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夢見る星のウタ  作者: TriLustre
第1章「見知らぬ世界の救世主」

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第18話「不穏な気配」

 朝日が昇って久しくなった頃、エディーは見覚えのある真白い部屋のベッドの上で目を覚ました。


「……ぅ、ん……ここ、は……?」


 未だ朧げな意識に、ぼんやりとする視界の中、エディーは周囲を見渡して声を漏らす。


「……おっ。起きたか?エディー。」

「エディーさん、おはよう。」


 エディーが目覚めたことに気が付き、マインとクレールは声を掛けながらエディーの顔を覗き込む。


「……マイン、クレール……!俺、どうしてここに……?」

「お前……ヒゥヘイムさんに治療薬を渡した後、気を失って倒れたんだよ。疲れが溜まってただろうから、無理もないってヴェスタさんが言ってたぜ。」

「ああ、急遽医療施設の一室を借りて休ませることになったんだ。」

「朝になっても起きないから、心配したぜ?……まぁ、数日寝込むなんてことにならなくて良かったけどな。」


 マインとクレールの話を聞き、エディーはゆっくり上半身を起こしながら、昨日の体験を思い返して口を開く。


「そうだったんだ……俺、あの後すぐに倒れて、気を失っちゃったのか……。……そうだ、レドさんの容体はどう……?」

「……それが、まだ詳しいことは聞いていないんだ。私達も……ヒゥヘイムさんに治療薬を渡した後、エディーさんと共にこの部屋で休ませてもらい、まだ外には出ていないからな。今朝、ヴェスタさんが後で様子を見に来ると言っていたが、いつ来るかは……」


 クレールが事情を説明していると、不意に病室の扉がノックされ、見慣れた赤い髪の青年が扉を潜り中へと入ってくる。


「失礼します。……目が覚めたのですね。」


 見慣れた青年の姿に、マインは口元に笑みを浮かべて声を掛ける。


「ヴェスタさん!今丁度、ヴェスタさんが来るかもって話をしてたんだ。エディーも目が覚めたことだし、一安心だぜ。」

「ええ。最悪の場合、数日は寝込むことを想定していましたから、早く目が覚めたようで良かったです。体調はいかがですか?」


 ヴェスタは頷きながらマインに相槌を打ち、エディーに視線を移して声を掛ける。

 エディーは口元に笑みを浮かべて表情を和らげると、ヴェスタの顔を見つめて礼を伝える。


「お蔭様で、だいぶ良くなったよ。まだ……本調子とまではいかないけど、ベッドで休ませてもらってたお陰で、倒れる前に感じてた疲労感もだいぶ回復したかな。気を遣ってくれて……ありがとう、ヴェスタさん。」

「いえ……もとはと言えば、俺が貴方達を地下遺跡へ連れて行きましたし、むしろ無理をさせてしまい申し訳なかったですね。……ところで、少し話をしておきたいのですが……今、宜しいですか?」


 ヴェスタからの問いに、クレールはエディーへ視線を移しながら返事を伝える。


「はい、私は構いませんが……エディーさんは目覚めたばかりなので、少し時間を置いた方が宜しいかと……」


 エディーの体調を心配するクレールに、エディーが首を左右に振って了承の意を示す。


「ううん、俺も大丈夫だよ。すぐに動けるとまでは言えないけど……話をするだけなら、このままでも聞けるから……。」


 クレールを安心させるため、少し声を張って話をするエディーに、ヴェスタは口調を和らげて言葉を紡ぐ。


「勿論、すぐにどこかへ出かけるとは言いません。エディーは体を横にして、休みながら聞いても構いませんし、辛いようであれば遠慮なくその旨を伝えて下さい。話を止め、休憩する時間を設けますので……無理をする必要はありませんよ。」


 ヴェスタの気遣いに、エディーは笑顔のまま、礼を伝えてこくりと頷く。


「うん、ありがとう。もし体調が悪くなるようだったら、正直に伝えるから大丈夫。」

「そうして下さい。……では、まずレドの容体に関してですが……」


 言葉の途中で一度区切り、ひと呼吸の間を置いた後、ヴェスタは3人の顔を順繰りに見つめ、落ち着いた口調で話を続ける。




「レドの……彼の容体はまだ、俺にもわかりません。昨日……ヒゥヘイムへ報告に行った際には、病室に入れましたが……今朝はヒゥヘイムの意向もあって、中には入れてもらえませんでした。何故……全くの無関係ではない、俺の入室を拒んだのかはわかりませんが……病室に入れない内は、レドの容体に関して詳しいことは言えませんね。」




