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最初の晩餐

寂れた市場に書かれた絵 それを書いた少年は??

「大丈夫か!」私は思わず 声をかけた 彼は 力なく「大丈夫です」と言ったが その様子は大丈夫なものではなく その時彼のおなかがなっているのに気づいた 私は彼に

「食事ちゃんとしてるか?」と聞くと 彼は

「食事・・?ご飯・・? いつ食べたかな・・?」と答えたのだった 私は(高校生が 食事忘れるか?)と思い 「良かったら 家で何か食べるか?」と聞いてみた すると彼は 少し遠慮がちに

「良いんですか?」と言い 初めて笑顔を見せた


私の家は ここから歩いて 10分ぐらいのところにあり その間 彼の名前を聞いてみた

名前は前田健太(まえだけんた)といい 南高校の2年生であるとのこと 家の娘と同じ高校だなと思っているうちに 家にたどり着いた

我が家は 来客が多いといっても私の客はほとんど無く 娘篤子(あつこ)と妻静江(しずえ)の友人が よく来ている

家には入ると妻を呼んだ 私が珍しく連れてきた客に 妻は少し驚いたが 事情を話すといつもの様に リビングに通した

リビングには 篤子がいた そして篤子は

「あれ? お父ちゃんと何してんの?」と親しげに 喋りかけてきた 私は

「知り合いか?」と聞くと 篤子は

「同じクラスやもん!」とさも 当たり前というように言った すると健太は 私のほうを見て

「中田さんのお父さんだったんですか・・・」と言うと 篤子が

「中田さん なんて止めてーや!! 皆みたいに あつことか あっちゃんとか 言っーてやー 中田さんなんか言われたら なんか 感じ狂うわ!」と言った 健太は遠慮がちに「そうします」と言った 

健太は 篤子が出したお茶とお菓子を静かに食べていたが その横に座ってた篤子が

「健太 何か匂う 薬品?塗料の匂い?」と言った 健太はそれに対し「すみません 先ほどまで塗料使っていたので・・」と 最後まで言いきらないうちに 篤子は「お母ちゃん お風呂沸いてたよね~」と言い タオルを持ってきて 「お風呂入っといで!」と言ったのである

悪気無く ストレートにものを言うのと喋り好きは 妻にそっくりである


彼を 風呂に案内した後 篤子は私になぜ彼と一緒に帰ってきたのか 聞いてきた

私は 夕方の出来事を 篤子に話した すると

「又 あの子倒れかけたん??」と言った 私は又?と言った言葉に

「彼は よく倒れかけるのか?」と聞くと 篤子は

「健太な 美術部やねんかどな 作品に熱中すると 食事とか忘れるねん この前の文化祭の時も 看板とか 体育館のバックの絵とか いろんなもん一人で作って 夜に 倒れてるのを警備員さんと先生に 見つけてもらって 何とかなってんけど その時も飲み食いしてなかったんやて」

それを聞いて 天才?なんだか解らないけど 難儀な子やと思った


その後私も 風呂に入り出てくると 健太は体操服に着替え 篤子と共に 妻に言われたとおりに食事の用意を手伝っていた

妻は 人使いがとても上手である

その間も 篤子は健太に「あんた 今日体育無かったで」とか 「それにしても あんたの体操服きれいやな ちゃんと体育してへんやろ」とか 喋っていた そのたびに健太は「すみません」とか「体操服間違って持って来てました」とか 真面目に答えていた

私は 健太に「家に連絡しないで良いのか?」と聞くと 健太は

「今日は 誰もいません 母は夜勤で帰れないそうで 父はデザインの仕事で出張中です」と答えた すると静江が

「前田さん 県立病院の看護士さんやから 大変やね と言った この前もスーパーで会ったけど 元気そうで何よりややわ その時 言ってはったけど お父さんも 駅前のビール工場が移転して 勤務先が遠くなって 大変やって言ってたわ」 私は

「お前 前田さんのお母さん お父さんも 知ってるのか?」と聞くと

「あっちゃんは 小学校から一緒やもんね そやからよく知ってるのよ」と当たり前のように 家の妻は答えた 私は(何も知らないのは 私だけか)と思った

そんな風に 喋りながらも 夕食の用意は整い

今日は 焼肉かと思っていると これでもかとでも言うような沢山の 肉が運ばれてきた 私は

「凄い量だな」と言うと 妻は 「こんなに沢山あるから いっぱい食べてよ!」と言った 篤子は 

「うわっ~! 凄い」と 驚くと 妻は

「この肉 駅前のスーパーの くじ引きであてたんよ!3等 焼肉の肉3キロ!」と得意げに胸をはった 篤子は

「お母ちゃんって くじ運良かったっけ?」と聞くと 妻は 

「この前 あっちゃんが自転車買ったやろ その時のレシートと ほかの買い物のレシートで お母ちゃん8回もくじ引けたんよ!」 と満面の笑みで語った それに対し篤子は

「お母ちゃん 持って帰るの大変やったんとちゃう?」と聞いた すると妻は

「肉3キロと ボックスティッシュ7個 持って帰るの しんどかったわ!」と答えた

私は 心の中で(要するに 3等1つと後全部 末等やったわけやね)と思った

焼肉も 食べごろになったころ 肉を口に運びながら 篤子は

「健太 あんた市場のシャッターに絵描いたんやて」といきなり 言った すると健太は

「描きました」と一言 それに続けて 又篤子が

「何でそんそんなことしたん?」と聞くと 健太は

「一昨日 母は遅くなるってことだったので 学校の帰りに 昔よく行ってた 市場に行ったんです 何か食べるもの売ってないかなと思ってたんですけど 全部の店が閉まっていて 何か汚れて寂しくなっていて 悲しくて ちょっとでも綺麗になったら良いなと思って・・・描きました」 それに続いて篤子は

「昔あそこの市場美味しいもの たくさんあったな~」と言った 健太は

「あの 絵を描いた店 ’お好み焼き’屋さんで 僕好きだったんで だから あそこに描いたんです」すると篤子が

「お好み焼き’かめちゃん’美味しかった!」 と言った すると妻が

「かめちゃんの おばあさん 5年前に倒れてから お店閉めてるもんね 2年前に亡くなったって聞いたわ」と言った 少ししんみりしそうだったが それを吹き飛ばすように 篤子が 

「肉やさんのコロッケ  それから お魚屋さんの刺身 美味しかった!」と次々にあげいった すると妻が

「昔は 個人商店が多かったけどね そこをやってた人も年を取って 出来なくなってしまったところが多いからね」と言った そして篤子が

「お父ちゃん 健太が書いた絵ってどんなもん描いたん?」と聞いてきたので 私は正直に

「とても綺麗で 素晴らしいと思った 聖母や天使が美しく書かれている」と説明した そこで私は ふと疑問がもう一つわいてきた

「健太君 お好み焼き屋のシャッターに絵を描いた理由は解ったけど 呉服屋さんのシャッターに描いたのは 何故なんだい?」と聞くと 健太は

「その隣何軒かのシャッターには’貸し店舗’’売り店舗’のステッカーが大きく張ってて 何も張ってないのがあの店だったんです」と言った 私は 

「小さ目に書いたのは何故?」と聞くと 健太は

「僕 絵を描くのは早いんです でも 塗料が乾く時間は出来てしまうので その時間を使って 描きました あの店の お姉さんも綺麗な人だったな 今やってないのは寂しいなと思って 描きました」と健太は言った 私は

「あそこの店は まだ営業してるんだ あそこの奥さんが 市民課に 苦情を言ってきたんだ」と言った  

 

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