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第5話

 

 城跡のリーの所に瞬間移動しようとしたが、異変を感じて何とか踏みとどまったセーン。と言っても、魔物なんかじゃないのだが、セーン自身に不味い事があると感が働き、何とか城跡の上空に浮いていた。

「俺って空中に浮かんでいる能力ってのがあるんだ・・・今知った」

 自分で感心しながら、眼下を見ると、隣国の獣人の国からの使いだろうか、獣人の兵隊さんが大勢、城跡の草原で寛いでいる。きっと護衛の兵だろう、隣国のお偉いさんがリーを訪問しているようだ。

 セーンは浮かんでいるのに精いっぱいで、訪問者の様子を窺えない。そこで、ヤモちゃんに聞いてみた。

「あいつら、何の用で来ているのかな」

「えーと、セーンに関係ある事。いつか館に来た双子の親が来ている」

「げっ、どうりで何か不味そうだと感じたはずだな。何か聞くまでもない気もするけど、何しに来たわけ、あいつらの親父は」

「あいつらとか言えないよ。王女様に地位が上がったな

「どうして、館じゃ一般人みたいだったぞ」

「隣国の王は、20年に一度、総合格闘技みたいな大会を開いて、優勝した人が王様になる決まりだ。双子の親が優勝して王になっている」

「そんなっ、きっと俺の運命は下降線な気がする」

「うん、双子の親の王様がリーに、何時セーンとの正式なお見合いするのかと言って来てな。そして選ばれなかった方が次期女王で此処の王が婿になる予定。この前魔王が復活して、ここにやって来て、リーが困っていると、あいつが兵を寄こして恩を売ったな」

「ヤモちゃん、俺の見方だねー。段々説明に私情を挟みだしたね。恩を売って、リーが断れなくしたんだな。なるほど、それでリーは王になりたくないんだ。そしてジェイを犠牲にするつもりだったんだな。こうなったら、俺らはお見合い拒否で、何処かにずらかるべきじゃないかな」

「逃げおおせるかな。それより王をのした方が早い」

「ヤモ一家は争いを好まないんじゃなかったのか」

「俺らは、主人を守る戦いは、積極的になる傾向があるんだ」

「前にそういう戦いがあったの」

「うん、そして敗北して、王は殺された。今の魔王は敵の身内だ。俺らでやりたかったけど、俺らもあの獣人の王に恩を売られてしまったな」

「ヤモちゃん一家はあの時、魔王が出て来たのが、分かったのと違うか。やっつけに行かなくて良かったの」

「セーンと主従の契約したじゃないか。セーンが動かないのに、俺らが勝手なことはできない」

「えーっ、そういう事。俺に報告すればよかったのに。魔王をやっつけに行こうって誘われたら行くのに」

「セーンは関係なかった。魔王はレンと戦う気だったんだから。魔の空洞から出て、魔王達は少し弱っていたから、レンじゃなく、リーを手始めにやる気で、城跡に来たようだったな。リーが地下の作物で一儲けしていたから、気に食わなかったようだし」

「ふうん、獣人の王はどうして魔王をやっつける機会があったの、丁度こっちに居たとか」

「そう、被害の見舞いに来る途中だった。食べ物や薬とか持ってきていた」

「うわ、良い人なんだな。こっちは、そういう人に盾つく気だけどな。やっぱりのすより逃げようよ。あいつ良い人過ぎる」

「セーンがそう言うなら、そうするけど」

「じゃ、一旦戻ろう。リーは理由がだいたい知れたから、ユーリーン婆に説明しておこう。で、ずらかろうな」

「うん」


 セーンはリーを連れて来る事は出来なかったが、疑問の点は分かったので戻ってユーリーン婆に報告である。

「あら、リーは?」

「リーは取り込み中だったし、俺が混じる訳にはいかない奴が居た。リーに聞きたかったことは、多分分かった感じだよ」

 セーンはヤモちゃんが察したことをその場の皆に報告した。

「で、誰があの双子にデタラメな無責任な話を吹き込んだかだけど・・・その責任をとるべきやつはー」

 セーンはわざと分からないかのように周りを見渡した。

 そんなセーンに構わず、ニキ爺さんはマジで、

「レン、少しは言った事の結果を考えて、物を言え。原因はお前の冗談からだぞ。どうするつもりなんだ」

「くーっ。どうして俺にこんなピンチがやってくるんだ。仕方ない。あいつが王になってリーんとこに居るのなら、今から話付けてくるよ」

 セーンは冗談の一発をお見舞いした。

「ママと別れて親父は独り身なんだから、何だったら双子の面倒を見てやったらどう?俺の親なんだから。また似たような顔の子供が生まれる可能性があるかもよ。そう言ったら双子も親父とは年の差婚だけど、その気になるかもしれないよ」

 レンはセーンを睨み、

「調子に乗る奴だな。覚えておけよ、戻ったらたっぷり時間はあるんだ」

 と言って出掛けた。

 爺さんは、

「セーンや、お前はちょっとお調子者だね。こう言っちゃぁ何だが、レンに似ているぞ、そういうところは。だから改めた方が身のためだ」

「げっ、分かったよ。もう黙っていよう。親父の説得が効くかまだ分かっていなかったな。調子に乗るのは早かったかな」

 ユーリーン婆も、

「そうよねぇ、レンのお友達の獣人と言えば、あの国最強の獣人でしょ。こっちで暮していた時があったけれど。あたしたちはガンちゃんとか呼んでいたけど、国に戻ったら随分身分がある人だったってね」

「うん、今では王にまで上り詰めたそうだからね。それに娘にはかなり甘い親らしいからな。セーン、ある程度は覚悟していた方が良いな」

「爺さん、それ、冗談だよな。そう言ってよ」


 その時、恐ろしい事態が始まったのだった。いや、既にかなり前から始まっていたと言えるだろう。

 玄関が派手な音を立てて開き、同時に嬌声が聞こえた。

「あっ、今セーン様の声が聞こえたわ」

「聞こえたわ。きっとあちらにいらしてよ。行くわよ」

「まっ、順番はあたしからって決めたでしょ、昨日」

「あら、何の事」

 どたどた走る音。

「きゃー、ずるい」

 もう一匹の走る音。


「不味い、もう来やがった。俺は逃げる」

 セーンは宣言して、瞬間移動しようとしたが、何故か出来ない。

「あいつら、瞬間移動の阻止が出来る。能力が半端ないや。お婆ちゃん、僕負けるかも」

 ユーリーンは、

「まぁ、気をしっかり持つのよ。男でしょ。それに年上だし。ヤモちゃんだって味方するでしょ」

「ヤモ達、ポケットから居なくなっているよ。あいつ、俺を見捨てたのか」



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