第51話 ユーリーンが二人を合わせるように言う。ヤーモ卵産む。リアンにそっくり。レンが壁の上一家の正体を言う。ヤコはヤモの子で、ヤモ、ヤーモは卵を証拠に持ってオーカーさんの所へ
ここはニキ爺さんの館。セーン達家族だけで、招かれざる客と対峙しているのだが。段々親子及び孫の結束に、綻びが出て来たことが分かった。
セーンは感じていた、ユーリーン婆の気持ちが揺れ出したのだ。『そろそろ話しだすな』と思うセーン。
「それじゃあ、せっかくだから、ヤーモちゃんに会うだけ会って見るとか?セーン、ヤーモちゃんを連れて来てくれる。ヤモちゃんは止めといてね」
「婆さん、止めといてねで、俺に止められるか、あいつを。誰か血を見る奴が出てきたら、危険地帯になるぞ。ここいら」
無視されているのが一言、
「ちょっと、何言ってるか意味分からないんですけどー。あたしら、チー見ても、まての出来ない犬コロじゃないんですけどー」
ニキ爺さん、
「婆さんがいらん事言いだしたな。ヤーモちゃんに何か不味い事が起こったら、どうするんだ婆さん。どうやって責任取る気だ。お前、ヤモが暴れ出した所見た事ないだろ。今更だが、この家、鉄筋の入れ方が少なかったな」
「だいたい想像つくよ。『魔の空洞』が発動して吸い込んでる最中に、空洞の中に手突っ込んだままだったって。皆、言っていたもの。おかげでセーンは生きていたし、この恩は返せないくらい大きいのは分かっているの。でも、あたし、恋人の仲を裂く奴にはなりたくないのよ」
セーンは声を大にして、
「婆さん誤解している。恋人じゃないからっ。一方的なこいつの片思いだから」
ユーリーン婆のお尋ね、
「ところで、皆この子の事を、こいつとか坊ちゃんとか言っているけど、名前は無いの」
「おばあ様、僕、リアンと言います。どうぞよろしくお願いいたします」
リアン坊ちゃん、可愛く目をぱちぱちさせて自己紹介した。グルード家唯一の自分の味方と思える婆さんに、精一杯のお追従だ。
セーンはドアから出て、ヤーモちゃんを探しに行った。『もうどうなっても知らんからね』
ドアを開ければ中に誰が居るかは一目瞭然だ。ヤーモちゃんが来る前にヤモ登場となった。どういう状況なのか理解に苦しむジジババだ。ヤモ凄みの有る睨みでヴァンパイア一行を見ると。
「この家の敷居またぐなと言ったはずだが。おい、あばずれ」
「あら、久しぶりだけど、相変わらずね。あんたの子にうちの子が惚れるなんて、現実は小説よりも奇よねぇ。面白くなりそうだから、見物に来たのよ。分かるでしょ。この面白さが」
レン親父、あばずれヴァンパイアを睨み、
「そう言う事か」
と納得したご様子、セーンは今出てきたばかりの客間の様子が、さっぱり訳が分からない事になっているのだが。ふと頭をよぎる可能性。レンとあばずれヴァンパイアそしてヤモちゃんの三角関係!それを必死で打ち消すと、子供部屋に行ってみる。ヤーモちゃん、子守の真っ最中だが、セーンは言っておく、
「ヴァンパイアの勘違い野郎が来たけど。どうする」
と聞いてみると、ヤーモちゃん、こっそりクローゼットを開ける。『前にもあったな、こういう事』と思うセーン。
「卵産んだ」
「そのようだね」
「これ、よく見てみろ。ヴァンパイアそっくり」
言われてセーンは卵をじっと見る。ヤコちゃんの時と似たように殻の薄い卵で、中が少し透けて見える。じっと中身を目を凝らしてみると。まん丸い目のはっきりとした顔立ち、髪の毛は黒い(あばずれバンパイアの髪の色)リアン坊ちゃんはプラチナゴールドの髪で、顔立ちははっきりした感じだ。ちなみにヘキジョウさんの顔や髪の毛はグレーで誰でも統一している。
「なるほど、で、どうする気だ。これから」
「どうしよか」
「ヤーモちゃんのしたいようにしていいと思うよ」
「この子にヴァンパイアの気質があったら、ここには住めない」
「そだね」
「ここで育てられないなら、あっちに行くしかなさそうだな」
「そうか、あ、しまった。あいつらに俺ら、散々な扱いだったけど」
「ふふん、多分、気にしていないはず」
「へっ、そんな気質なの、あいつ等」
「何処に行っても、ああいう扱いだからね。気にして無さそうだな」
「ずいぶん、心の広い人たちだな。じゃ、行くのか、向こうで暮らすのか」
「そうするしかなさそうだな。卵、持って行って見せてみる」
「ヤモちゃんには見せたの」
「ヤモちゃんが引っ張って出した」
「へぇ、そうだったの。それでもヤモちゃん、あばずれヴァンパイアをぼろカスに言っていたけど良いのかな」
