表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

第四話 魔法適正

 

 次の日の昼食後、俺はクリスティーナに手を引かれ、屋敷の裏庭に来ている。

 裏庭には、エフィリアが先に来ていて準備運動をしている。

 今日は、魔法の練習の為、シャツに黒のハーフパンツと動きやすい恰好だ。

 エフィリアも似たような服装だが、上からマントを羽織っており、右手に長さ1メートルくらい、先端に文字の刻まれた木の杖を持っている。

 さながらゲームの魔法使いのようだ。

 クリスティーナは、ワンピースに薄手のカーディガンを羽織っており、彼女の手には銀色の先端に、青い宝石の付いた杖を持っている。

 そんな二人を眺めていると、準備が整ったらしい。

 

 「それじゃあ、魔法の練習を始めましょう、まず最初にアル君の適正を調べてみましょう。

 アル君、昨日言っていた魔法を使ってみてくれる?」

 

 「は~い、じゃあ火の玉を作ります!」

 俺は左手を前に出し、掌に火の玉をイメージし、魔力を込めていく。

 全身に魔力が流れているのを知覚し、その流れが左手に向うように魔力操作を行う。

 すると、掌から拳大の火の玉が出現した。

 

 「できましたー!」

 そういって母のほうに視線を向けると、母と姉は驚きの表情を浮かべてこちらを見ていた。

 (あれ?やりすぎた?)

 と内心冷や汗を流しながら、二人の反応を待っていると、我に返ったのか母が口を開く。

 

 「すごいわアル君!!初級魔法だけど、杖も呪文もなしに、こんなに速く魔法を展開できるなんて…

 それに魔力の流れがすごく速いわね、大人の魔法使いでもそんなに速くないわ」


 (なるほど、普通は杖と呪文がいるのか。それに魔力操作は速いに越したことはないんだな。)

 「練習して速く動かせるようになりました!」

 

 「なるほどね、じゃあ適正を調べる為に中級魔法を使ってみましょうか」

 「中級魔法ですか?」

 (やっと違う魔法を覚えるチャンスがきたぜ!!)

 「中級魔法の最初に覚えるファイヤーウォールをやってみましょう、エフィー、見せてあげて頂戴」

 「わかったわ母様、アル、ちゃんと見てなさいよ」

 そういってエフィリアは少し離れて空いてるスペースに杖を向ける。

 「我が炎よ、我が前にて炎壁と成せ、ファイヤーウォール!」

 するとエフィリアの前に3メートルほどの炎の壁が出来上がる。

 

 (やっべ、カッコイイ!!)

 その大きな炎壁を見惚れていると、エフィリアが胸張りながらこちらに振り向いた。

 「どうよアル、これが私の魔法よ!」

 「すごいねエフィー姉さん!僕初めて見たよ!」

 「私の魔法はまだまだこんなもんじゃないわ!上級魔法はまだだけど、中級魔法ならだいたい使えるわよ」

 そう言ってまた発展途上の胸を張るエフィリアに母が一言。

 

 「……エフィリア…炎を急いで消しなさい……」

 普段より低い母の声に、何事かと振り返ると、



 木が燃えていた…

 炎壁から1メートルほど離れた場所にあった木がだ…

 エフィリアは急いで炎壁を消したが、木に燃え移った炎は消えなかった。

 (魔法で作った炎は消せるけど、燃え移ったりすると消せなくなるのか)

 エフィリアは炎が消えず焦り始め、風魔法で消そうとするが余計燃え上がり始める。

 (炎に風送ったら酸素が供給されて余計燃えるのになぁ、まてよ?逆に風魔法で酸素を無くす事ってできるんだろうか?)

 などと考えながら、水魔法で消火作業を始めようとすると、木全体が凍りついた。

 

 木を凍らせた本人に目を向けると、彼女は寒気するほどの氷の波動を放ちながら静かに怒っていた。

 「エフィリア…あなたは家を燃やすつもりかしら?

