秘密(過去)
1月1日。急に沙羅に自宅に呼びだされた。
前日の31日にメールで「大事な話があるから明日私の家に来れる?」と。いやいや。正月だし毎年恒例ピタゴラ装置を、二階の僕の部屋から一階の台所まで作ろうと思っていたのだ。最初は断ったさ。「明日は用事があるから厳しくて」と。そしたら「その用事って何時に終わるの?」と聞き返されたのだ。「夜までかかるよ」と伝えると「ビー玉と本は家にある分だけで足りるの?」と言われた。
なぜ沙羅がこのことを知っていたのか?僕は考えた。そして一つの答えにたどり着いた。僕の母だ。彼女が僕の崇高な趣味の一つを、笑い話のネタとして扱ったのだ。
沙羅は休みの日に、僕の母が経営している定食屋によく足を運ぶ。そのタイミングで聞いたのだろうな。
まあ最悪、ピタゴラ装置計画は翌日にずらせばいい。快く沙羅の頼みを聞くことにした。
沙羅に家に向かう途中公園が目に映る。この公園は通っていた小学校も近く、同級生の遊び場として放課後よく利用していた。当時は鬼ごっこやかくれんぼ、沙羅とは草相撲をしたな。当時沙羅は僕の事をあっ君と呼んでいた。
「あっ君オオバコじゃないの?」
「ふふ。クローバで十分さ。それより沙羅も約束は守ってくれよ。負けた方が明日の給食のデザートを献上だ」
「まけたらねぇ」
はは、懐かしい。草相撲で一度も沙羅には勝てなかったな。しかし当時なぜ僕はクローバやタンポポが強いと思っていたんだろう…。
公園を通り過ぎた後、今度は大きな橋と河川敷が見えた。この場所にも思い出はある。小学校6年の時、橋の下で子犬が段ボールに入れられて捨てられていた事があった。
僕も譲二も沙羅もみんな、親が生き物を飼う事を反対していた。仕方がないので、ここで給食の残りや自宅のご飯を持ち寄り、子犬に食べさせていた。
譲二には一向に懐かず、嚙まれたり吠えられたりして、僕と沙羅はよく笑っていたな。
学校で子犬の里親募集のポスターを作り、町中に貼りまくったりもした。
だがそんな苦労虚しく最後は…。ああ、死んだんだな。雨の日に三人でこの場所に向かって、そしたら子犬は体を丸めていて…。
あれを経験したら、二度と生きた犬を飼いたいとは思わないな。
バス停が見えてきた。沙羅の家に向かう時、このバスを毎回利用する。沙羅の家は自転車で行けないこともないが、登路続きで結局途中から、自転車を押して進まないといけなくなる。それならバスで家の最寄まで行き、そこから歩いたほうが楽でいい。
「間に合わなかったかぁ…」
僕が乗る予定だったバスは、既に通過していた。
自宅を出る前、バスの時間を一応調べてきた。それでも2キロ以上歩くと、予定より着くのが遅くなってしまった。しかも、休日のこの辺りのバスの便は一時間に一本程だ。後一時間、体を震わせながら待つのはしんどいな…。
20分後、見知った制服の女子がバス停まで歩いてきた。
「わぁ。東雲君じゃん。こんな所で珍しいねっ」
ショートカットの黒髪。頭には水色のカチューシャリボン。首に黒いマフラー。見た目は、大きなクリっとした目に、少しの丸顔。背には大きなラケットを背負ってる。そんな彼女の名は、更科苺。
彼女との縁の始まりは、高校一年の時に遡る。一年時は理系、文系のクラス分けはない。全員が平等に普通科クラスとして授業を受ける。高校まで違う学校だった更科さんとは、同じクラスで初めて顔合わせをした。彼女の性格は一言で表すと天真爛漫。男女誰にでも分け隔てなく明るく接する事ができ、時には冗談を言ってみんなを笑わせる。言わばムードメーカーな一面もある。
「奇遇だね。部活終わり?」
「そうだよ~。ちょー疲れた~。ねぇ聞いてよ、今日部活終わりに都築先生がさ、「更科ぁ、お前はぁ、部活してないとぉ、太るんだからぁ、ちょうどいいよなぁ」って物凄い失礼じゃない?先生だってめっちゃ太ってるのに」
「都築先生の真似?特徴がよくとらえてあってうまいね」
