第1話 転生後の自分
目が覚めて初めて見た光景は天井だった。
体が動かない為、目だけ動かして周囲を観察してみる。
すると部屋の掃除をしているメイドがいることに気付いた。
メイドはまだこちらに気付いてないのかテキパキと掃除をこなしている、その姿を見て俺は驚いた。
彼女は茶色の長い髪に少し幼い顔立ちの女性で、その頭にはダックスフンドのようなタレ耳がついていて、なおかつフサフサの尻尾があるのだ。
そんな彼女が。黒を基調に白いフリルの付いたエプロンのメイド服を着ている姿に、俺はある種感動を覚えた。
「あうっ、あぁ、あうわぁ」(異世界にきてよかったー!!)
興奮してる俺の声に気付いたのか、メイドがこちらに来て上から覗き込んでくる、何か言っているが俺はその言葉を理解できなかった。
「あぁう、あぅわぅ、あいぃ」(そういえば言語系の恩恵なんてもらってなかったな)
そんな事を考えながらとりあえず目の前のメイドに一言。
「たぁいよぉ!」(君、かわいいね!)
やはり言葉は通じずメイドはニコニコしながら部屋から出て行った。
(う~ん、まずは周りを観察しながら言葉を覚えないとなぁ、次に文字も覚えて、体が動かせるようになったら鍛錬と魔法の勉強、それに生産関係も勉強をしなきゃなぁ、適正の恩恵をフル活用して生きていくことになるだろうし、子供のうちに鍛えれるだけ鍛えなきゃな)
そんなことを考えてたらメイドが戻ってきた、そのメイドの後ろには見知らぬ女性が一緒におり此方に向かってくる。
その女性はこちらに話しかけ不意に俺を抱き上げ、ドレスの肩紐を外し胸を露わにする姿に、俺は気まずいもの感じてしまう。
(ミルクのほしいと勘違いされたのか、赤ん坊なら気にならないだろうけど、中身28の俺には羞恥プレイにしか思えないんだが…)
それでも栄養摂取のため授乳を終えると急に睡魔が襲ってくる。
(眠気に逆らえそうにねぇし、今日はここまでにしとくか)
そんなことを考えているうちに俺の意識は途絶えた。
次の日も周囲の観察を続けながら物思いに耽る。
昨日の後にきた女性は俺の母親のようだ。
乳母の可能性も考えていたが、まずドレスを着ていた事とメイドの女性に対する振る舞いからその可能性を除外した。
(あれは乳母に対するっていうか、主に対する振る舞い方だよなぁ、頭下げてたし)
そして俺は母親と認識した女性の事を考えてみる。
母親はロングの青い髪に赤いドレス、顔は少しタレ目で瞳は髪と同じ青、パッと見の印象としては温和な感じがする女性だった。
(母親には会えたけど父親にはまだ会えてないな、まぁまだ二日目だしすぐ会えるだろ)
そんなことを考えながら今日も周囲を観察してみる、まず思うのはこの部屋の作りである。
(建物の作りなんてよくわかんないけど、アニメのファンタジー物と大差なさそうだな、日本と比べるとだいぶ昔の建物っぽいけど…)
次に目につくのは本棚だが、書いてある文字がまったく読めない…
(こりゃだめだ、やることがなんにもないぞ… なにかやれることでも考えるか)
そう思いまた物思いに耽はじめる。
(まず言葉はゆっくり覚えていくとして、戦闘系に関しては子供だからまず無理だし、生産系にしても素材や調合の知識を覚える為に文字を覚えなきゃだし、魔法なんてそれこそどうやるかわかんねぇよ)
などとちょっと絶望に浸っている時であった。
扉からメイドと母親、そして見知らぬ男が入ってきた。
男は銀髪のショートで体は中肉中背、だが鍛えているのか身は引き締まっている。
瞳は琥珀色で顔は小さく整っていて精悍な顔立ちである。
(一緒にいるとこを見るとこいつが父親かねぇ)
そんな男は俺を見るとうれしそうな顔をし俺を抱き上げる。
(ちょっ、男に抱き上げられるとか勘弁してよ!)
と嫌そうな顔を全面に押し出し嘘泣きをしてみる。
すると父親は焦り始め慌てだした、それを見た母親が俺を抱っこするので泣き止むと、父親はホッとした顔をした顔をした後少し寂しそうな顔をする。
(仕方ねぇな、次は泣かないでおいてやるか)
などと偉そうな事を考えていると父親は何か思いついたのか、急に右手の人差し指を上にあげこちらに近づいてきた。
俺はなんだと思いながらその指を見ていると、父親は何か喋りだしその指から小さな火の玉が出現させたのだ、それを見た俺は大興奮することになる
あおぉ、あいぃあう(すっげぇ、魔法じゃん!!)