 魔法も魔力の扱いも未熟なあなたが、よそ見して魔法を使うなんて…

 これはお仕置きが必要かしら?」


 対するエフィリアは、顔を真っ青にしながら弁解する。

 「これは…アルに姉の威厳を見せようとして…」

 「未熟なあなたに威厳もなにもないでしょう」 

 「…はい…ごめんなさい…」

 「罰として七日間の外出禁止と、私かお父様のいる時以外の魔法の使用を禁止します」

 「そんな…」

 「今回私がいなかった場合、炎が燃え広がっていたでしょう。

 外で同じ事があった場合、大惨事になる事もあるのです」

 「はい…わかりました…」

 「これからは魔法の種類を増やすより、魔力の使い方、魔法の制御を重点的に指導します。

 私から許可が出るまで外で魔法は使わないように」

 「わかりました…」

 

 話が終わると母の氷の波動が収まり、いつもの温和な母に戻る。

 「さて、それじゃあ続きを始めましょうか」

 (ボヤの後なのに中止にはならないのか…)

 「アル君、ファイヤーウォールは見ましたね?練習してみましょうか」

 「はーい! その前にかあさま、質問してもいいですか?」

 「ん?どうしたの?」

 「やっぱり魔法には杖と詠唱がいりますか?」

 「なくても大丈夫よぉ、杖と詠唱は補助の役割なの、杖にも色々種類があってね。

 魔法の暴発を防ぐ、魔法の威力を一定にする、魔石を埋め込んで魔法の威力、魔力の消費を軽減とか色々な杖があるわ。

 魔法はイメージが大切とされているけど、そのイメージの代わりとなるのが詠唱なの。

 詠唱を唱えることで、イメージ無しで魔法を使えるけど、詠唱に時間が掛かるのが難点ね。

 イメージは詠唱が必要ないけど、イメージ不足とかで魔法が発動しない、暴発などの危険もあるわ。

 焦っている時とかに、致命的なミスをして全滅とかもあったらしいの、だから今の主流は杖と詠唱が主流になっているわねぇ。

 他にわからない事はある?」

 「わかりましたー!」

 「それじゃあ魔法を使ってみましょうか」

 「はーい!」


 俺は頭の中でイメージする。

 (さっきの炎壁をイメージして片手を前に出して…)

 「ファイヤーウォール!」

 すると目の前に炎の壁が生まれる。

 (よっしゃぁー!出来たー!)

 と内心喜んでると炎壁が崩れそうになる。

 (あっぶねぇ、集中切らすと崩れるな…、これも要練習だな、維持できるようにして、複数の魔法を使えるようにしたいしね)

 そして炎壁を消し母のほうを見る。

 「できましたー!」

 

 

 母と姉は唖然としていた。

 「まさか一度見ただけで成功させるなんて…」

 「私、使えるようになったの8歳の時なのに…」

 二人はしばらく呆然としていたが、母が我に返ったようだ。

 「すごいわアル君!一度見ただけでファイヤーウォールを使えるなんて!」

 どうやら一発で成功するとは思っていなかったようだ。

 「アル君には私と同じ火の適正があるわね、エフィーとアル君の練習プランを考えなくっちゃ、楽しくなりそうだわぁ」

 「かあさま」

 「どうしたのアル君?」

 「他の属性もやってみていいですか?」

 「それはいいけど、魔力は大丈夫? 疲れたり眠かったりしない?」

 「まだ大丈夫です、眠くないです」

 「それならいいわよぉ、ちゃんと見てるから安心してやってみなさい。

 ただあぶないと思ったら止めるわねぇ」

 「わかりましたー!」


 そして俺は、ウォーターウォール、ウインドウォール、アースウォールを順番に発動させ成功させる。

 それで母と姉を何度も驚かせる事になる。

 

 

