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夢見る星のウタ  作者: TriLustre
第1章「見知らぬ世界の救世主」

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第6話「領主邸」

 規則正しく木を叩く音が、人々の喧騒の中でも確かに聞こえてくる。

 領主邸の扉をノックしたレドは少し後ろへ引き、領主が扉から出てくる時を静かに待つ。

 少しの間、4人は品のある木製の扉を見つめ続け、やはり留守かと諦めかけたその時——玄関の扉は音を立てて開き、中から男性が姿を現した。


「どちら様で……おや、レドじゃないか。今日も外で狩りをしていたんだろう?お疲れ様。」


 男性は黒髪に黄色い瞳を持ち、裾の長いコートのような黒い衣装を身に纏っている。

 男性はレドの姿を視界に捉えると、微笑みながらレドの働きを労わった。


「いいんだ、これは俺の仕事だからね。領主様も、毎日のように仕事が山積みだろう?俺からしたら、そっちの方が過労で倒れそうだ。」

「なに……私はむしろ、レドのように外で活躍することなどできないよ。だから親の跡を継いで、領主として出来ることをしようと思ったんだ。……それと、いつも言っているが、領主様と呼ぶのはよしておくれ。私とレドの仲じゃないか。」

「いいや、公衆の面前で領主様を呼び捨てだなんて、俺には到底できないさ。領主様と狩人ではなく、友人としてこっそりプライベートで会うというのなら考えるけどね。……ところで、俺達の話はそろそろ置いといて……領主である君に、紹介したい人達が居るんだ。」


 レドはそう言うと、後ろに控えていたマイン達の方を見やり、領主の男性に対面するように促す。

 領主はマイン達の顔を1人1人見つめた後、3人の近くまで寄り、丁寧にお辞儀をした。


「これはこれは……貴方がたは、この街の住民ではありませんね?ようこそ、フロワドゥヴィルへ。私が領主の『ヒゥヘイム・フューター』です。お客人がいらしていたというのに、気付かず身内話をしてしまい……大変失礼しました。」


 フロワドゥヴィルの領主——『ヒゥヘイム』は謝罪の気持ちを込めて頭を下げる。

 自分達に向けて頭を下げたヒゥヘイムの姿を見て、マイン達は慌てて制止しようと口を開く。


「い、いやいや!気にしてねぇからさ……。あっ、いや……気にしてないので、頭を上げて下さい。」


 マインの言葉にヒゥヘイムはゆっくりと顔を上げるも、首を左右に振って言葉を返す。


「いいえ、お客人に気付けなかった私の不甲斐なさゆえ、どうか謝らせて下さい。……それから、どうか畏まらずに楽にして下さいな。緊張していては、気が休まらないでしょう。」


 ヒゥヘイムに肩の力を抜くように促されると、マインとエディーは緊張で強張っていた表情を和らげ、気が抜けたように姿勢を崩す。


「あ、ありがとな……。正直、敬語とかってあんまり言い慣れてなくてよ……。ここは素直に、お言葉に甘えさせてもらうぜ。」

「うん……下手に話し方とか意識しようとすると、変に緊張しちゃって敵わないや……。」


 元気な笑顔を見せるマインと、眉を下げて苦笑いをするエディーに、ヒゥヘイムは微笑ましそうに笑みを浮かべる。


「うんうん、緊張は解れたようですね。……それで、レドは何故……君達を私に紹介したのか、理由をお伺いしても?」


 いよいよ本題に入るという姿勢で、ヒゥヘイムは再び3人の顔をそれぞれ見つめ、レドはマイン達に事情を説明するように促す。

 3人はお互いの顔を見つめて頷き合い、意志を固めると、クレールが事情を説明するために口を開く。


「実は……私達は、家へ帰るための方法を探しているのです。それで、森で助けて頂いたレドさんのご厚意に甘えて、領主であるヒゥヘイムさんを紹介して頂きました。ヒゥヘイムさんなら……この街と貿易を行っている国以外のこともご存じなのではないかと……。」

