第43話 『魔の空洞』が前回と違う所。セーン口の紐を魔力を消して開ける。ココモも来て、魔法使いを探し、ドラゴンに変わる事が出来た。魔法使いをやっつける
このエピソードには残酷な内容が含まれています。苦手な方は、ご注意ください。
夜明け前、コモドラ国に到着した三人。辺りはニールのありさまと似たり寄ったりだ。同じとどうして言わないかと言うと、辺りは建物や、動植物が『魔の空洞』に引き込まれたようなのは同じだが。違っているところが一つあった。それは辺りにコモドラの死体が散乱していたのだ。
先ほどヤモちゃんがバージョンアップと言っただけあって、敵から先に吸い込むつもりで改良したようなのだが。
おそらくこの状況はセーンの推理では、魔法使いは『コモドラを吸い込まない』と言う仕様にしたと思う。それを自称王に示して、自称王、大いに満足したはずだ。魔法使いはもしや『魔の空洞』の本質は知っていたのだろうか。
この有様を見ると、確かにコモドラは『魔の空洞』には吸い込まれなかったですよ。体はね。しかしこの『魔の空洞』の基本的仕様は、魔力を吸い込むと言う事で、魔法使いさん他所の『魔の空洞』の取説など読んでいないのか。コモドラの魔力は吸い込まないと言う但し書き書こうと言う思い付きは無かったようだ。それとも不可能だったのか。
おかげで、コモドラ達の魔力は吸い込まれた。結果はこれだ。コモドラ一人ひとり魔力の量は個人差があるだろうが、魔力をすっかり吸われれば、命はない。以前ユーリーン婆さんがセーンに話してくれた、北ニールの先代お館様の最後。木の根の残党達の仕業で(これ、地下、魔王の指図によるもの)、その力を全て吸い取られて、亡くなってしまった。
それと同じような結果なのだろう。土ドラゴンは何処にも姿が無いので、あっさり吸い込まれたようだ。コモドラ達は、ほぼ取説の仕様通り吸い込まれてはいない。しかし、吸い込み口付近に転がっている死体は、頭が無かったり、首が伸び切って居たり。魔力を吸い込む勢いの所為だろうか。
セーンは奇妙なコモドラの死体を横目に、ヤモちゃん、ヤーモちゃんと一緒に、急いで口を開けて中から出す作業に入った。巾着袋風の『魔の空洞』を塞ぐ魔力の編み込んである紐を何とか解きたい。解除呪文は作った魔法使いしか知らないだろうし。
ヤモちゃんは前に見た事のある例の『魔の空洞』の取説の開き方の呪文を言ってみるが、予想通り効き目はない。セーンは魔法使いらしき奴はいないか、気配を探すが。辺りに生命反応はない。
ヤーモちゃん、
「魔法使いはどうせ、首なし死体と違うか。セーン。探しても居ないってば」
味方は、熱心に吸い込む仕様ではなかったらしい。しかしあっさり吸い込まれた土ドラゴンが中でまだ生きていれば、コモドラの惨状の方が酷いと思う。
セーン、こうなったら塞いである紐の魔力を、無効にしなければならない。いつもの歌の発表会だ。初めて聞いたヤーモちゃん。
「噂通りだけど、上手すぎると、周りがこんなだから不気味」
「ふんっ」
すぐに紐の魔力は無くなって、セーン愚痴りながら、紐をほどく作業に戻る。
「ったく、いらん改良して、このざまだ。元凶の魔法使い、首だけ中に居るかもな」
ぶつぶつ、こぼしていると、『魔の空洞』の中から、『おーい、味方の助けかー』と声がして、セーン達が急いで口を開けて駆けつけると、土ドラゴン姿や、人型やら、思い思いの格好で力なく横たわる兵士たちが居た。しっかりしろと、急いで空洞から出していく。入って来る瓦礫を避けながら、みんな必死で生き抜いただろう。セーン達はコモドラの首を退けながらの救助、酷く堪えた。