「ね。みんなに評判いいんだよ。あ、東雲君はバス停で何してたの?」
「友達の家に行こうと思って」
「ええっ、誰、誰??」
「周東さん」
「わぁ!ふふっ」
更科さんはニッコリと笑っていた。
「どうしたの?」
「周東沙羅ちゃんってかわいいよね」
ああ。このノリめんどくさい。
「普通じゃない?」
「全然普通じゃないよ。頭もいいし、顔はとにかく整ってるし、横を通るとき必ずいい匂いするもん。私が男だったら絶対告白するね!」
「そう…」
「結構人気高いんだよ。私の知り合いで、いいなぁって言ってた人もいたし!」
「……」
「なーんて、ごめんねっ。私ちょーめんどくさいやつだったね」
バスでは思ったより人が乗っていたので、僕と更科さんは隣同士で座った。聞くところによると、更科さんはどうやら、沙羅と同じ地区に住んでいるらしい。沙羅とは小中と違うが、家がそれなりに近かったので仲もそれなりにいいのだとか。
「あ、私ここで降りるね」
「お疲れ様」
「え、お疲れ様?あ、うんお疲れ~。また学校でね!」
更科さんが降りた後、バスは山道に入る。じょじょに道幅も狭くなり、歩行者はほとんど見当たらなくなる。そしてもう少し行った先がバスの終点だ。
バスの終点に着く。降りるのは、僕と高齢者のお婆ちゃんが一人。
降りて辺りを見渡す。ぽつぽつと民家が点在。畑と木々に囲まれた何もない場所。ここら辺に来るのはほんと久しぶりだ。
沙羅の家は山道の一番上の方だ。バス停からは約一キロぐらいか。ここからは歩いて行く事になる。
道の左側を歩く。ただ歩道と車道の境目がほとんどなく車も一台分程しか通れない道なので、車が向かい側から来た場合、接触には十分気を付けないといけない、が幸い歩いていく途中、一台も車は通らなかった。
10分程で、沙羅宅まで着いた。着いた感想は…。
相変わらず無駄に大きすぎる家だ。木造建築の平屋だが、平気で他の家の三軒分はある。こんな場所で一人で暮らしているとは…。
家の呼び鈴を鳴らす前、敷地外に生えている常緑樹のシンボルツリーの前に行く。
「無理だな…」
今では登れない…絶対…。昔は探検気分でよく登っていたのだが。
常緑樹に別れを告げた後、呼び鈴を押す。
「……?」
ん、反応がない。留守?
その後も二度、三度と押してみるがやはり反応はない。5分前にそろそろ着くよ、とメールを送ってすぐに「了解」と返ってきたのだが…。
埒が明かないので、門を開けて中に入る。広い庭を横断して、家のドア前まで行く。そして開けようとしたが、鍵がかかっている。これは新手のドッキリか…?
「あらーん、きてー。こっちこっち」
家の裏側の方から声が聞こえてくる。確かそっちは、車を納車するガレージだったはず。一体なぜ?
急いで敷地の外に出て、反対側の方へぐるっと回る。着くとガレージの前に沙羅が立っていた。
「おはよ阿蘭。ごめんねこんな所まで呼んだりして」
「おはよう沙羅。構わないよ」
沙羅は黒のシルクパジャマを着ている。僕に挨拶をすませると、大きく欠伸をした。
「今起きたの?」
時刻は正午の一時を回っていた。
「ガレージの中で話したいの。壁は防音だし、ほら家の中でよりずっといいでしょ?」
「珍しいね。沙羅がこの時間に寝間着姿なんて」
「阿蘭…」
沙羅は呆れた顔だった。
「僕も休日はたまに遅くまで寝てるけど、さすがに昼過ぎまでっていうのはね…」
「私のパジャマ姿がそんなに珍しいかしら…?」
ああ。この感じ、いけない。ピタゴラ装置の邪魔をされ、多少イラついていたか。
「さあ、こんな所で立ち話していてもしょうがない。早く本題を聞こう」
呆れ顔の沙羅の背中を押して、中に入るように促す。
「へぇ。中はこんな感じなんだ」
至って普通の車庫だ。空の車の収容スペースが二台分。缶スプレーが一本床に落ちているだけ。しかしこの壁が防音なのか。素人目からは普通の壁と何ら変わらないな。
「阿蘭、そこ危ないからこっちに来て」
危ない…?