 ヴェスタから発せられた言葉に、マインは驚いた表情を浮かべて疑問を口にする。


「ヒゥヘイムさんが、ヴェスタさんの入室を拒んだって……なんで、そんなことするんだよ……!?」


 戸惑いを隠せない様子のマインに、ヴェスタは首を左右に振って思考を巡らせる。


「俺にも理由はわかりませんね。ただ、昨日……治療薬を届ける際に見たヒゥヘイムの顔は、どこか思いつめた様子でした。兵士と会話を重ねた最中に、なにか拒まなければならない理由が生じていたのかもしれません。本人から直接聞かない限り、これも単なる憶測にしか過ぎませんが……」


 そう言って顎に手を当て、ヴェスタが考え込む仕草を見せると、マインは不意に良からぬ可能性を思い浮かべて声を漏らす。


「そんな……もしかして、俺達が着いた時には、既に手遅れだったとかか……?俺達に気を遣って、間に合う素振りを見せたとか……?」


 マインが口にした言葉に、クレールは頭に疑問を浮かべながら話に加わる。


「……いや、あの時のヒゥヘイムさんは、薬を見て本当に嬉しそうだった。既に手遅れだったなら、あのような表情を見せるのは難しいと思うが……。それに、そんな簡単に破れるような嘘を吐く人とは思えない。もっと他に、別の事情があるんじゃないか?」


 クレールの考えに、ヴェスタも賛同したようにこくりと頷く。


「ええ、クレールの言う通りですね。レドの治療が間に合わなかった時のために、何か室内で策を講じているのかもしれません。重症者用の治療薬で治らなかった例はありませんが、投与が遅すぎたがために、薬が回り切るまでに間に合わなかった例は確かにありますから……。今はとにかく、ヒゥヘイムのことを信じて、あまり詮索せずに待ちましょう。」


 マイン達を落ち着かせようと、ヴェスタが宥めるかのように冷静な口調で言葉を紡ぐと、マインは祈るような細い声を漏らしてヴェスタの顔を見つめる。


「……そうだな。ヒゥヘイムさんが何か邪なことを考えてるとは思わないし、レドさんの治療が間に合わなかった……なんてことにならないことを祈るぜ……。……それで、レドさんの容体についてはわかったけどよ、ヴェスタさんが知りたがっていた、俺達の異能についてはどうなんだ?今回のことで、得られた情報はあったんだろ?」


 マインが話題を切り替えると、ヴェスタは再び頷いてからマイン達の顔を見つめ返す。


「ええ。貴方達2人にも、異能が目覚めてるとみて間違いないでしょう。きっかけは、エディーが放つ光を浴びたことだったかもしれませんが……黒い腕と戦う際には、光を浴びることなく、力を武器に纏わせていました。あの『炎』と『光』の力は、マインとクレールに発現した異能だと確信してよいと思います。」


 ヴェスタの見解を聞き、マインは首を傾げながらヴェスタに向けて問い掛ける。


「そうなると……俺が張ったバリアみたいなものとか、クレールの相手の行動が視える力ってのも、俺達に発現した異能ってことになるのか?」

「そういうことになるかと思います。俺が何故……貴方達2人に、異能の発現がみられたと推察できたのかというと……それは、エディー1人が与える力にしては、明らかに属性や特性にバラつきが見られたからです。本来……人ひとりが抱えられる力には限度があり、扱える属性や特性にも限界があります。」


 マインからの質問に、ヴェスタが丁寧な解説をしていると、クレールが理解したかのようにハッキリとした口調で言葉を紡ぐ。


「つまり……エディーさん1人が与える力にしては、能力に差があり……その異なる部分が多過ぎたのだということですね。その点を踏まえて考慮した場合、私達が扱っている力は、エディーさんが皆に貸し与えた力などでは無く……エディーさんが放つ光に当てられて目覚めた、私達自身の異能だと考えたのですね。」

