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訳あり一家の長ニキとユーリーンの孫は隠れ超能力者。セーンにまつわるとんでもな数々の話題について ~気付かない内に運命急上昇中その3  作者: 龍冶


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ユーリーンの小話

このシリーズの締めくくりは、ユーリーン登場による小話がふさわしいような気がしました。

 

 ユーリーン・グロード 世間の人からはお婆さんと呼ばれても不思議ではない年齢になってはいても、世間的にはお婆さんと呼ぶにはいささか言動に問題ありというお方。

 しかし、本人に向かってそう言う意味の事を言う勇気ある人はいない。夫ニキ・グロードはもちろんの事、子や孫に至ってもそう言う話題、決して本人の前では絶対話さないし、本人が居ない所でも口には出さない。とある国では『壁に耳あり、障子に目あり』という諺、言い換えると戒めがあるが、ここニキ・グルードがニールの端に新しく造った館には、実際に壁に耳と目が存在する。ヘキジョウさんっ子達の存在だ。

 ヘキジョウさんっ子はユーリーン婆さんの噂を誰かがしようものなら、婆さんに秒速で素早く報告する。これには、皆こりて居るのだった。

 特にヤーモちゃんの子であるキャイちゃんは(命名リューン、可愛すぎる名。年齢が行ってからの違和感の責任を取る気はない)、特にお婆ちゃんっ子で、キャイちゃんの前ではユーリーンを誰もが褒め讃えている。褒めていたことも報告されるのでグルード家の平和は、不滅だ。

 しかし、この小説では有りがちだが、平和は長くは続かない。

 その朝、ユーリーンは何時に無く寝覚めが悪かった。いつもはさわやかに朝のひと時を過ごす。というのもヘキジョウさんっ子の誰かが遊びに来て、ユーリーン婆は寝間着のまましばらく遊んでいたのだが、今日は何故か誰一人来ない。

 不審に思いながら、面倒なので着替えもせず、朝食に降りていく。すると、客間からニキ爺さんのいささか不機嫌だけれど、客だからキチンとしています的な声がする。

「お客様ね、誰かしら」

 ユーリーン婆の疑問もヘキジョウさんっ子が直ぐに答える。壁の上の方から、

「ヴァンパイアのヴァンちゃん」

「ヴァンちゃんの息子、リアン坊ちゃん」

 ユーリーン婆、踵を返し寝室へ飛び込んだ。驚いたキャイちゃんが後を追って来る。

「お婆ちゃんどうしたの」

「きっと、あのお客は爺さんと話し終わったら、あたしに会いたがるけど、ユーリーン婆はまだ寝ているって言って、爺さんに面会を断ってとあたしが言っていたと伝えてね。こっそりよ」

「こっそりでないと、寝て無いってばれるね」

「そうよ、おりこうね。キャイちゃんは」

 客間のニキ爺さんとヴァンちゃん、天気の話も、季節の話も尽き、リアン坊ちゃんはヤーモちゃんに会いたがるし、ニキ爺さんはユーリーン婆さんにバトンタッチしたいしで、リアン坊ちゃんに続いて客間を出ると、爺さん執事さんに、

「さっき、婆さんの足音がしたと思ったが、違ったかな」

 悲しくも、爺さんは執事さんに聞いている。壁の上で待っていたキャイちゃん、ため息をつく。

 執事さんは、

「途中で寝室に戻られたようです。ご気分でもお悪いのでは」

 少し気が利いた言い様だ。キャイちゃん、『さすが、執事さん』と感服する。しかし、

「では、私めがお見舞いに伺いたいのですが」

 ヴァンちゃんも負けてはいない。

「しかし、ユーリーンはどうだかな」

『事情を知らないニキ爺さんも、踏ん張る』と思う、キャイちゃん。そこで、

『お婆ちゃんはねんねしているから、お爺ちゃんにことわってて言っていたよ。しまった、こっそりだった』

 キャイちゃんはお爺ちゃんに上手にコンタクト出来たが、しまったも言う。しかし、しまったで間違いない。ヴァンちゃんは他の人のコンタクトも近くなら分かっている。

 ヴァンちゃんは壁に張り付くキャイちゃんをにっこり見た後、ニキ爺さんに、

「お見舞いに伺ってもよろしいでしょうか」

 と聞くので、ニキ爺さん少し嫌だったが、以前、ユーリーンから年甲斐もなく嫉妬すると言われたので寛大に、

「どうぞ、どうぞ、もう婆さんですからね」

 等と言ってやった。(きっと嫌がるのは分かっていたのだが。寛大な所は見せてやりたい)

