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竹の浮橋  作者: 加藤無理
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余韻

 昼喜はベッドから下りる。食卓からチリ紙の箱を持ち上げて処理をしていく。鎖はグッタリしたままだ。股下を覗き込むと体液でぐっしょりと濡れている。シーツにも十分に付着している。血が滲んでいる。昼喜は拭き取っていく。シーツの汚れは完全に落ちない。両手でそっと鎖を壁際に向かせる。シーツをはがす。下には念の為にタオルケットを敷いていた。昼喜は鎖を仰向けに寝かせて布団と毛布をかける。


 浴室に行って身体を洗う。軽い疲労と愉悦の余韻。昼喜は肩を落として溜息を吐いた。笑いが込み上げてくる。肩と腹を震わせながら高笑いする。


 笑いが収まって身体を洗い終えると浴室を出てタオルで身体を拭く。目の前の洗濯機の横にプラスチックのタンスがある。そこから下着や服を出して着ていく。


 ベッドに戻るとまだ鎖は寝ていた。昼喜はクスリと笑うと、ベッドの脇に両膝をついて鎖の頭を撫でる。もう片方の手で布団の上から身体を擦る。先程の二つの台詞を呟いた。成人する前から思い入れのある故郷の言葉だ。


 暫く撫でていると鎖の瞼と眉が動き始めた。昼喜は、

「鎖」

 穏やかな声で呼んだ。鎖は目を覚ました。昼喜は手を離して立ち上がる。鎖も上体を起こす。下腹部に鈍い痛み。鎖の顔が引きつる。ここが昼喜の部屋で先程性交した事を思い出した。鎖は固唾を飲んだ。昼喜が気まずそうに、

「まだ痛い?シャワーを浴びた方が良いよ」

 鎖はベッドから下りて言う通りにした。壁際に置かれている鞄を持ち上げて浴室に向かう。


 昼喜は部屋を出て台所に向かう。冷蔵庫からウィスキーを取り出し、食器棚からコップを二つ出す。部屋に戻って食卓に置くと一つに注ぐ。椅子に座って飲む。


 一杯飲み干すと二杯目を注ぐ。休みながら飲む。微かに酔い始めるがウィスキーを薄めずに五杯続けて飲んでも昼喜は平気だ。二杯目が終わって三杯目を注ごうとしたら浴室の扉が開く音がした。昼喜は食卓に肘をついて掌に顎を載せた。


 暫くすると鎖が出て来た。相変わらず露出度は低いが安物の服装だ。髪が濡れているがタオルでしっかりと拭いたようだ。鎖は床に置いていた先程の服を腰を下ろして拾うと鞄から出したビニール袋に入れていく。そのビニール袋を更に鞄の中に入れる。昼喜はぼんやりとそれを眺めている。鎖は隠そうとしているが、催涙スプレーと鞘付きの果物ナイフが見えた。昼喜は黙っている。鎖が鞄のファスナーを閉める。


 昼喜が明るい声で、

「少し休んでから食事に出かけない?」

 鎖が顔を上げる。食卓には中身が減っているウィスキーの瓶とコップ二つが置かれている。鎖は立ち上がると、

「私は酒を飲まないことにしている」

 昼喜は苦笑いすると立ち上がり、

「変わった炭酸水が有るけど飲む?」

「うん。有り難う」

 鎖が返事をすると昼喜は台所に向かった。鎖は昼喜が座っていた席の正面に座る。

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