「ふむ……そういうことでしたか。であるならば、ゆっくりお話出来た方がよいでしょう。どうぞこちらへ……中へお上がり下さいな。」


 ヒゥヘイムはそう言うと扉を大きく開き、4人を中へと招き入れる。


「良いのか?突然お邪魔しちまって……。」

「ええ、構いませんよ。今日は来客の予定はありませんでしたから、ゆっくりお話ができます。……ささっ、遠慮せずにどうぞ。」


 ヒゥヘイムが玄関を潜っていく様子を見届け、マイン達は1人ずつ領主邸の中へと入っていく。

 玄関を潜り真っ先に見えたものは、広いリビングと弾くような音を立てて燃える大きな暖炉の姿だった。

 椅子やテーブルを含め、室内は同じ色の木材から作られた材料で統一されており、椅子などに施された装飾はそこはかとなく上品さを醸し出している。

 贅沢と呼ぶには事足りず、庶民的と言うにはお粗末ではない、そんな絶妙で高い品質の様々な家具に、マイン達は興味津々で近付いた。


「へぇー。でかい家だったから、中もすげぇ贅沢してんのかなって思ってたけどよ……嫌な感じが全く無い綺麗な家具だぜ。」

「ああ、この家具の装飾……とても美しいな。……これは、この街で作られたものなのですか?」


 クレールが家具にあしらわれた装飾について質問をすると、ヒゥヘイムは嬉しそうに返事をする。


「ええ、この街の木工職人が作ったものです。模様を描くのは繊細な作業が必要ですからね……私の祖父が直に依頼をして、熟練の木工職人に作って頂いたものなのです。」

「そうでしたか……とても腕の良い職人さんですね。この模様……とても美しく思います。」

「ありがとうございます。後日……お客人からお褒めの言葉を頂いたと、職人の方にお伝えしておきますね。……では、お好きな席へどうぞ。今、温かい茶を淹れてきますので。」


 そう言って台所へ向かうヒゥヘイムに、エディーは「お構いなく…!」と声を掛けるも、ヒゥヘイムは「嗜むものがあった方が、話もし易いでしょう。」と茶葉を蒸らし始める。

 ヒゥヘイムが茶葉を蒸らしている間、マイン達は大人しく席に着き、簡単な雑談を交わしながら待つことに決めた。

 やがて、テーブルの上に人数分のハーブティーが淹れられたカップとクッキーが並べられ、対面に座ったヒゥヘイムは一息ついて話を始める。


「そういえば……まだ皆様の名前を伺っていませんでしたね。良ければ、話の前に教えて頂いても宜しいでしょうか?」

「確かに……まだ言ってなかったよな。自己紹介が遅れて悪いな、俺は山天マイン!よろしくな。」

「私はクレールと申します。以後お見知りおきを……。」

「俺はエディー。エディー・イーグルトンと言います。この度は、話をする機会を設けて頂いて、ありがとうございます……。」

「マインさんに、クレールさん、そしてエディーさんですね。こちらこそ、皆様にお会いできて嬉しく思います。何卒、よろしくお願いしますね。」


 順繰りに自己紹介をした3人へ向けて、ヒゥヘイムは邂逅を祝うように笑顔を見せる。


「早速ですが……クレールさんは先程、家へ帰るための方法を探していると言いましたね?不躾で失礼だとは思いますが、念のため確認をさせて下さい。皆様はどうやって、この街まで来たのですか?単に家へ帰るだけならば、この街へ来た道を辿って戻れば、帰れるかと思うのですが……。」


 そう疑問に思うのも当然だろうと、マイン達は疑われることを承知の上で話を聞き続ける。


「『帰れない』から困っているのだとは思いますし、気分を害してしまったのなら申し訳ありません。ですが……私が事実を把握するために、皆様の口から直接理由をお聞きしたいのです。かいつまんだ説明で構いませんので、お聞きしても宜しいですか?」