気づくと沙羅は、車庫の一番奥にいた。言われたように僕も一番奥に向かう。
「危ないって何が?」
「この床の下にもう一つ隠し部屋があるの。今から降りるんだけど、中央にいたら落ちて怪我するし…」
下?
何度か地団駄を踏んでみたが。…やはり普通のコンクリートだな。
そんな僕の動きをよそに、沙羅はポッケから何かのスイッチボタンを取り出し、そのボタンを押す。
「は、は、えぇっ?」
次の瞬間「ガッガッガガガッ」と亀裂音が聞こえ、床のコンクリートには割れ目ができ、四角い大きな穴がでてくる。さすがにこれには腰を抜かすぐらい驚いた。
「なにこれ?」
「隠し部屋。さ、入ろっ」
当たり前のことのように沙羅は流そうとする。僕は沙羅との経験で一番衝撃的な出来事だった。昔見た忍者映画のからくり屋敷を思いだす程に。
「多分大丈夫だと思うけど、中はフーチング階段だから、暗いけど足を滑らさないように降りてね」
そう言い残し、沙羅は穴の中に消えて言った。
「ちょっと!」
再び穴から出てきた。
「何でついてこないの?」
「あ、はい」
呆気に取られてしまった。
フーチング階段…?なるものは渦をまいたように、グルグルと回りながら降りていく。幸い手すりはついていたので、暗くてもゆっくり歩けば問題ない。
こんな経験初めてなので、好奇心がてら一番下まで何段降りるのか数えた。
「阿蘭降りれたー?」
結果は59段。そこそこ長かったな。
「降りたよ」
沙羅は確認を終えると、部屋の明かりをつけた。そして持っていたボタンを再び押す。その後すぐに亀裂音が聞こえた。恐らく入口を閉めたのだろう。
「へえ」
明るくなった部屋を見渡す。大きさは学校の教室ぐらいか。四方には大量の武器棚があり、銃器が並べられている。その下の机には銃弾、スチール缶、ナイフ、リュックや防護服。後は見たこともない武器類が乱雑に置かれている。天井付近には、蓬覇帝国の国旗も掲げてある。
「とりあえずそこに座って」
あらかじめ準備されていたパイプ椅子に誘導された。
「この部屋、君のお義父さんの趣味だよね」
沙羅は頷く、そして話始めた。
「阿蘭は大学どうする?」
「味埜市の大学にするかな、近いし」
味埜市とは亜噌市から4つ離れた市の事だ。味埜市は、僕の家からも1時間ぐらいなので十分通える。学力もそこまで低くないし、まさに思い描いたような場所なのだ。
「栄華帝国大学は…?」
「無理だよ。沙羅は僕の学力知ってるでしょ?足りてないよ」
「知ってる。でも努力すればいける範囲だよ」
正気化か?なぜ僕が今から頑張って、何百キロも離れた大学を目指さないといけない?
