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竹の浮橋  作者: 加藤無理
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会話の始まり

 二人は行きつけの料理店に着いた。昼喜はやっと手を離す。中に入ると客は沢山いるが、満席ではなかった。三年ほど前までは店員が案内したり注文を訊いてきたりしたが、今では自動化が進んでいる。味は落ちていない。機械の画面の指示通りに空席に向かう。奥の方の席に座る。


 鎖は昼喜の正面に腰を下ろすと、鞄を隣に置く。昼喜はテーブルの端に有るタブレット端末を手に取ると注文する。鎖はボウっと昼喜を眺めている。昼喜からタブレット端末を受け取ると、選び始めた。昼喜は楽しそうに、

「安いのを選ばなくて良いからね。沢山注文したら?」

 昼喜は遠慮されるのが嫌なようだ。鎖はさんぴん茶と珍しい豚肉料理とあまり見かけない海藻の和物あえもの、初めて見かける果物のツマミを頼んだ。端末を元に戻す。


 背もたれに上体を預けていた昼喜は座り直して両肘をテーブルに載せて指を組んでそれに顎を載せる。鎖は軽く背筋を伸ばして指を組んだ両手を両膝の間に挟む。昼喜は微笑み、

「SNSとかやっている?」

 鎖は首を傾げて、唯一使用しているSNSを挙げた。それは機密性に問題が有ると一時期騒がれたが、日本では今でも広く利用されている。昼喜はふーん、と唸って、

「それじゃあアカウントを教えてよ」

 と、ズボンのポケットからスマホを取り出す。昼喜の方からアカウントを見せる。鎖も見せる。昼喜が素早く操作して登録した。これで互いに連絡が出来るようになった。


 早速、料理が機会に運ばれて来た。昼喜が慣れた手つきで取り出す。お冷もある。昼喜からお冷を受け取ると鎖は短く礼を言って飲む。昼喜が苦笑いしながら、

「もっと飲物を頼めば?」

「大丈夫」

 鎖は答えた。昼喜は、

「何か貴方の事を教えてよ」

 鎖はコップを置くと宙を睨んだ。昼喜は、

「趣味とか好きなバンドや芸能人はいないの?」

 鎖は昼喜を見返す。昼喜は微笑んでいる。鎖は、

「音楽とか映画とかドラマとかに興味はない」

 昼喜は眉を少し上げて、

「漫画とかアニメは?」

「それも最近観ない。時々、無料動画サイトを閲覧するぐらい」

 鎖が気まずそうに答えた。昼喜は目を輝かせて、

「実は俺、動画サイトを投稿している会社で働いている」

 鎖が息を飲んだ。昼喜は一度仕舞ったスマホをまた取り出して、自分達の会社のアカウントを出して見せた。鎖は、

「知らなかったけれど、よく手が込んでいるね」

「有り難う」

 動画には英語の字幕と日本語で解説した音声と雰囲気の有る景色や街並みが流れていた。

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