「ええ。それを確かめるために、貴方達に地下遺跡への同行をお願いしました。そこで思わぬ事態にも見舞われましたが……そのお陰で、貴方達の異能に気付けたのだと思います。」

「そうなると……なんでエディーが放つ光が、俺達に異能を目覚めさせたのかが気になるな。エディーが直接話してくれるようになるまで、聞かないつもりなのは変わらないんだけどよ……黒い亀裂を打ち破る力と、何か関係があんのかな?」


 マインが疑問を浮かべて言葉を紡ぐと、エディーは不意を突かれたかのように目を丸くして息を呑む。


「そ、それは……」

「……確かなことは、マインとクレールが持つ異能が、エディーの力を助けることにも繋がっているという点ですね。エディーが黒い亀裂を打ち破る力を行使するためには……貴方達2人の力が、必要不可欠のようです。」


 言い淀んでしまったエディーに代わり、ヴェスタが淡々と話を続ける。


「確かに……エディーが1人で武器を創ろうとした時には、失敗して上手く武器を創り出せなかったよな。それが……フロワドゥヴィルで黒い亀裂を打ち破った時と同じようなことをしたら、エディーの手元に武器が生まれて、また黒い亀裂を打ち破れたもんな……。」

「……ということは、あの黒い亀裂を打ち破る力は、私達3人が持つ力だということですか?エディーさんが持つ力が、私とマインさんの中に眠る異能を目覚めさせ……エディーさんを要として、私達の力を合わせることで、初めてあの黒い亀裂を打ち破ることができる……。」


 マインとクレールが会話を重ねていると、横からエディーが話に加わって声を掛ける。


「俺も……俺が持つ力だけで、黒い亀裂を打ち破れるとは思えないんだ。というのも……黒い亀裂を打ち破る時に、俺が放つ光が生ける屍を浄化してるように見えたって、あの商人は言ってたけど……実際に、屍化の治療をしようと試みた時に、屍化を治療することはできなかったし……俺の力に、生ける屍を浄化する力なんて無いんだ。」


 エディーの口から発せられた言葉に、マインは驚いた顔をしてクレールの顔を見つめる。


「……じゃあ、俺とクレールのどちらかに、生ける屍を浄化するような力があるってことなのか?そんなこと……想像できないぜ。」

「いえ……実際に、可能性のある事象を見たことがあります。それは……クレールが生ける屍に傷を付けられた、あの時ですね。」


 ヴェスタから思わず名指しされ、クレールは心底驚いた顔で首を傾げながら問い掛ける。


「私が……?私があの時、何をしたと言うのでしょうか……?」


 クレールが心当たりがない様子でヴェスタの顔を見つめると、ヴェスタは当時の状況を思い返してマイン達に伝える。




「実は、あの時……咄嗟に治療薬を渡し、飲むように促しましたが……生ける屍に傷付けられたクレールの腕には、屍化の進行が見られなかったんです。」




 ヴェスタから告げられた事実に、マイン達は全員目を丸くして声を漏らすと、マインとエディーは思わずクレールの方へ視線を向ける。


「私が受けた傷口に、屍化の進行が見られなかったのですか……?」

「ええ、俺も最初は目を疑いましたが……確かに、貴方の腕には屍化の発症は見られませんでした。貴方の身体には……少なくとも、屍化を無効にする力があるようですね。」


 クレールは信じられないといった様子で首を左右に振り、ヴェスタは改めて3人に目を向けて話を続ける。


「ですが、マインにも……炎を障壁や刃に変え、応用するという別の力があるようですし、クレールに生ける屍を浄化する力があると断定するのは、いささか早計ですね。あの商人のように……可能性としてほぼ間違いなかったとしても、ヒゥヘイムの読み通り……エディーに生ける屍を浄化する力は無かったわけですから、これも単なる憶測にしか過ぎません。それでも……貴方達3人が合わせ持つ力が、あの黒い亀裂を打ち破る武器と成ることには間違いありません。先程も言った通り……貴方達の力を引き出したのは、紛れもなくエディーが持つ異能です。エディーが抱える『性質の異なる力』が何なのかわからなければ……これ以上、詮索するのは難しいでしょう。」


