第54話 リアンはヴァンパイア王ヴァンちゃんの子、ヤーモと別れる。ニキの館にリューンも来て、ユーリーンはヤーモの子キャイのお守。セーンはユーリーンにヴァンちゃんの事聞く。学校でヤコは苗字変更。そして
前の53話でヴァンパイアの王様にセーン達一族に仇なす魔族をやっつけてもらったセーン達、やれやれとばかりに後はニールに戻るだけとなりました。セーンは取りあえず、気がかりな事は片付いた感があります。
そんな皆の所へ、リアン坊ちゃんがあるニュースを知らせに来ます。
この小説は大詰めとなりました。
皆で帰ろうと思うが、体力的に瞬間移動は出来そうもないさらわれていた者と、比較的元気のあるココモちゃんと付き人、ヤコ、レン、セーンは少し精神的に怪しいが、で、それぞれ担当者を決めているところへ、リアン坊ちゃんがやって来た。
「ヤーモ様、御無事で何より・・・でもお元気ではなさそうで、早くヤーモ様の元へ駆けつけたかったのですが、ママがなかなか話を聞いてくれなくて・・・」
レンは、
「悪かったな、無理言った」
「いえ、ママは、はっきり言って、僕が言わなくても皆さんご承知でしょうが、根性悪ですからね。それはそれとして、僕は恥を忍んで・・・ニュースがあります。良いニュースと悪いニュースがあって、ヤーモ様にどちらを先に言えばよいのか・・・」
ヤーモ、
「あまり興味ないけど、みんな帰りたいから手短にね」
「そうでしょうね。では、悪い方から、僕、ヤーモ様のお側に居られなくなってしまって」
「良いニュース先にした?」
「そんな、悪い方です。そして良い方は・・・実は僕、王様の子供らしいんです」
「それはすっばらしいニュース」
「すごーい」
「リアン君将来王様?」
皆口々に喜んだ。
「ありがとうございます。どうして王様の子と分かったかというと、不思議な事に、王様が若い頃、魔族にひどい目に合って、国から逃げて、当てもなく瞬間移動したら、ユーリーン様のいらっしゃるところに落ちたそうです。ユーリーン様が、お怪我を治してくださり、すっかりユーリーン様を愛してしまった王様が、プロポーズしたところ、ヴァンパイアと結婚したら、子供は望めないからいやだと断られたそうで。王様はすごく悲しくて、何とか子供ができる体になりたいと思って。魔の国にも魔法使いが居るんですが。彼らはヴァンパイアとは仲が悪くて、お礼の額を多く払うしかなかったそうでした。王様は、代々受け継がれた金や宝石全て渡して、とある魔法使いと取引したそうです。そしたら支払ったその後、その魔法使いが、意地悪くユーリーン様には女神さまに許しを得た婚約者がいると言い出したんです。王様は騙されたんです。一文無しの王様になって、やけになってレン様の奥さんだったママと不倫したのはそのためです。未だに奥さんは来てがないそうです。だから僕が跡取り決定で、王様の居る城で王様見習いとして、今日から城で暮らします。それで、ヤーモ様のお側に居られなくなりました」
「良かったね、リアン」
ヤーモちゃん、あっさり祝福して、さっさとヤコちゃんに連れて帰ってもらうつもりで、瞬間移動スタンバイ中のヤコの方を振り返って行ってしまう。
セーン、しみじみ
「良かったじゃないか、リアン坊ちゃん。あの王様に世間の常識も習うだろうし、じゃ、こっちの事は気にせずに居てね」
そしてぞろぞろ、リアン坊ちゃんの視界から消えていった。
ここはニキ爺さんのニールの館。ユーリーン婆さんは、任されたヤーモちゃんの赤ちゃんの世話で一日中、館の台所と子供部屋を行ったり来たり、言い様によっては、階段を上ったり下りたりである。赤ちゃんのお部屋、リビングルームにでも変更しておけばよかったのでは。婆さんの周りにはそんな気の利いた提案をしてくれる人はいなかった。
夕刻には、膝が笑う笑う。赤ちゃんが元気にお昼寝から目覚めると、ユーリーン婆さん、立っておられず座っちゃう。
「だれかーっ、あたしの代わりにこの卵、半熟にしてー」
二階の子供部屋から叫ぶユーリーン、もう一歩も歩かないと決心する。今朝、赤ちゃんのうんちらしき代物が緩い気がして悩んでいると、コックさんが半熟にしたらとアドバイスがあった。おかげで完璧な子守人となったユーリーン婆。完璧とは言え、歳には勝てない。
誰の応答もないので、『リューン、リューン』
弟を呼ぶ。内心、『何してんの、リューンは』と文句を言っていると。
「ユーリーン、赤ちゃんの守は気が紛れてよさそうだな。俺が交代してやろうか」
「その気があるなら、もっと早い所で交代してよね」
「もう動けないのか、やれやれ、」
「キャーィ、キャーィ」
「随分面白い声出すねぇ。とりあえず名はキャイちゃんにしておこうかな」
「でも、自分の名を自分で呼んでる気分になるんじゃない」
「そんな、自分が言っている事と同じとは、思うまい」
「ま、取りあえず半熟お願い」
「はいよ」