「あのさ、すごく言いずらいんだけど…。そろそろ僕離れもするころじゃ…?」
「はぁ…」
沙羅は思いっきりため息をついた。
「阿蘭を今日ここに呼んだ本当の理由はね…」
「あ。まず、私がこれから話す内容、絶対に他言しないって約束して」
「約束するよ」
「ありがと。えっと、まず私がグロリカ公国出身なのは知ってる…よね…?」
「知ってるよ。沙羅のお義父さんから聞いたからね」
正直信じがたい話だが…。
「でも、詳しい話は一切聞いてないよ。聞いた当時僕も幼かったし、深く話す必要はないと思ったんだろうね」
「そうなの…?」
「うん。そもそもその話、今でも信じていないけど。まずあまり公にはされてないけど、蓬覇帝国にグロリカ公国の人間は入国できない。それに沙羅、君にはグロリカ人特有の身体的特徴がない。目の色、そして何より肌だ。グロリカ人は遺伝で全員茶褐色の肌色だ。沙羅は真っ白の肌じゃないか」
「詳しいね。軍人のお父様に聞いたの?」
僕は首を横に振る。
「家の書庫に何十年、何百年前の本がたくさん置いてあるからね。昔暇な時によく読んでたよ。その中には世界の国々の人の情報が書いてあるものもある。ロア連邦、泊聖王国、ノガ共和国、両斎市民国、もちろんグロリカ公国もね」
「私は母が蓬覇帝国なの。肌と目は母親の影響だよ」
「へぇ」
「どうしたら信じてもらえる?」
沙羅は視線が下がっていた。
「…まあ。うん。そうだ、思い返すと、沙羅は僕の前でくだらない冗談なんてつかないね。ごめん信じるよ」
「え、ありがと」
思っていた反応と違った。もっと感動的な感じで「阿蘭ありがとう~!」とか「信じてくれてうれしい!」とか来るかと思ったのだが…。沙羅の反応は「あ、そうですか」のわりとどうでもいい感じ?いや、どうでもいいとは違うのかな…。
「信じてもらえたなら本題に入るね…」
沙羅は立ち上がる。そして銃弾が置かれた机の前に進む。机の引き出しから封筒と赤いケーキ箱を取り出し、手に持って再び僕の前に戻ってくる。
「それは?」
沙羅はまずケーキ箱を床に置き、封筒から一枚の手紙と写真を引っ張り出す。そして僕に手渡した。
手紙は言語が自国語じゃない。さっぱり読めない。写真は…。ん?これは牢屋か。鉄の柵の外からとられた写真。中は暗くて見えずらいが、トイレが一つと誰かが背中越しで吊るされているのが見える。それにかなり痩せこけている。分かりずらいが長髪だし女性なのか…?
「手紙にはグロリカ語でこう書かれているの。「番号37356の処刑日は1月1日」とだけね」
「……」
沙羅は次に床に置いていた箱を拾い、僕の持っていた物と交換する。
「沙羅これ…」
「開けてみて」
中身はケーキじゃない。それは確信できる。まず重量がそれじゃない。保冷剤ぐらいの重量しか感じ取れない。
恐る恐る中を開ける。すごく嫌な予感がした。
「………はぁ」
中は耳とそれを冷やすため保冷剤が入って…。あ、れ…
勢いよく立ち上がり、目の前に座っている沙羅の右耳を掴む。そしてケーキ箱に入っていた耳と見比べる。
「気づいた?後痛いんだけど」
僕は見開いた目を一瞬閉じ、「ごめん…」と言い残し戻る。
沙羅は僕が記憶する限り、会った当初から耳に青い花のピアスをつけていた。今日までなんで片耳しかつけていないのか?なんて疑問に思った事はなかった。だが今別の疑問が発生した。なぜ箱の中の耳は沙羅と同じピアスをつけているのかと。
見せられた気味の悪い写真、グロリカ語の手紙。そして本物かどうか分からない片耳。…いや。この耳は本物だ。血はふき取って処理されているが、切り口がノコギリか何かで無理やり引きちぎったのだろう。痛々しい断面になっている。
沙羅は僕が箱の中を見ている間、僕の事をじっと見ていた。僕は警戒しながら疑問の一つを沙羅に聞いてみた。
「…この耳誰の?」
「私の姉」
恐ろしく早い返事だった。
「…ごめん頭が追い付いてない。起承転結全部説明してほしい」
「起しかないけど、簡潔に説明するね」
沙羅は一呼吸置き話始める。
「このケーキ箱と封筒は昨日の昼届いたの。封筒はポストの中、ケーキ箱は入らなかったからなのか地面に置かれていたわ」
「中身を確認した後、急いで監視カメラを巻き戻してみて、そしたら銀髪の真っ白いワンピースを着た少女が持ってきていたのが分かった」
「この町の人?」
「違うと思う。後からその子の映像は見せるね」
「あ、うん」
「で次に中身の説明だけど、写真で吊るされているのは私の姉」
いや。背中越しでなんで分かるんだ?