 ヴァンちゃんはニコニコしながら、ユーリーンの所へ向かった。

 寝室のドアをノックされ、ユーリーンは、『来やがったな』と分かった。返答を待たずにヴァンちゃんはドアを開け、

「来やがりました。ユーリーン様。お久しぶりです」

「あーら、ヴァンちゃん相変わらずのハンサムぶり。今さらながら、あの時お断りして正解でしたわ」

「そうですね。私とあなたは初めから結ばれない運命だったという事は、理解しています。ニールの婚約は他の国の結婚の儀式よりも固い約束と、私も噂は聞いておりましたから、諦めたんですよ。あのリアンは私の本当の子です。ご存じでしたか」

「はぁー、セーン達はあまりあの頃の話は詳しくしなくって、レンの子じゃなかったって言うのは聞きましたけど・・・ヴァンちゃんの本当の子ってのは、血吸ったか飲んだかとかじゃなくて、王様は子供を作れるって事なの」

「王様だからではなく、私が魔の国に居る魔法使いと取引してそう言う体に変えてもらいました。あなたが、子供が欲しいからと私のプロポーズを断ったでしょう。だからもう一度プロポーズするつもりでしたが、婚約者がいると分かり諦めました」

「げっ、あたしがああ言ったからって事、あのう、そう言う手術みたいなの、お幾ら位かかるのかしら・・・。あっ、いえっ、おっしゃらないで、どうせ弁償できる額じゃないでしょうし、あたしだってあの頃は、自分が婚約しているとか、知らなかった事ですからね。責任とか取れませんわッ」

「そんな事、要求しやしませんから、ご安心ください」

「じゃ、何の御用?」

「随分シャキシャキしたお婆さんになりましたね。あの頃、あなたは美しかったですよ。ご自分で認めていらっしゃらないようですが。その事をどうしてもお知らせしたくて、お目にかかってはっきり教えて差し上げたかったのですよ。そうしましたら、今でもお美しいので、驚きました」

「んもうっ、お上手ねっ」

「お世辞ではありません。魔物の子が良く懐いていますね。ああいう者は人に懐かないですよ。内面が分かりますからね。何を考えているか分かるんですよ。悪だくみとか知られてしまうんです。年くって来ると人間の心は汚れてくるものですが、あなたにはそれが有りませんね。美人さんです。あー、そろそろ失礼します。私も年くって、上辺を取り繕うのが段々下手になって来ました。さようなら。もうこれっきりお会いしないことにしますよ」

 そう言うと、ヴァンパイアのヴァンちゃん、あっさり消えてしまった。

「どういう事?」

 ユーリーン婆、首をかしげる。

 普段から男女の駆け引きっぽい事は苦手だったので、何だか意味深らしいのが分かっても、具体的にだからどうって言うのがピンとこない。

「これは何か意味があるはず。誰に聞こうか・・・あたしの身内はどいつもあたし似っぽくて聞いても無駄だし。ここで血筋が違うのはチーラさんだ。聞きに行こ」

 チーラさん、ユーリーン婆からヴァンちゃんとの一部始終を聞いて、

「まぁっ、お婆さまって、ヴァンちゃんと‥、スゴっ」

 と言ったきり、ひとり興奮している感じで唸っているので、ユーリーンは諦めて部屋を出た。

「セーンはチーラさんが最近すっかり打ち解けて、本性が出るようになった。とか言っていたけど。あの後きっと獣形態になるんでしょうね」

 と呟いていると、

 キャイちゃんが反省したように現れて、

「ごめんねお婆ちゃん、キャイ上手く伝えられなかった。ヴァンちゃんはお婆ちゃん好きね。お爺ちゃん知っているけど、お爺ちゃんの好きが多いって思てる。だから会って良いって言った」

「なるほど、初めからキャンちゃんに聞いておけば分かったね。あいつの言った意味」

 おしまい


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