第44『魔の空洞』が復活し、セーンの歌で魔力を消す。セピア調査隊とメディアの船が来て、皆逃げる。ココモ、セーンを連れて初飛行話
コモドラの惨状の片づけは有るのだが、皆でココモちゃんドラゴンのお姿を見て、盛り上がった。土ドラゴンとココモドラゴンの良い所取り、大きさは土ドラゴン並、体の色は真っ黒と言うよりは今はやりの色かもしれないチャコールグレー、目と嘴はビビッドレッド。
誰が言ったのか、
「いよっ、色男」
と掛け声をあげられ、ココモちゃんはなんだかポーズを決めているかのような立ち姿。
セーンは一寸呆れたが、『ま、今まで散々栄養失調と陰口を言われていたろうから、良いかな』と思って見ていた。
そんな和やかな休憩時間は、急に終わる事となる。
『魔の空洞』入り口に塞がる感じで捨て置かれていた魔法使いの死体は、急にスポッと中に吸い込まれた。それと同時に、どうやら、『魔の空洞』復活で、きゅいーんとばかりに、小さな口で吸い込みを開始し出した。一番近くに居た土ドラゴン形で伸びていた者から吸い込まれそうになる。幸い入り口は人の大きさぐらいの為、入り口に引っ付いてしまった状態だ。
周りの人型さん、無謀にも思わず引っ張って助けようとすると、上官っぽい人が、
「バカもん、退けたらおまえらサイズの入り口なんだぞ。また入りたいのか」
と止めさせた。
セーンは直ぐに『魔の空洞』入り口に行くと、自分の失態っぽさを感じた。『紐、無効化しちまってた』
こうなったら、発動中の『魔の空洞』自体を無効化するしかない。入り口付近を掴んで、例の歌を歌う。歌うが、まったく吸引の力は衰えていない気がする。
ヤモちゃんが、側に来て、
「この前はもっと長く歌っていたじゃないか、どうした」
と指摘する。セーン、言い訳するがそれどころじゃないのは分かっている。
「あれは、2番で俺のウソの作詞の歌」
「お前の作ったのも歌えや」
ヤモちゃんに言われ、大勢さんの観客には後で、2番歌詞、セーン作です。と言うべきだろう。しかし、聞けばわかる、あほらしい内容だ。
「やっとお会いできましたね。魔の空洞様。僕の愛を受け取ってください。これがぁー僕のー気持ちー、愛―あいーあいー、あげますー、あいをー」
「これが僕の愛ですー。あいーあいーあいーですー。もっとあいー、きっとあいー、あいがすべてー、あいーあいー、あげますーあいー、うけとってねー、ぼくのあいーあい、きっとあいーうけーとってーくれてーありがとー、ぼくのあいをーあげーまーしたーよーあーいー・・・。あれっ終わったかな」
いきなり前兆もなく、プスと言う感じで吸引しなくなった。
セーン、決まりが悪くて、思わず辺りを見回すが、皆はセーンの予想とは違う様子だった。
まだ、ドラゴン姿のままだったココモちゃんが、代表で感想を言ってくれた。
「すご」
「えへ、それほどでも、なんか、吸引終わったね。意外とあっさりしてやがったな。生きものじゃないから。声枯れなかったし。えーご清聴ありがとう。作詞?ってもんじゃないな。替え歌かなセーン作でした」
と言って後ずさると、土ドラゴンの兵隊さんの一人が、
「歌手はセーン・グルードさんでした」
と言うと、拍手が沸き起こった。おかげでセーンステージの歌手の様にお辞儀して、後ずさる事にした。
後を、ヤモちゃんが『魔の洞窟』をチェックしている。取説思い出したらしい。見る見るうちに巾着袋のような大きさになった。それを魔力で燃やしてまった。
それを見ていた人型の兵隊さん、
「凄いね、こっちも。ヤモさんだよね。ココモさん産んだ魔物さんのー」