 「今日はアル君に何度も驚かされたわぁ、アル君の言った通り、基本の四属性全部に適正があるみたいねぇ、これはすごい事よぉ!」

 「一杯がんばりました…疲れました…」

 「子供の魔力は少ないから、中級魔法を四回も使えばすぐに魔力切れになるわ」

 (普通は中級魔法一回分もないはずなんだけどねぇ、三歳なのに魔力の総量がとても多いわぁ、これは将来が楽しみねぇ)

 疲労と睡魔でふらふらの息子を抱っこし家に戻る、そのまま息子の部屋に行くと、息子の専属メイドのフィーネが部屋の掃除している最中であった。

 「お疲れ様でございます。アルヴィス様は如何かされたのですか?」

 「魔法を使いすぎて疲れて寝ちゃったの、少し寝かせるから夕食前に起こしてあげて」

 「かしこまりました」

 私は息子をベッドに寝かせる。

 「今日は一杯頑張ったわねぇ、夕食前までだけど、ゆっくりおやすみなさい」

 そして寝ている息子の額に優しくキスをする。

 「それじゃあ後はお願いね」

 「かしこまりました奥様」

 そして私は部屋を出る。

 

 

 

 部屋を出た後、一緒に付いてきてた娘のエフィリアが、

 「私…一杯練習するわ!アルに負けないくらい!!」

 「エフィー、魔法は才能の世界よ?

 それを努力で磨き上げる事ですごい魔法使いになるわ」

 「それはわかってる、いつか抜かれると思うし、アルは将来すごい魔法使いになると思う。

 でも今は三歳の子供だもん。アルのお姉ちゃんとして、上にいて魔法を教えてあげたりしたいもん!」

 「あらあら、それじゃあかなり厳しく指導しなきゃいけないかしら?姉の威厳が保てるように」

 「うっ…頑張る…」

 (お姉ちゃんも大変ねぇ)と思う母であった。


 


 その日の夕食についてはあまり覚えていない。

 フィーネが食べさせてくれて、家族に話しかけられた覚えがあるけど、何を話したか覚えていない。

 魔法を使いすぎて、疲労と睡魔で意識が朦朧としてたようだ。

 その後部屋に戻り、そのままベッドに入り意識は途絶えた。



 




 その夜、夫婦の寝室


 「アルは基本の四属性全部に適正があるのか…」

 「えぇ、すごい才能だと思うわ、それにそれだけじゃないかもしれないしね」

 「他にもあるのか?」

 「まだわからないわ。ただ他にも才能がありそうな気がするだけ」

 「そうか…」

 「ねぇあなた」

 「なんだ?」

 「あの子の適正について、しばらく秘密にしようと思うの」

 「なぜだ?六歳になればすぐにバレるだろう」

 「だからよ、六歳までにあの子を、ある程度身を守れるように鍛えようと思うの。

 あの子の事が知られればすぐに広まるでしょう。

 あの子にとって、いい事も悪い事も降りかかってくるわ。

 あの子の力を利用しようとする者もいるかもしれない。

 あの子の力に嫉妬して嫌がらせをする者も出てくるかもしれない。

 王国はあの子を手に入れようとするかもしれない。

 他国がその力を危険視して命を狙うかもしれない。」

 「考えすぎじゃないか?」

 「考えすぎのほうがいいのよ。それくらい規格外なんだから。

 だからこそ、今のうちにあの子を鍛えようと思うの。

 魔法も、魔法以外の戦闘も、生きる為に必要な知識や技術を、あの子に叩き込むわ。

 何も三年で全部じゃないわ。あの子がこの家を出るまでにすべて教えられるように、今の内から始めようと思うの」

 「ふむ…」

 「私…間違っているかしら?」

 「俺には良い悪いの判断はできないな。だけどクリスがそう判断したなら、俺はそれでいいと思う。

 俺もできる限りあの子を鍛えよう。子供達にも秘密にするように言っておく」

 「ありがとう、愛してるわハミッシュ」

 「俺もだよ、クリスティーナ」


 そして夜は更けていく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