 ヴェスタはエディーの顔をじっと見つめると、意を決したように真剣な表情でエディーに声を掛ける。




「あの黒い腕も欲しがるような力……できれば、エディーに説明をお願いしたいのですが……」




 異能についての解説を求めるヴェスタに、マインは慌てた様子でエディーの心境を庇う。


「ちょっと待ってくれよ!エディーは……まだ俺達にも、異能について詳しく話してくれてないんだ。俺達に話すようになるまで、時間が欲しいって言ってたし……今のエディーに、異能について聞くのは、流石に止めてやってくれないか?」


 マインから咄嗟に庇われると、エディーは一瞬目を丸くして、眉を下げながら小さな声でぼそりと呟く。


「マイン……ありがとう、気を遣ってくれて……。」


 エディーが俯き口を噤むと、ヴェスタは謝罪の意を示してから再び説得を試みる。


「不躾な質問をしてしまい、申し訳なかったですね。しかし……今、話をしておかなければ……取り返しのつかない事態にもなりかねます。というのも……金に汚い商人が、黒い亀裂を打ち破る力を狙うのは理解できますが……あの黒い腕が、下手をすれば天敵であるエディーの力を狙う理由が理解できません。敵として命を狙われるならまだしも……貴方は黒い腕に捕らえられた際に、その力を利用されて、生ける屍を呼び寄せていました。この事から察するに、今後……黒い腕に、エディーが狙われ続けることになるのは明白でしょう。貴方なら、黒い亀裂に……黒い腕に狙われる理由も、マインとクレールに異能が目覚めた理由も、理解しているのではありませんか?その理由を、俺達にも聞かせてもらいたいのですが……まだ、話せそうにありませんか?」


 可能な限り穏やかな口調で語り掛けるヴェスタに、マインはエディーの心情を心配して声を掛ける。


「ヴェスタさん、エディーはまだ……俺達に話す、心の準備が……」


 マインがヴェスタに説得を止めるよう促していると、エディーが小さな声でマインの言葉を遮る。




「いいんだ、俺は大丈夫だから……心配してくれてありがとう、マイン。」




 不意に顔を上げて礼を伝えるエディーに、マイン達は思わずエディーの顔を見据える。


「本当に大丈夫なのか?エディー……無理をしなくても、俺達でなんとか原因を探して……」

「ううん、俺も……そろそろ話さなくちゃいけないなって思ってたんだ。俺が持っている力のせいで……マインとクレールにも異能が発現して、挙句の果てには……黒い腕からも狙われて……みんなを危険に晒す羽目になった。もう……俺だけの問題じゃなくて……1人で抱えて黙ってるわけにはいかなくなったと思うんだ。」


 エディーは一度言葉を区切り、深呼吸をしてから再び口を開く。




「だから……話すよ、俺のこと……。俺が持ってる、『異能』についての話を……。」




 エディーが覚悟を決めたかのように、真剣な表情でマイン達の顔を見つめると、マイン達は互いの顔を見合わせてからエディーに相槌を打つ。


「……わかった。エディーがそう言うなら……俺は何も言わず、話を聞くぜ。」

「ああ、エディーさんについて、私も聞きたいことだらけだ。話をしてくれるというなら……私は、エディーさんの勇気に感謝する。」

「秘密を打ち明けるのに、相当な覚悟が必要なところを……無理に引き出そうとして、申し訳ありませんでしたね。それでも……話してくれると言って頂けたことに、深く感謝しますよ。」


 マイン達がエディーにお礼の言葉を伝えると、エディーは首を左右に振って不安そうな声を漏らす。


「ううん……むしろ、俺の我儘に付き合ってくれて、ありがとう。正直に話すと……俺の異能について詳しく話すのに、不安が無いわけじゃないんだ。それでも……皆に打ち明けなくちゃいけない気持ちの方が強くて……。俺の秘密を……俺の『力』を知っても、友人のままで居てくれるかな……?」


