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竹の浮橋  作者: 加藤無理
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鎖の躊躇い

 アパートだが鎖の自宅より趣きが有ってしっかりした造りだ。昼喜はまだ手をつないだまま二階に上がり、奥の部屋に向かった。その途中で母親と息子らしい二人と擦れ違った。昼喜は愛想良く挨拶した。二人は鎖を不思議そうに見やった後、返事をした。鎖も軽く頭を下げる。


 昼喜はやっと手を離してドアノブ近くの数字のボタンを押した。接近して素早く八桁ほどの番号を押しているので鎖には分からなかった。覚えようとも思わない。


 昼喜はドアを大きく開けて鎖を先に入らせた。鎖は軽く頭を下げると靴を脱いだ。そのまま奥に入ろうとしたが、振り返ってかがんで靴を軽く揃えた。昼喜も中に入り、ドアを閉めた。急いで靴を脱ぎ、鎖の肩に軽く手を乗せて洗面所に連れて行った。鎖から手を洗う。鞄を肩に掛けたままなのでぎこちない。昼喜が落ちないようにそっと紐を掴む。横にタオルを吊るしているが鎖は自分のハンカチをズボンのポケットから取り出して拭く。昼喜は紐から手を離して手を洗う。鎖は不安に思いながらそれを眺める。この後シャワーを浴びるのか最初から性交するのか。起床して朝食を済ませた後に簡単に身体を洗ったが、こちらに来るまでに汗をかいている。


 手を拭き終えた昼喜は鎖の肩から鞄を下ろそうとする。鎖は紐をしっかり掴む。中身を見られたら昼喜が激怒して殺傷するかもしれない。昼喜は微笑みながら、

「中を覗かないよ」

 鎖は手を離す。昼喜は鞄を持つと洗面所を出て奥に向かう。ドアを開けて壁際に鞄を静かに置く。後ろにいる鎖に振り向き、

「俺はさっきシャワーを浴びたから、まだだったら浴びてきなよ」

 斜め後ろの扉を指差した。鎖は迷った。今から性交するよりマシだが、親族ではない男と二人きりの家で裸になるのは気が引けた。身体を洗った後、服を着ないでそのまま抱き合うのだ。


 昼喜は明るい声で、

「今からヤル?」

 楽しそうな顔をしている昼喜と目が合った。顔は綻んでいるが眼光が鋭い。鎖は、

「今から脱ぐけれど、私の裸が気に入らなければハッキリ言ってね」

 声が強張ってて暗い。鎖自身も驚いた。昼喜の顔が曇った。鎖は昼喜から目をそらす。昼喜は一歩出ると鎖を抱き寄せた。鎖の左肩に顎を載せると耳許で囁いた、

「もう卑下しないで」

 一度、腕を緩めて右手で鎖の顎を軽く掴む。鎖が驚いていると昼喜は口付けをする。唇で唇を噛む。鎖の身体が痺れながら火照る。頬も熱くなるのを感じる。昼喜は顔を離し、クスリと笑う。何となく昼喜の頬も赤い。

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