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空が降る日 ――最強少女、告白される  作者: 水瀬 理音


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1/8

第1話

 春の草原は、うるさかった。

 風のせいじゃない。人の声だ。

「いけー! 澄香すみかー!」

夜斗やと、負けんなよー!」

 耳が痛い。

 ほんとに痛い。

 水守みずもりさとの草原では、今日も子どもたちが円を作っていた。

 その中心にいるのは、村で一番気の強い少女——澄香だった。

「……静かにしてくれない? 集中できないんだけど」

 言っても無駄なのは、分かってる。

 この村の連中は、人が殴り合うとなると途端にテンションがおかしくなる。

 向かいにいる夜斗は、体格だけなら大人顔負けだ。

 なのに、今は澄香を睨みながら、明らかにびびっている。

「な、なに余裕ぶってんだよ……!」

「余裕じゃないわよ」

 ため息が出る。

「事実を言ってるだけ」

 審判役の高鵺たかやが、困ったように周りを見回してから、手を上げた。

 その瞬間、さっきまでの喧騒が嘘みたいに止まる。

 ——始め。

 次の瞬間、地面を蹴った。

 一瞬だった。

 ほんとに、一瞬。

 夜斗が反応するより早く、澄香の視界は空を切ってた。

 次に見えたのは——地面。

 歓声。

 転がる夜斗。

 澄香の勝ちだった。

「勝者、澄香!」

 どっと湧く声の中で、夜斗が涙目で叫ぶ。

「お前、女じゃねぇよ!!」

「失礼ね」

 澄香は肩をすくめた。

「そっちが弱いだけでしょ」

 そのとき。

「まだだろ!」

 人混みを割って、陣が飛び出してきた。

 さっき負けたばかりのくせに、声だけは一丁前だ。

「黒帯クラスは、もう一人いるんだよ! なあ、高鵺!」

 ……あ。

 嫌な予感がした。

 一斉に集まる視線。

 高鵺は、ぱちぱちと瞬きをしている。

「え、俺?」

「そうだよ!」

「お前なら澄香を倒せる!」

「生意気な女、やっちまえ!」

 男子たちが勝手に盛り上がる中で、

 澄香は腕を組んだ。

「別にいいけど」

 口は勝手に動く。

「相手が誰でも、結果は同じよ」

 高鵺が、少し困ったように笑った。

「……ごめん。俺、戦えない」

「は?」

「澄香さんとは、戦えない」

 何それ。

 一番むかつくやつ。

「怖いの?」

 にっこり笑ってやる。

「男のくせに?」

「違うよ」

 高鵺は、やけに真面目な顔で言った。

「俺、強いから。たぶん澄香さんに勝つし」

 ——は?

 頭に血が上るのが分かった。

「じゃあ戦いなさいよ!」

「だから、できないって」

「なんでよ!」

 一瞬、間があった。

 春の風が吹いて、草が揺れる。

 それから、高鵺は――

 ほんとに困ったように笑って、言った。

「俺、澄香さんのこと好きだから」

 ……。

 空気が落ちた。


※高校生の頃に書いた青春ファンタジーを、

 今の感覚で軽くリライトしています。

 ゆっくり更新していきます。

 

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