 ヒゥヘイムが申し訳なさそうな口調を含みながら話すと、エディーはすぐさま首を左右に振って口を開く。


「気分を害しただなんて、そんなことは無いよ。俺達だって……自分の言っていることが疑われることくらいわかっているんだ。それでも……俺達は本当に、自分達の家へ帰る方法がわからない……。信じてくれる……かな……?」


 不安げな様子で話すエディーに、ヒゥヘイムは真剣な眼差しで言葉を紡ぐ。



「…………わかりました。皆様を信じますので、詳しく話して頂けますか?」



 ヒゥヘイムのその言葉を皮切りに、マイン達は己が置かれた状況を詳しく説明し始めた。

 始めは自分たちの家、もしくはホテルに宿泊していたこと。

 フロワドゥヴィルの近くに残されていた、古の王国の遺跡で目が覚めたこと。

 生ける屍に襲われ、レドに助けられたこと。

 そして——生ける屍の存在を知らなかったこと。

 短いようで長い、これまでの出来事を聞かされたヒゥヘイムは腕を組んで視線を落とし、思考を巡らせる。


「……それで、俺達は『日本』と『アメリカ』っていう国に帰りたいんだ。全く知らないこの土地に来る前は、全員……日本に居たから、できれば日本の場所がわかった方が一番ありがたいんだけどよ……。贅沢は言えねぇし、とにかく近付ければそれでもいい。何か……知ってることはねぇか……?」


 考え込んでしまったヒゥヘイムに、マインは不安を隠し切れない様子で問いかける。

 ヒゥヘイムはそれから少しの間、目線を落とし続け——やがて、マイン達の方へ顔を上げると、残念そうに首を左右に振って言葉を紡いだ。



「……申し訳ありません。私の記憶にも……『日本』と『アメリカ』という国は聞いたことがありませんね……。」


「……そんな……。」



 ヒゥヘイムの口から出た言葉に、3人は酷く落胆し、項垂れて頭を悩ませる。



「……俺達、帰れない……のかな……。」



 エディーがすっかり気落ちした声で呟くと、レドがすかさずフォローを入れた。


「領主様。この家には古い文献や、他国から取り寄せた歴史書なんかが数多く置かれているはず。その中で、彼らの言う2つの国がどこかしらで存在していないのか、調べてみるのはどうだい?」

「そうですね……。私に……世界各地を旅している古い友人が居ます。彼は今、フロワドゥヴィルに滞在しているはずですから、私から彼に掛け合って聞いてみましょう。その上で、この家にある歴史書の中から、日本とアメリカという国々を探してみます。」


 次の手を提案するレドとヒゥヘイムに、マイン達は少し驚いた様子で2人の顔を見つめた。


「……そんなにしてくれて、良いのか……?」

「ええ、もちろんです。気が付いた時には遺跡で倒れていたということは、記憶喪失に陥っている可能性もありますが……我々が知らない国から来たとすれば、少なくとも、この街と貿易を行っている国々よりかは遥かに遠方のはずです。そんな遠い場所から、どう遺跡まで辿り着いたのかも気掛かりですし、何より皆様のことが心配ですから……。何故、生ける屍の存在を知らなかったのかもわかりませんが……見知らぬ土地で倒れ、生ける屍に襲われたのはさぞ恐ろしかったことでしょう。不安に感じる中……大変な思いをされましたね。」


 ヒゥヘイムが優しい口調と微笑みで3人を励ますと、エディーは涙腺が緩み一粒の涙を零す。


「ぁ……ごめん、つい溢れちゃって……」


 エディーが涙を拭うと、その姿を見たマインとクレールはお互いの顔を見やり、やれやれといった——あるいは微笑ましそうな和らいだ顔で、エディーの肩や背中を軽く叩く。


「全く……エディーさんは本当に涙もろいな。」

「全くだぜ。まぁ……お前が泣いてくれると逆に俺達は落ち着くっつーか、ヒゥヘイムさん達のお陰でちょっと元気も出てきたしな……。帰る方法を探すのは、まだ行き止まりじゃないぜ。」

