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第6話

 

 皆、騒然となる。

 シューとジェイは、

「僕らはこれで・・・」

 と言って逃げる気だ。しかしいったい何処へ逃げるというのか。

 ジュールはさすが年の功、姿を全く別人に変化させた。セーンにはまだできない芸当である。

 そうこうしている内に、遂に双子は登場した。大きな音をさせて扉を開ける。

 バァーン 

 こういうふるまいでは、しつけはまだ終わってはいない。

「セーン様、お久しぶりですわ」

「セーン様、実は、あたくしが先にお気持ちをお聞きする権利を、昨日王の立会いの下に、決まりましたの。よろしくお願いしますわ」

 立ち居振る舞いはなっていないが、顔は可愛いと言える双子。歳は人間で言うと16,7才に見えるが少し前は赤ちゃんだったので、1年程で大人に近く成長するという事だろう。まだ生まれて2年ほどしか経っていないことを考えたら、よく躾けたと言えるかもしれない。ちゃんと奇麗なドレスを着こなし、化粧も薄くではあるが施していて、その取り繕い方、見事と言える。だが、お付きの人の技の巧みさと言う事だ。

 セーンとしては、一言でも褒めたら終わりだと思った。社交辞令は無しだ。失言しないように、黙っているが不自然とは思う。

 代わりにユーリーン婆が、お愛想を言う。

「まあ、隣国の王女様たちね。お二人ともとても可愛らしいわね。ところで誰かお伴の方はご一緒じゃないの」

「ありがとうございます。レン様のお母上のユーリーン様ですね。初めまして、わたくし、隣国の王女チーラです」

「初めまして、レン様の御父上のニキ・グルード様、わたくしは隣国の王女ミーラですの。よろしくお願いしますわ」

「おや、儂を知っているのか。挨拶が出来てえらいな」

『ジジババ、やけに愛想がよい。まあ、相手は王女だからね』セーンはお愛想いうジジババを見て、『世渡りとはこういうものだろうけど、付き添い無しでは、お愛想の意味はないかもしれない』と思えた。

 それにしても、双子はユーリーン婆を見つめている。ユーリーン婆は思わず、

「あら、あたしの顔に何か珍しい所があったかしら」

 と言うと、

「失礼しました」

「古の王女様がお年を召した感じのお顔は、初めて拝見いたしました」

 『なるほど』と思ったセーン、ユーリーン婆に見とれだしたので、隙を見てずらかれるのではと思った。『ヤモちゃんは薄情にも俺を置いて逃げたし、こうなったら、一人ででもセピアにずらかろう』

 決心したセーンは、気の抜けた風を装いながら、双子の様子を窺っていると、ヤモちゃんが 『俺らは獣人に見つかったら食われるから逃げた。王女だし、客だからのす訳にはいかないだろ。ずらかるときは一緒に行くとさっき約束したよ』

 どこからかテレパシーで主張してきたヤモちゃん。

『そうだったね、一緒に逃げると約束したんだったな。分かったよ』

 固い約束をした後、瞬間移動阻止の魔力の技に抜け道は無いか、探してみるセーン。勘で探っても、全く綻びは感じられない。内心『こんな完璧な技、この王女たちには無理じゃないかな。この前訪問されたときに居た付き人ふうな人たち、付いて来てないかと思ったけど、やっぱり付いて来ていて、あいつらがこの技を使ったのかもしれないな』

『そいつ、のしてこよか』

 ヤモちゃんが、セーンの御機嫌を取っているという事実は、セーンにさえ分かるが、聞いてみる。

『できるのか、王女でない奴だから?』『できる、居るとこもわかる』『じゃあ、のしてきてよ。瞬間移動できることが分かったら、すぐずらかるからね』

 返事をしておいたら、双子のどちらかが、セーンを見た。何か感じたのだろうか。にっこりされたので、セーンも思わずにっこりしてしまった。しまった、愛想笑いはしてはダメなヤツ等だった。そして柄にもなく、焦るセーン。

 その後急に、瞬間移動阻止の呪文の様なものは解けた。『ヤモちゃん、無事だったのだろうか』『ぶじ』・・・ヤーモちゃんも付いて来る気らしい。とっさに瞬間移動でリューンさんの所に行くことにした。ヤモ達もすぐ追いかけて来て、ポケットに入った。


 必死だったので、後の事はどうなったかは分からない。いきなりリューンさんの目の前に瞬間移動したのだが、察していたとみえるリューンさんは、

「おや、セーンか。お前も苦労しているらしいじゃないか。あ、苦労は今からだったか・・」

 なんだか意味深な言葉だ。

「どうしてそう言うんですかね・・・」

 一応理由は聞いておこうと思ったのだが、すぐに聞くまでもない事が分かった。

 何と!双子のどっちかは知らないが、追いかけて来た。

「いやーん、セーン様。わたくしをおいて行こうとしないでっ」

 と言いながら、セーンにしだれかかって来た。ヤモとヤーモはリューンさんのポケットに、瞬間移動した。居ると分かったら食われるそうだかららしい。恐ろしい事になった。

「すいませんけど、俺は無理ですからっ」

 セーンは冷や汗をかきながら、『リューンさん、助けて』と、テレパシーで言ったのだが相手にされない、応答なしだ。

 セーン、パニックになり、自分でもぞっとするようなことを、王女に言った。

「くたばれ、ワン公」

 しーん

 辺りは凍り付いたかのようである。

「セーン様?今。何とおっしゃって?」

「なんか、かったるいんだよー」

 捨て台詞を言って、又、瞬間移動しようと思ったのだが、王女に感付かれ、腕をむんずと掴まれる。

 薄情なリューン叔父さんは、

「王女様、このセーンは私の甥でして、能力、性格申し分ありません。私が保証しますよ。そういう事で。どうぞ、こいつをお国に連れて行ってください」

 王女はニッコリ微笑むと、

「ありがとうございます。セーンの叔父様」

 そう言って、セーンを自国に瞬間移動で連れ去るのだった。

『さよなら、セーン』

 かすかにヤーモちゃんの別れの言葉を耳にした気がするセーンであるが、王女様のあまりの瞬間移動の速さに不覚にも失神してしまった。



何とも、興味深い展開になって来ましたが、明日の投稿から1話ずつになります。推敲時間が足りなくなりそうですので・・・1日1話投稿は夜を徹してでもやり遂げたいと思っております。書き終えた話はまだ有りますが、ある程度は見直しておきたいので・・・見直してもミスに気付かない作者ですが。

全部書き終えて投稿すればいいのに・・・そう思われる方、多いと思います。ですが、作者は必ず書き終えるつもりです。安心してお読みください。と言うのも、大ぼらを書く為には、皆様に読んでもらっていると思う事が必要なのです。

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