するとヤモちゃん、気の毒にも兵隊さんは悪気はないのに、言った兵隊さんの首根っこを掴んで、
「どうして知っていやがる」
と言うので、セーン、慌てて止めて、
「前に、自己紹介自分でしていたろ。すみませんね、兵隊さん。ドラゴンさんは集団テレパシーみたいな能力が有るよきっと。重要事項は共通認識。ですよね」
上官らしい人に聞くと、
「そうですね、私らはふつうにその能力使いますが、他の種類の方の中には、ご存じない方もいますね」
ヤモちゃん白けて、
「そーですかー」
と言って、セーンのポケットに入った。ヤモちゃんとしては少し気まりが悪かったからだろうけど。これにもドラゴンさん達は、驚いていた。
そんな時、兵隊さんの一人が、(おそらく見張り役)
「セピア公国、調査隊到着」
と叫ぶ。上官は、大声は避けた。ほぼ皆に聞こえる音量で、
「うーむ。撤収だ。各自、ドラゴン形状で撤退。各自本部報告後、解散。集合状態は禁止。分散解散」
小声で言い募る上官。理解してないと思ったか。
「この状況、誤解される可能性有り。急遽撤退。解散だ。調査隊の捜査網に引っかかるんじゃないぞ。各自、急遽撤退、撤退後本部報告。解散だ。固まらずに分散しろ。向こうは生存者の捜索を始めるはず。引っかかったら自己判断で言い訳しろ。以上だ」
なるほどと思い、セーンも瞬間移動したいが、疲労で出来ない。言い訳はうまく話せそうもなく、パニックになりそうな感じ。きっとテレビカメラ、持ってきているはずだ。今、気を失う訳にはいかない。ポケットにちゃっかりさっさと入っている二人は、まったく当てにできなくなった。
そこへ、まだ、ドラゴン形のココモちゃんが側に来た。
「僕に乗る?初めて遠くまで飛ぶけど、オーカーさんちにおいでよ」
「行きたいけど、初めて飛ぶってのが引っかかってね」
「揺らすかもしれないし、足でつかんどこうかな」
「その心配じゃないけど・・・時間無いし、お願いしようココモちゃん。頼りにしてるからね」
念を押した。セーンの心配はココモちゃんが途中で疲れて、人型になった場合だが、黙っておいた。信頼していると思わせておく方が良い。
土ドラゴンの兵隊さん達は皆次々に、調査隊の船とは違う方向に、バラバラに飛んで逃げた。セーンはこれが撤収と言うものかと思った。
ココモちゃんの足に掴まり(ココモちゃんの足で掴んでもらうのは遠慮した)『良いよ』と言うと、ココモちゃんは飛んだ。ココモちゃん、嬉しそうだ。良かったとは思うセーン。
皆の様子を観察するよりも、ココモちゃんの初飛行に付き合う気分を隠す方が忙しくて、黙ってしまった感じだったらしい。
「セーン。僕、頑張っているからね」
「そうだね、頑張っているから安心だよう」
「セーン、落とさないから心配しないでね」
「し、心配なんかしてないよっ」
「嘘だね」
ちょっと気まずくなりそうな時、
「坊ちゃん、逃げ足早いですね。初飛行にしてはよく頑張っていますね」
側仕えさんがやって来て、褒めるので、気分が上がって来たようなココモちゃん。セーンも気分が上がって来た。
側仕えさんの方を見ると、後ろには兵隊さんの土ドラゴンさんが、付いて来ていた。
セーンはどういう事かなと思い、
「後ろのドラゴンさんは?」
と思った事が口に出るセーンだ。
「弟です。弟もオーカーさんに雇ってもらおうと思って、連れて来ています」
と答えている側仕えさんに、ココモちゃん、
「あ、見つかったんだ。良かった。これで交代要員が出来たね」
セーン、側仕えの勤務は、ココモちゃん相手では一人だけじゃやって居られないのだと察した。




