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第4話

 

 セーンとヤモちゃんは少し戻るのが遅くなってしまったと、焦りながら地下のレンの家に戻った。

 そこでは予想どおり、ヘキジョウさん達と魔物の使えそうな強さのが戦っていたのだが、すでに勝負はつきそうな感じにまでなっていた。選りすぐりのヘキジョウさん達は強かった。腕力と魔力があるらしく、魔王の手下よりも魔力があるようで、セーンとしては驚きである。

 それにしても、シューとジェイはどこへ行ってしまったのか。

「おーい、何処に隠れているんだ」

 セーンは彼らの気配が無いのだが、きっと気配を消す能力が有ると思った。

 すると、ソファの下のわずかな隙間から、ごそごそとはって出てきた二人。

「お前ら随分狭いところに居たんだな。これじゃあ、襲ってきた奴らも気が付かないな」

「何だか、ヤモさんが意味深なこと言うから、危険が迫って居そうだからね。直ぐどこに隠れるべきか考えて、奴らが来る前から隠れていた」

 ジェイは言いながら、ストレッチし出した。骨がボキボキ鳴っている。シューもボキボキ言わせながら、

「俺って、セピアの親父とテレパシーで話せるんだけど、急に居なくなって心配していたらしいけど、セーンとこに居るって言ったら、それなら安心だってさ。セーンって親類の間では超能力者で有名なんだってね。セーンのお兄さんたちが何かの用で親父んちに最近やって来ていて、話聞いたって。癒し12と、その他計測不可能だったって?」

 セーンはあきれて思った。『兄貴はなんか誤解しているな、誰から聞いた情報かな、おそらく親父似のヘキジョウさんだろな』

「あのな、計測不可能じゃなくて、計測する前に事態が不味くなりそうで、計測しないで帰ったの」

「ふうん。とにかく強い奴と一緒に居た方が良いから、連れて帰らないって、セピアに居たらまた攫われそうだって話だった」

「そうか、ま、そうなるだろな。ここは引き払って、ニキ爺さん達と合流する。みんなで一緒に居ないと、ヘキジョウさん達も守る奴が分散していたんじゃ、都合が悪いだろうって事になったからね」

 すると今度はジェイが、

「その話、今セーンが考えたろ。本当はユーリーンお婆ちゃんが連れて来いって言ったんだよね。きっとクーラさんがどう思うか、セーン達は心配なんだ」

「いやいや、別に心配はしていないって。クーラ叔母さんは良い人だよ」

 セーンは誤解のないようにきっぱり言ったが、シューとジェイはこそこそ何か話している感じだ。何の話かなとセーンが思うと、

『ニキさんにユーリーンさんは言ってなかった・・・の件、話している』

 セーンが疑問に思う点はすべてヤモちゃんが察してくれる。


 ユーリーン婆の本人にとって、なんだか気がかりらしい件は、ヤモちゃんが教えてくれた。『大した事ない。ニキさんは泣いてるけど』

「げっ、爺さんになっても泣くんだ」

『ユーリーンさんに甘えている』

「ふーむ、いー夫婦と世間でよく言うやつだな」

『そ』

 ヤーモちゃんもいつの間にか一方のポケットに入っていて、相槌を打った。

「えーと、今から引っ越しだけど、皆は忘れ物は無しだよな。壁の上一家は荷物無いし。俺は誰かが俺の私物を運んでくれていたみたいで、結構あるんだ。シューとジェイを運んだら、後で取りに戻るか」

 そんな感じで瞬間移動しようとすると、例のベッド使用者の親子が出て来て、

『わたくしめ、はこばせていただきーましたので、いまからもーはこばせてっ・・・』

「あー、わかった。ありがとう」

 という事で、一度で移動できた。


 ジジババが、お揃いで待っていたイーバン公爵邸のリビングルームは、年代物の趣味の良い高級家具が揃っていた。初めて入った館の中は崩れた城の中の記憶にあった内装より感じが良い。