 エディーがマイン達の反応を伺うように、眉を下げて少し俯くと、マイン達は笑顔でエディーの問いに答える。


「言っただろ?お前が何を隠してんのかわかんねぇけど……何を隠してたって、俺達はずっと親友だぜ?」

「何を抱えていようと、私達は決して独りではない。力を合わせれば、どんなことでも乗り越えていけるはずだ。」

「貴方達の秘密は、必ず守りますよ。成り行きだったとはいえ……貴方達の行く末を、見てみたくなったと言ったんですから……貴方達を守り、助けになるよう尽力します。」


 3人からの返答を聞き、エディーは安心したように表情を和らげる。


「みんな、ありがとう……。……それじゃあ、聞いてくれるかな……?俺の秘密を……俺が抱えている『力』のことを……」


 意を決したかのように、真剣な表情でマイン達の顔を見つめ直すと、エディーは口を開いて言葉を紡ぎ出す。




「実は、俺……」




 いざエディーが口を開き、秘密を打ち明けようとした瞬間——医療施設の外から、騒がしく話す人々の声が聞こえてくる。


「なんだ?何があったんだ……?」


 内容は聞き取れないものの、人々が動揺している様子の騒がしさから、ただ事ではないことはマイン達にも察しがついた。

 マイン達が困惑した表情で思わず周囲を見渡していると、ヴェスタが険しい顔付きでエディーに向けて謝罪する。


「……申し訳ありません。折角、貴方が話す勇気を示してくれたのですが……少しだけ、外の様子を見て来ます。ヒゥヘイムも……今、手が離せないかと思いますので……」


 申し訳なさそうに謝罪の言葉を伝え、部屋の扉を潜ろうとしたヴェスタに、マインとクレールが立ち上がって声を掛ける。


「俺達も行くぜ。人手が必要になりそうなら……一緒に行った方が、早く終わるだろうしな。」


 マインからの申し出に、ヴェスタはマイン達に顔を向けて部屋に残るよう促す。


「いえ……貴方達は、部屋でエディーと共に休んでいて下さい。街で起きた問題は、俺がなんとかしてきますので……。」


 ヴェスタが休息を促すも、クレールは首を左右に振って同行する意を示す。


「いえ……私とマインさんは、エディーさんほどダメージを負っているわけではありませんので……何かお手伝いすることがあれば、助けになると思います。」

「おう、俺達はもう充分休ませて貰ってるからな。どんなことでも、すぐに動けるぜ。」


 気合を入れて掌と拳を打ち合わせたマインは、ふと振り返ってエディーに声を掛ける。


「悪いけど、エディー……お前はこのまま休んで、俺達の帰りを待っててくれ。折角、お前が自分のことを話そうとしてくれたのに……席を外すことをして、ごめんな。エディーの話をすぐに聞けないのは残念だし、外が騒がしいまま聞いても……やっぱり気になって、落ち着かないからな。」

「エディーさんには悪いことをしてしまうが……騒ぎの原因を突き止め、対処してくるとしよう。エディーさんからの話は、集中して聞きたいからな……。騒ぎの鎮静化に行ってきても良いだろうか?」


 2人は謝罪しながらエディーに外出する旨を伝えると、エディーは心配した様子で2人に言葉を返す。


「それは別に良いんだけど……それなら俺も、みんなと一緒に外に出るよ。ただじっとしてるわけにもいかないし、俺も騒ぎの原因が気になるから……」


 エディーはそう言ってベッドから下りようと体を動かし、横にしていた足を床に付ける。

 立ち上がろうとしたエディーの前に立ちはだかり、マインとクレールはエディーの体を優しく押してベッドへと押し込むと、念のためにと2人でエディーに釘を刺した。


「いいや、お前は起きたばかりだし、体調も万全じゃないんだから、今の内に休んどけよ。」

「ああ、無理をして倒れられても困るからな。」


 マインとクレールにベッドの中へと押し戻され、エディーは肩をすくめて気落ちした声で返事をする。


「うぅ……わかった、大人しくしておくよ……。危険はないとは思うけど……くれぐれも気を付けてな……?」


 エディーは足をベッドの中へ戻し、すんなりと諦めた様子でマイン達に改めて声を掛ける。


「おう。すぐに戻ってくるから、心配せずに待っててくれよな。」


 マインがエディーに返事をすると、3人はお互いの顔を見合わせてからエディーを残して部屋を後にする。

 1人部屋に残されたエディーは、体を捻り窓の外へと視線を向けると、騒ぎの鎮静に向かったマイン達を心配して独り言を呟く。




「みんな、大丈夫かな……。大事にならないと良いけど……。」




 落ち着かない様子で、窓の外から視線を正面に戻したエディーは、軽く俯き、静かにマイン達の帰りを待った——。



次回投稿日:3月6日(金曜日20時頃)

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