エピローグ
セーンは魔国から皆でなんとか無事に返って来られた。戻ってから、ほっとするひと時を過ごすことが出来ていた。
ヤモちゃんとヤーモちゃんは、又何時ものように子守をしていたが、以前よりかなり大きくなっていて、さほど手間はかかっていない様だ。セーンは最近、出かける用事が無い所為かヤモちゃんがポケットに入っている事は無い。
今更だが、ヤモちゃんはセーンに危険が及んだ場合、何とかするつもりでポケットに入って付いて来る。セーンが家にいるときは、ほぼ入っている事は無い。
「ポケットが、軽すぎる」
セーンは言ってみるが、暇な今日この頃、ヤモちゃんは構ってはくれない。その代わりと言っては何だが、ニーセンとユーセンが構ってくれる。二人と、遊ぶしかない。最近二人はどんどん成長し出した。そう言う時期なのだろう。かけっこでタイムを計ればすぐに敵わなくなると思える。家庭教師を付ける頃を過ぎているが、適任者は居ない。この国には人材が無いのだ。セーン自身で教えるしかないのだろうか。セーンは自覚しているが、知恵はない。能力と言うかパワーとかは有っても、一学年であろうと、上学年であろうと勉強を教えるという件、無理だ。
その時、ふとヤモちゃんがセーンよりはかなり年上で、何だか頭もよさそうな事を思い出した。『あいつ、自慢しないだけでかなりの知識があるはず』
セーンは以前チーセンとラーセンの使っていた部屋から、セピア留学用の実力試験例題と書いてある資料を見つけ出した。それを持って子供部屋へ、ヤモを探しに行った。普通ここに居るはず。
ドアを開けるが、ヤモちゃんもヤーモちゃんも居ない。ヘキジョウさんっ子はお昼寝中だ。大きくなってすっかり一人前っぽいヤッヤモちゃんが、一人掃除をしていた。恐らく言いつけられたわけではなく、自主的にやっていると思うセーンだ。
「一人なのヤッヤモ、ヤモとヤーモは何処に居るか知っている?」
「二人ともユーリーン様の所」
「へえ、何の用かな」
「ユーリーン様が呼んだんじゃなくて、ヤモとヤーモが行った」
「どうして」
「魔の国の瘴気にあたって、おまけにヤーモはニーセンとユーセンにパワーをやったから元気ない」
「俺、それを知らないぞ。どういう事」
「二人とも、隠している」
「どうして俺に言わない、俺が癒したらきっともっと早く良くなるのに」
セーンは疑問点をつい口に出すタイプだ。ヤッヤモがそれに自分の説を言う。
「なんだかセーンずっと元気ないから、セーンもどこか悪いって二人が遠慮しているな」
「遠慮。えんりょだとっ。俺らの間に遠慮が入って来たのか。おのれ、遠慮めっ」
ヤッヤモ、セーンは具合が悪いんだと気の毒そうに見つめる。セーンはいたたまれず子供部屋を出た。次にユーリーン婆の部屋へ行く。
そろりとドアを開けた。ユーリーンの部屋を久しぶりに訪れてみると、三人掛けのソフアばかり揃えてありそこに二人とも横たわり、ユーリーン婆が汗をかきかき頑張って癒していた。
ドアが開いたので、三人は一斉にセーンを見た。おそらくセーンが来たのは分かっているようだった。
「俺らの間に遠慮がいつの間にか、はびこりやがったな。どうしてはびこるかな。俺の働きが悪かったって、さっきまでお前らの顔に書いていたとか?で、俺が来たから消したとか、かな」
ヤモは、
「お前がそんな風に自分を責めているからな。癒し効果も期待できないと思ったんだ。ヤッヤモだって感じていただろうが。セーンの具合が悪いって」
「なるほど、俺ってそんなに元気なくなったのかな・・・とにかく、俺が癒した方が良いはず。多分、ユーリーン婆より元気になれるはず」
「無理するなよ」
ヤモちゃんはそう言って起き上がった。
「その紙、何?」
「あ、これね。ヤモは回答できるか試そうと思って。言っておくけど、答えは見ないのがルールだから」
「俺も言っておくが、ヤコの件は、俺は奴にそれを教えたわけじゃない」
「みんなそれは分かっているよ。ヤコが偶然思いついただけだってね」
「ご、ごめんなさいね。セーン。あの、カンニングの事だけど、何となく、あたしがアドバイスしたような気がしているのよ」
「本当なの。さすがユーリーン婆。それにしても、おみそれしやした」
「やーねぇ、まさかそれ本気にするとは思わなかったのよ。ヤコちゃんはきっと透視能力とか持っているんじゃないかと思ってね。テストで分からない事ばかりの時、お婆ちゃんは、自分に透視能力が有ったらよかったのにって、いつも思っていたって。ヤコちゃんがオーカーさんに会いに行く前の、何時だったか忘れたけど、何となく話したのよね。そして、先生は模範解答とか、自分で用意してみるものだってのも言ったのよ。これって、良い子のお婆ちゃんには、あるまじき言動よね」
「いやいや、さすがだ。ヤコに的確なアドバイスだな。婆さんを見ていると、つくづくこの家ってのはユーリーン婆で守っているって感じだな」
そして、ヤモちゃんにテスト用紙を渡す、
「これさ、ヤモがみんなに、学校の先生みたいに勉強を教えて、ニーセンとユーセンもヘキジョウっ子と勉強すれば良いんじゃないかって思ったんだ。ハイスクールに入るまでね。そしてヘキジョウっ子は、皆インテリ魔物になるんだ」
すると、ヤーモちゃんはなぜか声もなく、笑っている。
セーンはどうしたんだろうと思っていると、
「ヤモにどうして、それさせようとするんだ。セーンがすべきだろう。セーンが学校に行ったことあるんだから。それかユーリーンさんに頼むとか。魔物に先生させようとするなよ。くっくっく可笑しすぎて、片腹痛い」
「変かな、そんなに」
「ヤモが断れなくて、先生し出しそうでさ」
「うるさい、するか。こんな事」
ヤモちゃん用紙をプルプルと揺らしてセーンに返すと、
「無理、無理だからな。こんなの良く分からん」
「でも、お前は字が読めるはず。俺が気が付かないとか思うなよ」
「セーンったらもう、仕方のない子ね。これはセーンが良くないわね。そういうのはセーンのする事よ。使い魔の役目じゃないの。こういう事思いつくのは、レンがきちんとルールとか教えて無い所為ね」
「ちぇ、いい事思いついたと思ったのに」
ヤモちゃん、どうやら役目が回って来ないようなので、ほっとするのだった。
先日は後書きにあいさつ文を書いてしまっていたのですが。エピローグ的なエピソードを思いつきました。
セーンとヤモちゃんとヤーモちゃんの主役的存在のエピソードで終わるべきだったのではと思い投稿しておきます。