疲弊は心理的なものと思うセーンだが、とある土ドラゴンの兵士が、
「あんたら、やたら魔力があるから、苦しいんじゃないか。もう口が開いているし、動ける奴は自力で出て来ている。見てみろ。だろ、無理しない方が良い。空洞の口の近くは避けて休憩しろよ。顔色良くないぞ。これじゃ土ドラゴンかと間違えそうだぞ」
ずいぶん気の利く兵隊さんだ。
「そうだな、土ドラゴンみたいになってら」
ヤーモちゃん軽く答え、ヤモちゃんに、
「俺もうギブアップ」
と言って空洞を避けてふらふら逃げて横になった。
セーンも、
「ヤモ、少し休憩しよう。持たないぞ」
と言って、ふらふらヤーモちゃんの側へ行こうとすると、
「あ、ヤモさん。お世話になりましてー」
聞き覚えのある声、側仕えさんだ。
「ったく、情けないこって。ソーチの効き目とか全くなかったです」
と愚痴る声がする。セーン、力なくヤーモちゃんの横に寝転がり、
「そーだと思ったんだ。俺の声、機械でマネは出来んだろー」
「珍しいな。分かっていて、とっとと帰って来たんだろ」
ヤーモちゃんのきつい一言。
「うん、あの時、どうしてかな、そーしたな」
ヤーモちゃんは、
「ヤモが帰るって言ったんだろ」
「うん」
「俺らはコモドラ経由の壁の上一家だな。多分、ヤモは本能的に土ドラ集団を拒否したな。だからとっとと帰りたがった」
「ふうん」
「ココモちゃん卵時代のヤモの入れ込み方。不自然だったんじゃないか」
「うん、随分、力入った世話だった気がする」
「ヤモ生まれてすぐは、コモドラによく似ていたって話だ。ヘキジョウの兄貴が言っていた。育つうちに、だんだんヘキジョウっぽくなったけどって」
「ふうんヤモちゃんは、コモドラのDNAが強く出たんだな。お前ら、不思議な奴らだね」
そこへ、ぬっと立っているヤモちゃんに気付いたセーン、
「あ、ヤモちゃんお疲れ、よく頑張るね」
「おまえら、俺のうわさ話していたな」
「おれらがー、」
「主にヤーモだがな」
「それがどーしたヤモ、いけなかったって?」
ヤーモちゃん、開き直る展開。なんだか大人になると態度でかくなってきた気がする。
何だかしみじみするセーン。しかし、ヤモとヤーモは臨戦状態。
「生意気になったな」
ヤモ、どすがきいてくる。
「ヤモちゃん、疲れて無いの?休憩だよ、休憩」
セーンは一応とりなす。疲弊してはいたが、一応主人だし。
「喧嘩はやめてね。そう言う時間じゃないでしょ、今は。俺ら救援部隊でしょ。喧嘩は明日にしようね」
「ふん、明日な。覚えとけよヤーモ」
「どうかな、俺、忘れっぽいし」
不機嫌そうに、反対側のセーンの横に座るヤモちゃんだが、
そんな時、ココモちゃんが土ドラゴンのかなりでかい奴に乗ってやって来た。遅いお出ましだが、おそらく朝ごはんをしっかり食ったと思うセーン達だ。
「わあ、すごい事になっているな。マッドもう少し下にしてよ。高くて足くじくかも」
大きなドラゴンさんは、ココモちゃんの言いなりで、体を低くして降りやすくしている。セーン思わず、
「随分至れり尽くせりだな。ココモちゃん、そのドラゴンさんは誰」
「このドラゴンさんは僕の用心棒兼、側仕えのマッドて言うんだ。よろしくね、じゃ、マッドは今から自由時間だよ。帰りの時間まで。弟さん見つかるといいね」
「はい、では失礼します」
そう言って人型になったマッドさんだが、三人は彼をじっと見て、似たような顔を見たと思った。弟さんには直ぐ会えると思う。
