第52話 ヤモとヤーモ、魔の国にさらわれる。ヤコは卵の守。レンはセピアに見舞いのミーラも攫われたので、セーンを追いかける。チーラと双子も一緒と分かり、ヤコも魔の国へ。リアンが手紙持って来る
セーン、いやな感覚を打ち消しながら、
「ヤコ、何があったって?」
「ヤーモちゃんが卵が孵りそうだって言い出して、ヤモちゃんが、出直すってオーカーさんに言って帰ろうとして、オーカーさんが僕に『帰りなさい』って言うから僕も、ついて行くつもりで居たら、ココモちゃんが送って行くと言い、お付きの人と皆で外に出て、ヤモちゃんがもう瞬間移動はしない方が良いって言うし、皆でニールに向かっていたら、魔の国の奴が急に現れて、ヤーモちゃんの卵を弾いて。酷いやあいつら、皆で落ちるのを追いかけて、僕が卵を捕まえて。振り返ったら、ヤーモちゃんとヤモちゃんが、俺が前にのした奴の親に捕まって消えたんだ。あっという間で、ココモちゃんや付き人も二人と少し離れていて、皆、卵を追いかけていたんだ。それで、遅れたヤーモちゃんとヤモちゃんを見る人がいなかった。ぼくが卵をもう少し前に捕まえていたら・・・」
「違う、お前は卵をちゃんと捕まえたんだ。良くやった。ココモ達はヤモ達を追いかけて行ったんだろう。俺も追いかけよう。ヤコは卵を見張って居ろ。誰にも捕られるな」
「分かった」
セーンは何時に無く嫌な気分になったので、鋭く言ってしまった気がして、ヤコにもう一度、優し目に『頼んだぞ』とコンタクトして、ココモたちの気配を追った。
ユーリーン婆が、レンに、
「あなたは行かないの」
と聞くと、レンは、
「俺が行っても足手まといだな」
「まあ、そうなの」
ユーリーン、何だかしみじみする。ニキ爺さんも、
「そう言うレベルなのか」
と呟いた。
ヤコはよく考えると、卵を捕まえる速度ではなく、そもそも、自分が下手に魔族に仕返ししようとして、逆に恨みを買ったせいだという結論に至った。反省しても手遅れで、涙があふれ出ていると、そんな時卵は孵った。
なぜか、ポンッと音までたて、ヤコの胸に飛びつく赤ちゃん。ヤコのなみだをぺろぺろ舐め、「チイッ」と驚くような大声で鳴いた。
レンが、
「おいおい、ヤコをママと間違えていないか」
「わあっ、困った。でも可愛いな」
「ホントねぇ。ずうっとヘキジョウさん達が側に居たけど。生まれたばかりの赤ちゃんを見たのは初めてね。でもこの子、ヴァンパイアのリアン君にそっくりね。ヤーモちゃんがそう言う顔にして産んだそうだけどね」
「そうだってね、ヤモママがそう言っていた。ヤーモちゃんが帰って来たら、早い所、交代してもらわないとね。僕はママじゃないからね。言っておくけど」
「チィッ」「チッ」「チィッ」「チッチィッ」良く鳴く赤ちゃん、
「少し五月蝿くないか」
レンが文句を言うが、ユーリーン婆、
「おだまり、全然うるさくないのよう。えーと名前、まだだったわね。ママが早く戻ってもらわないと困りまちゅねぇ」
「ユーリーン、ふざけてないで、赤ちゃんをつれて、寝かしに行かないか」
ニキ爺さんの提案だが、婆さん意見する。
「でも、何か食べさせなくていいの」
年寄りは思いつきそうもないので、レンが以前聞いた事を言う。
「俺が聞いたところによると、卵の黄身なんかをスプーンでやっていたようだが」
「そうそう、思い出したわ。セーンが言っていたわね。ヤモちゃんが世話したそうだったから任せたって。ココモちゃんが赤ちゃんの時だったわね」
「じゃ、今度は僕が食べさせてみるね」
ヤコちゃん名乗り出る。大人たちはしばし、ヤコちゃんの育児能力について考えるが、赤ちゃんの世話でもさせて、気を紛らわせても良いかなと思えるのだった。
