昼喜の興味
昼喜の自宅は足立区のアパートだが、職場は新宿に有る。自宅のパソコンで仕事をする事も有るが、週に三日以上は会社に行く。
現在の職場は五年ほど前に入社した。トルコ女性が経営している小企業だ。大手動画サイトに投稿して売上を稼いでいる。社長はトルコ人だが英語も日本語も流暢に話せる。北海道から沖縄まで日本各地に赴いては自然や街を撮影して日本国内外の観光客向けの動画を作成している。年に一度ほど外国に出ては穴場を撮影している。
単に撮影許可をもらうだけではなく現地の関係者との打合せして見せ場や土地の文化や歴史を確認する。撮影後の編集も面倒だが、事前の準備の方が大変だ。動画サイトの規則は何度も修正されるので、その確認も有る。
会社には社長を含めて十人もいない。担当の弁護士や公認会計士はいるけれど、専属で雇っているわけではない。
昼喜の前の職場は陸上自衛隊だった。英語は十分に話せるし、最近は片言ならばトルコ語も出来るようになった。社長は相手や状況に合わせて言語を使い分けている。
鎖と会ったあの日以来、仕事は順調だ。少し問題や対立が起きても苦痛ではなかった。普段以上に冷静に対処出来ている。楽しみが出来て余裕が有る。
鎖は恐らく当日来るだろう。昼喜は期待している。鎖は慎重な奥手のようでいて大胆で情熱的でもある。本当に警戒心が強ければ最初から昼喜に近寄らない。
来なかったとしても見つけ出す。顔も声も覚えているし、名前と年齢も知っている。すぐ簡単に割り出せないだろうが時間かけて調べれば居場所も身分も分かる。その気になれば昼喜はハッキングも出来るし、ネットの記事や投稿の真偽もそこら辺のオタクより精査出来る。
鎖が自分よりも十歳も歳上なのには驚いたが性欲が萎えることはなかった。確かに若くて可愛い華のある女が好きだが、それを利用して男に媚びたり男を見下したりする女は嫌だった。
成人前から容姿に自信がなく、今は既に年増で性愛を諦めようとしている。化粧をせずにつまらない服装をしているのは男に期待していないからだろう。昼喜が求めても鎖は拒もうとした。けれども性欲や恋愛感情は捨て切れていない。昼喜は何となく鎖を理解した。
少なくとも一度は鎖を抱きたい。一度きりで終わるのか何度も抱きたくなるのか昼喜自身にも分からない。
理性で必死に性欲を抑えていた鎖の声と顔は忘れられない。