「お待たせ、久しぶりの御対面のシューと、ニキ爺さんは初対面のジェイでーす。それにしても、御立派な内装だね、此処は。考えたら次の王はリーで良いんじゃないかな」

「セーン、儂はもう年だから一度に色々言わないでくれないか。順番に対処したいんだ」

「分かった。孫との対面からどーぞ」


 ニキ爺さんはすこし赤い眼をしょぼしょぼさせながら、

「お前がジェイか。前に家に来た時に、儂が会わなかったのは、会いたくなかった訳じゃないんだ。魔物と久しぶりに戦ったら、疲れていてね」

「分かってる。気にしないでね」

「ジェイに気にしないでと言われちゃ、気にする訳にもいかないな。で、リーに攫われてこっちに来たんだと?奴はいかれているな。王はいかれた奴には務まらんし。儂ら一族は柄じゃないしな。・・・そもそも、王は必要なのか」

 セーンは吹き出しそうになった。

「爺さん、俺と同意見なんだ」

「いや、まだ意見は言っていない。疑問点を話している所だ。リーは城で忙しいのかな」

 ユーリーンは、

「崩れた城に、用事が残っているとも思えないけど。どうしてジェイに王の座を押し付けたいのか詰め寄られそうで、こっちに寄り付けないのよ。たぶんね」

 そこへ、レンがジュールと共にリビングに入って来た。

「婆さん、随分と的を得た意見を言うね。うちは婆さんでもっている気がするな」

 爺さんは、少し不貞腐れた風を装って言った。

「お前も、的を得た意見が言えるじゃないか」

 2人の相手をせずに、ユーリーン婆はジュールの様子を見て、

「あら、ジュール。あんた、ジェイに会うの初めてっぽい様子じゃない。変ね、どう言う了見なのかしら」

 セーンは、婆さんの圧っていうものを初めて知った。ぽっけの中でヤーモちゃんも『こわ』と、感想を言う。

「ルルから以前、家に来ないでくれと言われていた。ルルが亡くなって、今更、会いに行ってもと思って。残った親類たちが親父の所にジェイを連れて行って、親父が引き取ったし。俺は引き取らなかったから、ずっとジェイを捨てたようなものだと思っていたから」

「ふうん、で、どうせだから、今後も捨てたままにしておこうって思ったわけね。でも、考えてみてよ。べネル達が育てているのに、挨拶無しってのはいくらあんたが捨てたつもりでも、あっちはそうは解釈しないんじゃない。端的に見て、薄情ものってとこかしら。内心、人間、ああはなりたくないものだって思っていたんじゃないかしらねぇ。薄情って点では、あんたと気の合うレンも似たり寄ったりね。気が合うはずよね、ろくでなし。小さな小鳥さんだってかいがいしくヒナに餌を運ぶのよ。親鳥はオスもメスもないのよ」

 レンは、

「ごもっともな意見。おっしゃる通りで・・・」

 ときっぱり言った。ジュールは少しぼんやりしたように、

「無責任な薄情者、それが俺なんですよ。何の気概もないです。今後もそんな感じですから。そう認識しておいてください」

「まぁ、あんたも気鬱なの。仕方ないわね、クーラもだし。気鬱傾向だから気が合うのね。リーの畑でも耕してみたらどう。ずっと魔王のとこに捕まっていたし、仕方ないのかも。太陽は人間が生きていくのにも必要なのね。」

 ユーリーンは気を取り直したように、

「ジェイ、あんたの実のパパはこんなだから仕方ないし、これからは自分の力で生きていくしかないね」

「うん、知っている。でも一応、セーンの能力は当てにしているから」

「それね、その件は誰でもよ。本人見た目はテレっとした感じだけど、そう言うのがピンチでは結構たよりになるんだからねぇ。それにヤモ一家が強いのよう。知ってるでしょ。セーンを何故か助けたがるのよ。おかげで、あたしらも大助かりなの。ところでセーン休憩が終わったら、リーをこっちに連れて来てもらえないかしら。リーに『王様任命ごっこは、ご自分がなれば』って婆は言いたいの」

「うん、直ぐ連れてくるからね。俺の意見としては、そもそも王は要らねーだろってとこ」

 ユーリーンは、

「うーん、その件、前に死んだパパが、あ、あんたのひい爺さんだけど、何だか重要な事言っていた気がするの。話は忘れたけど。それもリーに聞いてみないとね」

 そういう話の流れになり、セーンはリーを城跡から捕獲してくることになった。



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