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空が降る日 ――最強少女、告白される  作者: 水瀬 理音


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5/8

第5話

 その日一日、澄香はまったく集中できなかった。

 集会の最中も、休み時間も、とにかく周りがうるさい。

「で、返事は?」

「もう付き合ってるの?」

「昨日のあれ、見たよ!」

 ……知らない。

 聞いてない。

 放っておいて。

 春人と秋人がいないのだけが、唯一の救いだった。

 創太はというと、目が合うたびに、薄く笑うだけ。

 ——嫌な予感しかしない。


 * * *


 昼休み。

 朱南と並んでパンを食べながら、澄香はあっさり言った。

「今日、創太と勝負する」

 朱南は、手を止めた。

「……本気?」

「本気」

「すっぽかされる可能性は?」

「そのときは逃げたって言いふらすわ」

 澄香は、にっこり笑った。

 朱南はまったく笑っていない。

「あんたさ……あいつ、正々堂々と戦うタイプじゃないでしょ」

「分かってる」

 それでも澄香は言った。

「でも、負ける気はしないの」


 * * *


 夕方。

 林の奥の開けた場所に、創太はいた。

 切り株に腰かけて、まるで待ちくたびれたみたいに。

「早いわね」

「お前が遅いんだよ」

 風が葉を揺らす。

 嫌な静けさが、落ちてきた。

「……どうして、こんな場所選んだの?」

 澄香は、わざと挑発する。

「人目がないほうがいいから? そんなに負けるのが怖い?」

 創太は鼻で笑った。

「逆だよ。無様に負ける姿、誰にも見せたくないだろ?」

 ……ムカつく。

「強がり」

「強がりはどっちだよ」

 創太の目が、冷たく細くなる。

「女が舞役になれると、本気で思ってるのか? 十秒だな。お前が倒れるまで」

 澄香の中で、何かが切れた。

「五秒もいらないわ」

 地面を蹴った、その瞬間だった。

 ——ぐらり。

 足元が、落ちた。

「えっ——」

 次の瞬間、

 澄香は土ごと穴に落ちていた。

 肩を打って、息が詰まる。

「っ……!」

 上から、笑い声。

「ははっ、引っかかったな」

 見上げると、創太が覗き込んでいた。

「新しい土、気づかなかったか?

 猪突猛進ってやつだな」

 こめかみを、トントン。

「ここが弱いんだよ、お前」

「……卑怯者!」

 叫ぶ澄香に、創太は肩をすくめる。

「戦う気はあったさ。

 引っかからなければ、な」

 それだけ言って、背を向けた。

「じゃあな。

 自力で出てこいよ」

 足音が、遠ざかる。

 澄香は穴の底で、拳を握った。

 ——やられた。

 完全に。

 悔しさで、胸が焼ける。

 でも、それ以上に。

(……次は、絶対に許さない)

 夕暮れの林に、澄香の荒い息だけが残っていた。


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