「そうだな。まだ出来ることがあるのなら、それをこなしていこう。諦めるにはまだ早いぞ。」


 気力を取り戻したマイン達を見て、レドとヒゥヘイムは安堵した表情を見せる。


「そうそう、諦めるにはまだ早いさ。ヒュムが友人へ掛け合うのを待つだけじゃなくて、港に出入りしている貿易商なんかにも話を聞きに行こう。何か知っているかもしれないからね。」

「そうか、貿易商か……確かに貿易商なら、色んな国に行ってるはずだよな?」

「それなら……行商人も様々な場所へ行っているはずだ。行商人が訪れているなら、その人にも話を聞くべきだな。」

「おし、決まりだな!次は港に行って、行商人と貿易商を探して話を聞こうぜ!」


 意気込み満載で次にすべきことを上げていくマイン達に、ヒゥヘイムは心底安心した声で笑う。


「……ふふっ、色々と道筋が見えてきたようですね。たくさんの人に話を聞くことは、道筋が見えない中ではとても良い方法だと思います。少しでも情報が得られればよいですね。」

「はい。突然の訪問にも関わらず、話を聞いて頂き、本当にありがとうございます。私達はまだ諦めずに、今はとにかく情報を集めようと思います。」

「ええ、今は立ち止まっているより、足を動かした方が幾分かよいでしょう。港での情報収集が終わったら、是非またいらして下さい。友人から聞いた話と、歴史書を読み漁って得た情報を用意して待っていますので。」

「わかったぜ、ありがとな!色々と世話になっちまうが……マジで助かるぜ。……ほら、エディー、港に行くぞ?」


 領主邸から外へ出るため、立ち上がって玄関へ向かうマイン達は、まだ心を落ち着けるために席に座っていたエディーに声を掛ける。

 エディーは今一度、目の下を手でそっと優しく拭うと、顔を上げて笑顔のままマイン達の後を追い掛ける。


「ごめん、遅くなっちゃって……でも、もう大丈夫だよ。」

「本当か?それなら良いけどよ。……おし、行けるなら早速向かおうぜ!港から船が出ちまう前に、色んな人に話を聞かなきゃな。」

「ああ、そうだな。善は急げだ、早く行くに越したことはないだろう。」

「少しでも……本当に少しでも、帰る希望を見出せる情報が欲しいもんね……。……それじゃあ、ヒゥヘイムさん……用意して頂いたお菓子とハーブティー、美味しかったです。話も親身になって聞いて頂いて……本当にありがとうございました。またあとで……。」


 3人はヒゥヘイムの方へ体を向けると、お辞儀をして感謝の意を示す。


「お気になさらないで下さい。私は、少しでも皆様のお役に立てるのなら、それでいいのです。それでは……気を付けて行って来て下さいね。」


 ヒゥヘイムは3人へお辞儀を返すと、玄関の扉を広く開けて通りやすいように気を遣う。

 マイン達がもう一度お礼を言いながら玄関を潜った後、最後にレドが扉を抜けてヒゥヘイムに声を掛ける。


「俺は、彼らを港まで案内してくるよ。彼らをこの街へ招待したのは、紛れもない俺だからね。最後まで責任を持たなくては。」


 満更でもない顔でそう話すレドに、ヒゥヘイムは若干呆れたように言葉を返す。


「レドは本当に、お人好しだと思うよ。……って、私もあまり変わらないようなものか……。私が友人へ掛け合っている間、どうか彼らのことを気に掛けてあげて欲しい。きっと……レドに会う前からも、こうして街の中に居る今でも、ずっと不安を抱え続けていると思うんだ。出来ることなら、私は……彼らの力になりたい。」