「ああいうやつらだからねぇ。仕方ないさ」
ヤーモちゃんは決心したようで、卵を大事そうに抱えて、客間にやって来た。
はじけるようにヤーモちゃんに駆け寄るリアン坊ちゃん、涙の再開だ。リアン君だけだが。
「ヤーモ様、こ、この卵は僕とヤーモ様の・・・」
「うん」
良い場面なのにレンが割って入る感じ。
「待て、お前ら。大概にしろ」
ニキ爺さん眉を顰める。『まったくの根性悪だな』
爺さんの見解にめげず、レンは指摘する。
「ようやく俺は、壁の上一家の正体が分かった。セーンも良く聞け。すでに兄貴のガキや、ジュールのガキが暴いていたんだが、俺はまともに聞いてはいなかったな。だがこれで身に染みた。壁の上一家は、自分の卵の遺伝子をカスタマイズするんだ。自分の都合の良い子にな。魔力が強くなければできないからな。本人達にも自覚のない技だ。おれもつくづく自分が利口じゃなかったと思う。三度も遭遇して、やっと分かった」
セーンは、
「レン親父は今までの事は、全部カスタマイズだったって言うのか」
「言うも何も、事実でしかないだろう。最初のあいつがそうだったんだ。だから俺が気付いてやらなかったのが悪いんだがな。問いただすのを、周りのみんなが遠慮しちまったのもあるが、仕方ないだろうな。俺が指摘すべきことだった。こいつら魔物はそうゆう者達だったんだ。自分の子を気に入った容姿に、もしくは自分が必要とする能力の子に産むことができる。魔力でな。そうやって生きながらえてきたはずだ。予感とかも有って、必要な能力の子を産んで手に入れると言うのが目的だったろう。あのヤコのようにな。適切な指示をすれば、ヤコはもっと使える奴だろうさ。生憎いつも肝心な時に一人にさせていた。あの暴走は大人の所為だ。あの子に罪はない。ヤモ、オーカーさんに言って取り戻して来い」
「そうだな、わかった」
そんな話の流れに、空気の読めない、とういうか自分らの事しか頭にないリアン坊ちゃん。レンに聞く。セーンはその勇気に感心する。
「レン様、そういうお話ですと。じゃあ、じゃあ、ヤーモ様は僕の事を、愛して…いえ、えー、ずうっとお心にとめてくださっていたとか?」
「聞いていたんだろうが、そう言うことだ」
「う、うっ。ヤーモ様、お願いです。お側に居させてください。ヤーモ様の暮らしたいところに、お側に僕を置いてほしいですっ」
ヤーモ、冷静に言う。
「でも、ヴァンパイアはここに置けないと思うな」
ユーリーン婆は横からアドバイスする。
「でも、お顔を似せて生んだだけじゃないの。きっとヴァンパイアじゃないわね、その子」
ヤモちゃんも、
「ユーリーンさんもそう思いますか。ヤーモにはここでヘキジョウさんっ子の子守してもらわないと・・・」
ヤーモちゃん、
「ヤモは自分の都合ばっか」
「その坊ちゃんには、そこいらの豚かヤギの血でも飲ませて、置いてやったらいいだろ。嫌なら自分で帰るさ。俺は今からオーカーさんに言って、ヤコを取り戻してくる」
「ヤコ、言う事聞くか?今さら」
「オーカーさんだって他人を住まわせやしないだろう。ヤーモも卵持って来るか。そいつを見せて、説明しよう」
「この卵で俺らの能力、証明出来るね。ひょっとしたら、そこのヴァンパイアの婆さんも、こんなふうに生んだんじゃないか」
婆さんと言われて目をむく奥方様。
「はあっ、この私の美貌で、婆さんだってぇ・・・あ、そうかしら、リアンはあたしがカスタマイズしたって事。そう言えばレンに似て無いのが気になったのよね。帰るわよ、リアン。豚かヤギの血なんてお口に合わないでしょ」
「僕は口にあわせるつもりだよ。でも一旦家に戻って練習しよう」
奥方様、息子やお使いに来ていた老ヴァンパイアと帰って行った。
セーンは何とか収まってほっとした。客間のソファに寛いで、残るジジババ及び親父の誰ともなしに思った事を言う。
「ホント、俺もあの話聞いていたのにな。思いつかなかった。レン似のヘキジョウさんも、コモドラ襲撃の時に死んじまったし、不遇のあのヘキジョウさん、どんな気持ちでレンの所を去ったのかな」
「セーン。近頃、根性悪になったな。相手の弱点らしいところ、容赦なく突きまくる」
「えー、親父に弱点なんかあるものか。かかか」
セーンは適当な返し文句を言っていたが、急に、いやな気分になって来た。
「不味いな」
セーンが思わず口にした時、ヤコちゃんが卵を抱え、血相を変えて戻って来た。
「ヤモちゃんとヤーモちゃん。魔の国の俺がのした奴にさらわれたよっ」
皆驚いて立ち上がった。
「何だってヤコ」




