拾ったポケット 〜ねずみのチュウ太郎のちいさな大問題〜
ねずみのチュウ太郎は、街のすみっこをチョチョチョっと走っていました。
街には、おいしいものがたくさん落ちているのです。
たまに人間に見つかって追いかけられますが、すばしっこいチュウ太郎は、つかまるなんてヘマはしません。
チュチュウっと物陰に隠れて、やりすごします。
「今日は何があるかな?」
チュウ太郎が自慢の長いしっぽを振りながら走っていると、フッとおいしいにおいがしました。
「ん?」
チュウ太郎は立ち止まって、フンフンと鼻を動かしました。
あっちの方だ。
チュウ太郎が、おいしいにおいがした方に走っていくと、あった!ビスケットが落ちています。
でも、ちょっと残念。
ビスケットは粉々に割れています。
チュウ太郎は上手に前足でビスケットのかけらを持ち上げて、フンフンフンとにおいをかいでから、サクッとかじりました。
甘い味が口の中に広がりました。
全部食べたいけど、ここでのんびりしていると、人間につかまるかもしれません。
けれども、持って帰るには、ビスケットは粉々なのです。
両手で持ったら、うまく走れません。
「立派な上着があったらいいのに」
チュウ太郎はチュッと鳴いて、ビスケットの周りをクルクル回りました。
立派な上着には、立派なポケットがついていて、粉々のビスケットもつめられるはずです。
でも、そんな立派な上着など落ちているわけもなく、チュウ太郎はあきらめて元来た道を戻ろうとしました。
その時です。
道の端に、青い小さなものが落ちているのを見つけました。
駆け寄ってみると、布でできた袋のようなものでした。
「ポケットだ」
上着は落ちていなかったけれど、ポケットが落ちていました。
しめた!
いえね、それは本当はアクセサリー袋だったのですが、チュウ太郎はポケットのことばかり考えていたので、ポケットだと思ったのです。
チュウ太郎は、鼻先で粉々のビスケットを集めて、器用にポケットの中にビスケットをつめました。
これでよし。
あとは、これを・・・
そこまできて、チュウ太郎ははたと困ってしまいました。
上着を着れば、ちゃんと走れるけれど、ポケットだけあっても、どうやって運んだらいいのかしら?
チュウ太郎は、ポケットを背中に乗せたり、頭に乗せたりしてみましたが、どうやっても素早く走ることはできないようです。
「チュッ、ポケットだけあっても役立たずか」
チュウ太郎は、うらめしそうにポケットからビスケットのかけらを少し出して、口に入れられるだけ入れました。
また、別のおいしいものを探しに行こうっと。
あら?「不思議」要素は、どこへ?