俺は興奮してその火の玉に手を伸ばそうとすると、父親は慌てて火の玉を消した。
だが俺が魔法に興味を示したのがうれしいのか、次は水の球体を作り出したりと色々な魔法を見せはじめ、俺はその度に興奮して興味を示しす。
(俺も魔法を使いてぇ、ってどうやって魔法を使ってんだ?やっぱ呪文が必要なんかね?)
そんなことを思いながら父親とその魔法を観察してみる。
そこで気付いたのが父親が魔法を使う時に奇妙な感覚がする事に気付いた、それは指先だったり父親全体からだったりと、何かを感じるが何かがわからないとそんな感じだった。
その感じについて考え始めていると父親は満足したのか魔法を消し、用事があるのか母親と部屋出て行った、メイドは俺が大人しくベットにいるのを確認すると部屋を掃除を始めたようだ。
俺は父親が魔法を使ったときの奇妙な感覚について、いくつかの考察を出す。
・魔法を発動する場合に出る波動のようなもの
・魔力のようなもので魔法使うことで魔力が動きそれを感じとったもの
・俺の勘違い?
(う~ん、3番目はとりあえず置いといて、1番目じゃ呪文がわかんないからどうしようもないな、2番目だとすると魔力は動かせる、あるいは循環しているものなのか?)
やれる事が何もない為、そんな思考に没頭する俺である。
(2番目だと仮定した場合、今の状態でもなんとか練習とかできねぇかなぁ)
そんなことを思いながら自分の体にについて考えてみる。
(神から俺は常人より魔力が多くしてもらえてるはずだし、魔力はあるはずなんだよな、となると魔力を扱う方法を色々試したほうがいいな)
そう思い自分の体に注意を向けてみて、魔力というものを探ってみる。
(自分の考察と父親の魔法を使ってる感じから、魔力は動くものと仮定したとして、どういう風に動いてるんだ?血液みたいなもんなのか?)
自分の体に血液が循環してるイメージを頭の中に思い描いてみる。
すると先ほど感じた奇妙な感じと似た感覚が、自分の中にあるのを感じ取る。
(お、なんか当たりっぽいぞ、まずはこの感覚を掴みながら循環のイメージの練習からだな)
そう思い魔力を動かす練習に没頭していくのであった。
(ある程度感覚は掴めてきたけど動きがかなり遅いな)
あれから数時間練習に没頭し魔力の感覚を掴んだのだが自分の中ではまだ不十分らしい。
メイドは掃除を終えたようで部屋にはいなくなっていた。
(とりあえず魔力の感覚を掴んだ事だし次は魔法だな、まずは火の玉はあぶないから水の玉が出せないか試してみるか)
まだよく動かせない自分の右手に魔力が集中する感覚をイメージし、お腹に力を入れ思いっきり叫ぶ。
あいあぁ、あうああぁ!!(出ろ、水の玉!!)
そして盛大に脱糞した。
それと同時に右手に小さな水の玉が出来たのである。
あうおおぉ(おっしゃあぁぁ!!)
初めて使った魔法に歓喜する俺だが、水の玉はすぐ維持できなくなり破裂してしまい、自分の股間を濡らすことになる。
そして俺の叫び声を聞いたのか、メイドがすぐに部屋にきて俺の惨状見て あらぁって顔になるの見て俺は羞恥で顔を背けてしまう。
(そりゃあ声を聞いて部屋に来てみれば、赤ん坊が股間びしょ濡れ+ほのかに異臭付きだからなぁ、まぁそれが赤ちゃんの仕事だし大丈夫でしょ)
メイドは素早く俺のおしめを脱がしテキパキと後始末までしてしまう。
そんな中俺はというと魔力を使った影響なのか空腹、疲労、睡魔に襲われていた。
(お腹がすいたんだけど凄まじく眠いし体がしんどいぞ…)
空腹より疲労と睡魔が勝ったらしく俺の意識は途絶えた。
そして深夜に目を覚まし母親を叩き起こす事になる。
次の日からは俺は魔力循環(次からは魔力操作とします)と、誰もいない時に水の玉の放出と維持の練習に勤しむことにした。
(赤ん坊が魔法使ってたらおかしいだろうし、水の玉もお漏らしと勘違いしてくれるだろうから、失敗してもなんとかなるだろう)
そんな考えから魔法の練習がスタートし、メイドと母親を苦労させる事になるのである。
次は1歳になってます。