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竹の浮橋  作者: 加藤無理
19/59

面倒な受診

 翌日。鎖は風邪と偽って会社を休み、昨日サイトでやっと予約した産婦人科に午前中受診しに行った。時間前に来ても初診なので待ち時間が長い。


 正直に話すか見ず知らずの男に強姦されたと嘘をつくか鎖は悩んだ。正直に話せば医師も助産師も事務員も鎖に呆れるはずだ。嘘をついても見抜かれる可能性もある。


 正直、鎖は産婦人科に行きたくはなかった。子宮頸癌検診には三回ほどしか行ってない。いくら専門医であっても、股を開いて膣を直接覗かれて更に医療器具を入れられるのは恐怖だ。痛みより恐れを感じる。なかなか慣れない。また、これまでに月経が中断した事が一度あった。その時も膣を確かめられた。薬を処方されて月経は無事に再開したが、良い思い出ではない。


 憂鬱だ。三時間以上待って昼過ぎになってやっと呼ばれた。


 医師は五十代の女性だ。鎖は、

「避妊出来なかったので緊急避妊薬を処方して下さい」

 と漠然と頼んだ。医師はいぶかしそうに、

「何故、出来なかったの?」

 鎖は目をそらして、

「相手が避妊具をつけなかったんです」

 医師はパソコン画面のカルテと鎖を見比べて、

「もう貴方は四十歳でしょう。彼氏とはどんな関係なの?」

 昼喜は恋人ではない。鎖は否定したかったが、二回しか会ってない男と性交したと話せなかった。鎖が黙っていると医師は、

「DVとか?彼氏の方が主導権を握っているの?貴方は彼を愛しているの?」

 無理矢理に性交を強要されたと答えるべきか、今までの経緯を詳しく話すべきか鎖は悩んだ。鎖が答えないので医師は、

「とりあえず直接確かめさせてね」

 と、言うと助産師に目配せをした。助産師が鎖を診察台に連れて行く。鎖は抵抗を覚えたが、下半身を裸にして独特の台に乗る。医師が器具を持って調べ始める。鎖の顔が引きつり身体が強張っているので助産師は鎖の肩に手を乗せて落ち着かせる。性交痛はだいぶ弱まったが、違和感は残っている。


 医師が器具を使って確かめると、鎖は恐怖で呼吸が荒くなる。助産師が鎖に呼吸の方法を具体的に指示する。まるで酷い強姦に遭ったような反応だが、初体験のわりには膣はさほど傷付いていない。医師は不思議そうに眉を寄せて診察を終わらせる。助産師に助けられながら鎖は呼吸を整えながら診察台から下りる。


 着直した鎖が椅子に座ると医師は首を傾げながら、

「副作用が強くても良いなら処方するけれど、もう一度、彼氏と話し合ってみたら?」

 鎖は副作用が気になったが処方を強く望んだ。


 診察料を払い近くの薬局で指定された薬を買うと、鎖はそそくさと帰って行った。早速、避妊薬を飲んだ。最初はなんともなかったが、夜中に頭痛と吐気で目が覚めて便所で嘔吐した。落ち着くと口をすすいでまた寝た。


 翌朝に回復して出勤したが、鎖の顔色を見た職場仲間からは心配された。いつもより仕事の量が減った。

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