 徐々に強い意志を込めた口調になっていくヒゥヘイムを見て、レドはお返しとばかりに呆れた顔を見せて笑う。


「言われずとも、そうするつもりさ。領主様も……俺に負けず劣らず、お人好しだな。」

「君に言われたくないなぁ。……ああ、そうだ。レドは無意識だったのかもしれないけど……先程、彼らが居る前で私のことを『ヒュム』と呼んでいたよ。あんなことを言っておきながら、実はまだ昔からの呼び方が抜けきっていないんだろう?無理をせずとも、そのままで良いのに。」


 ヒゥヘイムに指摘されたレドは自分の発言を思い返し、唖然として困った顔で眉を下げる。


「参ったな、気にしていたつもりだったのに……。やれやれ、中々慣れ親しんだものは簡単には抜けないな。」

「っはは、やはり抜けていなかったのだね。……私達は幼馴染だ、そう簡単に抜けはしないよ。」


 レドは降参したように諦め、ヒゥヘイムは抑えきれず声を出して笑う。

 途端に恥ずかしくなったレドは、慌てて玄関から後退りするように歩き始め、軽く手を挙げて別れの挨拶を交わす。


「と、取り合えず彼らを案内してくるからさ!また後でな、領主様。」

「はいはい……君も気を付けて行くんだよ、レド。」


 ヒゥヘイムは遠ざかっていくレドとマイン達を見送り、自宅へ戻って扉を閉める。

 2人が話し込む様子を遠くから眺めていたマイン達は、レドが自分達の方へ走ってくることを確認すると、手を振ってレドを迎え入れた。


「何を話し込んでたんだ?レドさん。」


 合流するなり投げ掛けられた質問を、レドは軽くあしらった。


「何でもないよ。ちょっとした世間話さ。」

「本当かなぁ……?世間話にしては、親密そうだったけど……。」

「レドさんとヒゥヘイムさんは古い友人同士でしたね。恐らく友人としての話をしていたと思うのですが……もっとゆっくり話をしなくていいのですか?」


 鋭く切り込むクレールの言葉に、レドは苦笑いをして答える。


「いいんだ。昔の話を引っ張られると、むず痒くて仕方が無い。今はそれより、君達の案内をしたいからね。俺と領主様の話なんて、いつでもできることさ。」


 レドはそう言って3人より前へ踏み出すと、領主邸に向かう前に通りがかったブラーヴシュヴァリエを指差して振り返る。


「ブラーヴシュヴァリエを、今度は南東方面に進んで、湖に隣接した関所へ向かおう。港ほど人の出入りは多くはないけど、それでも頻繁に荷の積み下ろしが行われている場所さ。港へ行くより関所へ行く方が近いから、まずはそこへ行こう。商人だけではなく、旅行者も遠方から訪れているのなら、何か知っている可能性があるからね。関所での聞き込みが充分に終わったら、次は港へ案内するよ。道すがら、この街の施設を紹介しながらね。」


 レドからの提案に、マイン達は迷うことなく頷いて了承の意を示した。


「関所で旅行者から話を聞く、か……。確かに旅行者なら、遠方から来ててもおかしくないよな。なんなら探している国から来た奴等だって居るかもしれねぇし……」

「過度な期待は禁物だぞ、マインさん。……とはいえ、旅行者から話を聞くのは選択肢として良い判断だ。話を聞く人数は多いに越したことはないからな。」

「なら、早速行こうぜ!いつも面倒掛けて悪いけど……レドさん、道案内を頼めるか?」


 マインが控えめで遠慮した口調で問いかけると、レドは明るくしっかりとした声で返事をする。


「ああ、もちろんさ。そんな遠慮しないで、もっと気軽に頼ってくれて構わないよ。……さぁ、関所へ向かおうか。俺に付いておいで。」


 レドは先陣を切って前へ進み、3人に付いてくるように促すと、そのまま関所へ向けて歩き始める。

 ブラーヴシュヴァリエを通り、南東の方角へ向けて道なりに歩いていく。

 マイン達は、今度こそ……今度こそと僅かな期待を胸に抱き、少しでも情報が得られればと強く願いながら、関所へ向けてひたすらに歩き続けた——。



次回投稿日:9月19日(金曜日20時頃)

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