リューンの戻って来そうな頃になっても、半熟卵が来ない。ユーリーン婆さん、叫ぶ。相手がリューンなんだから、コンタクトで事足りるはずだが、
「半熟卵、半熟卵、はんじゅくたまごーっ」
するとセーンが持ってきてくれた。
「婆さん、何時に無く元気が良いねー。子守楽しかったって?」
「セーン、帰って来たのっ、皆も」
「うん、半熟卵、はい。皆戻った。食べさせないの。俺がするの?だろうね」
ユーリーン婆は、涙が出て来て、赤ちゃんの世話はセーンに任せた。
「よがっだ。心配したのよう。ほんと、よがっだ」
「うん、心配かけたね。それはそうと、婆さんが若い頃、ヴァンパイアのヴァンさんってのにプロポーズされたことあったんじゃない」
「え、ヴァンさん見たとか?」
「そのヴァンさんが、俺らがみんなの居所が分からなくて、ぐずぐずしている間に皆を助け出してくれたんだよ。婆さんに恩があって、これで返せたって言っていたよ。魔の国は瘴気が酷くて、ニーセンやユーセンは危なくなっていた。こっちの方が恩がありそうな気がしたけど。婆さんはヴァンさんに何かしてあげたの?」
「ぜーんぜん、最初にけがを治した後は、(これはニキには内緒だけど)ちょっといちゃいちゃして、後はプロポーズ断っただけよ。南ニールでハイスクールに通っていた時の話よ。これも内緒だけど、ヴァンパイアって大概すごくハンサムなのよね。だからあたしらみたいな小娘が、横に並んだらみっともなさが映えるのよねぇ。だから、結婚なんてできないのよ。悲惨よ悲惨。ヴァンパイアの夫とかちょっとあこがれたけど、横には並ばれないの。だから断ったの」
「へぇ、ヴァンさんは、子供が出来ないからいやだって言われたって言ったよ」
「ま、そんな話までしたの。あの頃は子供ってあまり可愛いとか感じた事なかったけどね。横に並んだらみっともないとか言えないじゃない。だから考えて、子供が欲しいから、って体裁よく断った訳よ。此処だけの話だからね。内緒よ」
「ふふん、分かった内緒だね」
「そう、ニキにも内緒よ。あいつ年取ったくせに、嫉妬深いのよ。不機嫌になったら、ご機嫌取りも疲れてくるのよね」
「あはは、面白いね。婆さん達って」
そこへ二キ爺さんが不機嫌そうに表れて、
「ご機嫌取りは断る。年甲斐もなくて悪かったな」
セーンは笑いたくなるのをこらえて、
「ヤーモにこの子渡してくる」
「そうだ。リューンがキャイちゃんって言っていたけど。まだ分かっていると思えないし、早く名前決めてやってね」
「リューンさんがそう言っていたのなら、それで決まりそうな気がするな」
セーンはそう言ったが、『ちょっと可愛すぎかな』と思う。
ジェイやシュー達が隣町の奴と派手な喧嘩をして、それから半月で、年末休暇に入った。そして、今日はハイスクールの出校日だ。ハイスクールは夏季休暇までが同学年で夏季休暇後は、一つ上の学年になるし、クラス替えも有る。それでも留学生はクラスは同じになる事が多い。学校内で問題があると留学生のクラス替えも有るが、今回は隣町の生徒との喧嘩だし、ずっと同じクラスで居られるのではないだろうか、とショウカとリリは予想していた。
そんな出校日の朝、クラスにはチーセンとラーセンしか来ておらず、ショウカは心配になった。
「オーカーさん来ないのかしら」
気になったが、チーセンやラーセンに尋ねるつもりはない。男の子どうしで固まって何か話しており、聞きに行っては目立ってしまう。からかわれたくはない。
そんな時、担任の先生が、オーカーさんを連れて来た。『どういう事?まさか転校とかしないよね』心配になるショウカだが、
「おはよう、一言話しておこうと思ってね。彼、ヤコは事情があってグルードさんち、ダブル、グルードんとこだが、そっちに養子に行ってね。ヤコ・グルードに名前が変わったからそのつもりでな。もうオーカ-さんと呼ばれても、返事しないんだよな、ヤコは。グルードが多くなったし。ヤコと呼ぼう。皆もそうしろ。グルードさんと呼んだら、三人返事するからな。ヤコは席に行け。授業しよう」
ヤコは、開いている席、リリとショウカにとっての右と左の斜め前に座る。座るとき、2人とちらっと眼が合う。何だか笑った?愛想がよくなった気がするリリ。ショウカを見て、
『今笑ってなかった』と口パクで話す。
『笑ったね』ショウカも言う。
そんな時、隣のクラスが騒がしいのに気が付く。笑い声がして来た。誰かが大きな声で、
「隣のクラスのオーカーさんとは親類・・・」
「隣にオーカーは居ないからな、言っておくけど」
やたら大きな声だが、転校生の様だ。名はオーカーらしい。
完
今日のエピソードでひとまず完結とさせていただきます。
私にとって今までで一番の長編作となりました。
最後まで読んでくださった読者の方々、ありがとうございます。読者の皆様が居てくださったので、最後まで書ききる事が出来ました。
何かストーリーを思いついた場合は、また投稿を始めます。では、またの機会に!




