にしてるんだ」湯船のお湯を手ですくってはお湯を落とす。

不意に何かに気づいたように湯船から立ち上がるイズミは信介を援助をすることに決めた。

「こうするっきゃない!」手を握りしめて決意をすると早々とネグリジェに着替えて自分の部屋に戻り、自分の貯金通帳をみる。

今までのおこずかいとバイトでためたお金は五百万ぐらいはあった。これを信介に毎月二万仕送りに出しても問題ないと思ったイズミは明日早速仕送りに行こうと思いたつ。

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