理解出来ない思考と感情
昼喜は罪悪感を覚えた。鎖と性交した直後は有頂天だったが、鎖と別れて帰宅すると我に返った。なかなか心を開こうとしない鎖にもどかしさを感じていたが、避妊具を付けずに性交した事実をまざまざと思い出した。
鎖は怒るどころか終始遠慮していた。開き直って昼喜に甘えたり依存したり求婚したりすれば、昼喜も素直に応じていただろう。しかし鎖は何時でも去って行こうとする。
鎖が昼喜を性犯罪者扱いしても警察も産婦人科も鎖を邪険に扱わないだろう。鎖から安易に近付いた事を注意するだろうが、昼喜に非があると判断するだろう。昼喜自身も浅はかだったと思う。
警戒しながらも昼喜と会い、全裸になるのに時間をかけ過ぎた。その後も昼喜が誘っても近寄ろうとしない。鎖がさんざん焦らしてきたので昼喜はムキになった。
最初の女二人は徹底的に拒んだし、他の三人は素直に受け入れた。昼喜も自然と避妊具を付けて性交した。鎖が本当に性交させるかどうか最後まで疑問だった。
四十歳の年増女は簡単に妊娠しないし性欲が有るのに処女であり続けたから男が避妊しなくても男に飢えて抱かれる。そんな傲りは確かに昼喜の心の何処かに有った。十歳年下の男が女を丁重に扱いながら執拗に求めてきた。華の無い自己評価の低い年増女であればあるほど、有頂天になるはずだ。
何故、鎖は未だに昼喜に心を開かない。逆に何故、鎖は昼喜に怒り公的に訴えない。昼喜は分からなくなった。
執着しているのは昼喜だ。あの時、鎖には分からない言葉で励まして愛を告げた。鎖への誠実な愛ではなかったが、鎖から素直に求められたかった。少しでも鎖が歩み寄れば昼喜は素直に愛せる。昼喜は確信している。
十日ほど経っても鎖から連絡は来ない。昼喜の方から日時と待ち合わせ場所をいくつか指定してきた。鎖からのやっとの返信。結局、十一月の中旬に最寄り駅で午前中に会うことになった。
鎖が横須賀基地を選んだ理由が昼喜には分からない。単に軍事オタクなのか右翼なのか、それとも昼喜が沖縄出身者である事に何か思う事が有るのか。デートに似つかわしくない所を敢えて選んで昼喜を試したいのか。
それ以上に昼喜は強い不安を覚えた。鎖が妊娠して求婚したり逆に裁判に訴えたりするならば驚かないし誠実に応じる。しかし、鎖は何も躊躇わずに緊急避妊薬を飲んだかもしれない。副作用は全く無視出来ないし鎖はしかも四十歳だ。男である昼喜にも危険性は何となく分かる。更に日本では薬を気軽に入手出来ない。
鎖は今、何を考えているのか。
昼喜は平然を装って仕事をしているが、士気の低下を自覚している。大きな失敗や問題は無かったが、社長からはそれとなく変化に気付かれている。社長は調子を尋ねるが具体的に私生活について訊いてこない。