「セーン達、随分顔色悪いみたいだよ。何かあったの」
久しぶりのココモちゃんだが、ずいぶん気がきく言い様だ。大人になったなとセーンはつくづく思った。
「大丈夫だよ、『魔の空洞』の中に入って生きているドラゴンの救助をしていたら、魔力にまだ作用するみたいで皆具合が悪くなってきて、今は休憩中なんだ」
「そうだったの、頑張ったんだね。ところで悪い魔法使いって言うのを見かけたかな?それとも死んでいたとか?」
「いや、見つかっていないよ」
「じゃあ、用心しないと・・・」
ココモちゃんは辺りを見回しながら、首を傾げた。
「気配がしないな。逃げたかな」
セーンはおやっと思い、
「ココモちゃんはそいつに会った事あるのか」
「僕を無理やり人型にした奴だったみたいなんだ。会った事あるはず。でも・・あれっ、いた。逃げだしてら。きっと気配消していたんだな」
どうやら、ココモちゃんは見つけたようだ。その時ココモちゃんの形相が変化し出した。側て見ていて驚く三人だ。
「ギャオウ」
ココモちゃん、何と大人のドラゴンになった。横で感動する三人。
「ココモちゃん、やった・・・」
「ココモ、凄い」
「ココモはもう俺は要らないかも知れないな」
三人の感嘆をしり目に、ココモは翼を大きくはばたき、魔法使いを追いかけて行ったようだ。
セーンは立ち上がり行方を追ってみた。派手にはばたいたが、直ぐ近くに居たようで、ココモちゃんドラゴンは魔法使いを足でつかんだようである。そして、『魔の空洞』に、入れるつもりなのだろうか運んで来て、入り口近くに降りた。しかし、入り口近くに来たココモちゃんは大丈夫なのだろうか。兵隊さんたちは皆、中から逃げ出せたらしく、今は既に口が閉じている『魔の空洞』だが、ココモちゃんドラゴンは片足で空洞の口を押さえ、嘴で巾着のひもを緩めた。セーンは思わず、
「こりゃ見ものだぞ、お前ら寝てないで見てみろよ」
と教えてやった。ヤモとヤーモ慌てて見始める。
ココモちゃんドラゴンは、嘴で巾着のひもを何とか人ひとり入るぐらい開けると、片足でつかんでいた魔法使いらしい奴を中に押し入れている。少しココモちゃんドラゴンが中に引っ張られてはいないだろうか。しかし入り口は人が入るほどしか開いてはおらず、魔法使いは入りにくそうだが何とか力で入れているようだ。その時なぜかココモちゃんドラゴン悲鳴をあげながら、魔法使いを離した。セーン達はもしやと思って眺めると、やはり首だけ入ったようだ。入口に魔法使いを突っ込んだまま、ココモちゃんドラゴンは、慌ててこっちへ戻って来るが、格好は迫力満点の大きなドラゴンだ。一応はばたく所為で、辺りの首なし死体は風でうろつき、ココモちゃんは自分でしでかしたはずだが、それを見てパニックになりながら、それでもセーン達の所へやって来て、大声で(声も体に合わせてでかくなっている)、
「首がもげたっ」と報告だ。
セーンは、
「うん、その魔法使いが味方は『魔の空洞』に入らない仕様にしたつもりだったみたいだけどね。魔力を吸い込むのが、『魔の空洞』の本質なんだよ。魔力を持った奴が、魔力を失ったら死んじまう。ほら、コモドラの死体だらけだろ。魔法使いが作成した『魔の空洞』、失敗作だったな。そう言う事で、魔法使いをやっつけたねココモちゃん。それから、ドラゴンになれておめでとう」
するとココモちゃん、俯いて自分を見てやっと今、気づいたようだ。また大声で、
「やったー」と叫んだ。
ものすごい音量だが、鼓膜が破れるほどではなかった。めでたい事である。