「何で私の姉か分かるのか?でしょ」
「!?」
「自分の姉を見間違えるわけがない。わざわざご丁寧にお姉ちゃんの耳まで添えてね。絶対に気づかせたかったんだろうけど…」
「最後に手紙ね。番号37356の処刑日は1月1日。37356は多分お姉ちゃんの事じゃない。もしくは嘘」
「え、今の流れ的に姉じゃあ…」
「阿蘭この残虐非道な差出人の思考を考えてみて」
思考…?
「ごめん分からない。けど変だなと思ったのは、処刑日が今日ってことかな。もう少し余裕を持ってもいいものかなと…」
「そうね。処刑日が今日は変よ。差出人は私とお姉ちゃんを使って遊んでる。私の居場所も知っているのに、殺しにも捕まえにも来ない。泳がして、どんな行動を起こすのか高みから見物してる。そうは思わない?」
「うーん」
「お姉ちゃんにしたって「殺してた」より「生かしてた」の方が私を動かす動機につながる」
「じゃあなおさら今日は殺すのはおかしいんじゃあ…」
「阿蘭手紙もう一度よく見てみて」
沙羅から再び手渡される。
「だから僕はグロリカ語が読めないって…」
「手紙の一部だけ消されて書き直された後があるの、気づかない?」
書き直された?
「あ」
本当だ。最後の部分が消しゴムで消されて書き直した後が確かにある。
「書き直した人は几帳面じゃないのね。手紙を反対側にして透かして見たらわかるけど、書き直す前の部分が筆圧で少し浮かび上がるの」
言われた通り目線の上に手紙をあげる。裏面から覗き見るが…
「読めないでしょ。9月22日。阿蘭の誕生日だよ」
「え」
「これって偶然かしら。私はそうは思えないけど…」
「はは、沙羅は何を…」
「まあ、考えすぎかもね」
沙羅は座ったまま一度大きく体を伸ばす。そして覚悟を決めたように
「私はお姉ちゃんを探す」
と、言い放つ。
「居場所は分かるの?」
沙羅は手紙の入っていた封筒をポケットから取り出す。そして封筒の表面を僕に向けてくる。
「この封筒の切手はね明鄭市でしか発行されてないの」
切手?
切手には目の赤い猿の絵が描かれていた。
「明鄭市って栄華帝国大学がある禪由市の隣の市じゃあ…」
「そうね。お姉ちゃんとお姉ちゃんを拘束している人間は必ずこの付近にいるはずだから」
無茶だな…。
「…僕に手伝えることは?」
「うーん、一緒に…。…ううん、違う。一つだけいい?」
「何?」
「栄華帝国大学に入学できるように勉強がんばって」
「は、何で?」
「阿蘭。今からいう事は私の想像が大部分を占める。けどあり得ない話じゃないから聞いて」
「まずお姉ちゃんを拘束している人間を「キキ」とします」
「なんでキキ?」
「なんとなく」
「あ、そう…」
「で、キキはゲームをしているの。死んだと思っていたお姉ちゃんを登場させ、私に探させるように誘導してね。でもキキは盛大なゲームにしたいからもっとたくさんの人を出演させたい。私の周りの…」
「沙羅の周り…?」
「私の家族はお姉ちゃん以外いないから、友人になるのかな。阿蘭、雫、その他のクラスメイト。教師、近所に住む人たちとか。でもどこまでが対象かって考えると阿蘭、雫、後あいつぐらいかな」
「今はみんな私の近くにいるから大丈夫だけど、離れてしまったら利用価値なしと判断されて始末されるかも…」
はは…。…飛躍しすぎだ、どう反応したらいいんだ。
「おおまかな流れは僕にも見えてきた、沙羅は栄華帝国大学に入学するんだね。最悪今年中に姉を見つけれなくても、近くに住む方が見つかる可能性は広がるから。で、僕や酉井さん、後譲二にも栄華大学を目指してほしい。そうじゃない?」
「うん…」
「確かに今沙羅が置かれている状況は普通じゃない。キキの嗜虐性もはっきり言って異常だ。けど僕たちが巻き込まれている可能性は限りなく低い。現に今日まで何のアクシデントもなく来れた事がその証明だ」
「そうね…」
「けど沙羅の姉を探すは、僕も手伝える」