しばらくの間は皆で赤ちゃんの世話をして、過ごすことができたのだが・・・
皆が戻ってこない。そしてレンが一言、
「セピアに見舞いに行っているミーラも、何時までセピアに居る気なんだろうな。チーラさんが双子を見張っているのは分かるが、ミーラはそうそう、べネルんちに居座るとも思えないんだが」
「お前、ミーラさんにコンタクトできないのか」
「今まで一緒にいる事が多かったから、必要が無かったな。コンタクトしてみようか・・・」
爺さん、婆さんは無言で促すが、
「通じないな、その代わりべネルに通じた・・・」
レンは皆を見回し、
「一昨日帰ったそうだよ」
ニキ爺さん、
「帰ったそうだよって?お前は今日こっちに来たな。家から来たんだろう」
「城でミーラの代行していたが、大体、戻って来たら直ぐ俺の居る所に来るさ」
「つまり、来ていないんでしょ。レンの言いたいことは」
ヤコちゃんも一言、言ってやる。
「ミーラさんも攫われていたとか?一昨日?」
レン、ため息をつき、
「俺も行ってくらぁ」
と言って消えた。ユーリーン婆、ニキ爺さんにキリッと振り向き、
「べネルさんに双子とチーラさんは、ちゃんと居るか聞いてちょうだい」
ニキ爺さん、聞いた後しょんぼりと、
「ミーラさんと一緒に船で帰ったそうだ。双子ももう学年末の休暇に入るからって、一緒に帰ったって言うんだよ」
ユーリーン婆さん、いきり立って、
「おのれ魔の国の奴らっ」
「ぼ、僕は・・・」
「あんたは子守よっ」
その後、ユーリーン婆は食堂のテーブルをぶちながら、『おのれ』、『おのれ』などと言い、突っ伏してしまった。赤ちゃんの前では荒れるような事は出来無いと、自重している分冷静と言える。
ヤコちゃん、おろおろして、食堂をのぞいてみたり、赤ちゃんの2度目の食事を作ったりしていた。ニキ爺さん、
「気にする事はないよ。ばあさんはあれでいつもの調子だからね。怒って無い時は可愛い婆さんなんだけどね」
ヤコはそんな風に爺さんが言っても、信じられない気分だ。
「僕も、行くべきじゃないかな」
一方、魔の国までヤモとヤーモちゃんを追って来た一行。魔の国に入ってから、行方を追う事は出来なかった。気配を探れないのだ。何か別の種類の力に邪魔されていると感じた。途方に暮れている一行に、後からレンが加わる、
事態を聞いたセーンは、
「チーラ達はどうなんだろう」
又、嫌な予感がする。
上空に浮かんで、一般の住民に見とがめられないようにして、気配を探すが誰の気配もしなくなっていた。
そこへふらふらと、憔悴したリアン坊ちゃんがやって来た。辺りを見まわし、上空のセーン達を見つけた。
「セーン様、大変なんです」
リアン坊ちゃんは、セーン達の所へ、手紙の様な物を持って来ていた。
〈グルード家の 大事らしき物は預かっている。返してほしければヤコと交換だ。一人で我らの城に来させろ〉
「ヤコさんって、誰ですかね。よろしく伝えてくださいよ」
坊ちゃんはセーンに頼むが、
レンは、
「奴らを今朝は散々に扱ったくせに、また手を組むことにするしか道は無いな。坊ちゃん、ママはどうしている。連れて来い」
「レン親父、あのヴァンパイアに協力してもらうの、頼んでも無理と違う?」
セーンは絶望的に言う。
「他に頼れる奴がいるか」
レンが言うが、セーン途方に暮れる。『誰とでも仲良くすべきだったって事だな』そう思っても後の祭りだ。
そこへヤコがやって来た。絶望が増すセーン。
「お守してろって言ったじゃないか、赤ちゃんは誰が見ているんだ」
「ユーリーンお婆ちゃんが見てるって、それに、リューンさんに来てくれって頼んだ。だって、大変なんだよ。チーラさんやチーセン、ラーセンとニーセン、ユーセンまでさらわれたんだ」




