第42話 魔の洞空洞が作動したことをセピアニュースで知り、ヤモとヤーモを連れてコモドラへ行くセーン。セーンが名付けた『ヤッヤモ』子守を一人でできる
テレビのニュースを見終わったべネル家滞在の面々、それぞれ思う所はあるようで、ジェイは、黙って不自然に野菜を咀嚼するヤコを見ながら、自分の役を思いつく。
「じゃ、君たちは肉は十分食べ終わったようだし。車で送ろう。なんだか不穏な状況になりそうだからね。もう家に帰った方が良いよ。シュー車貸すだろ」
するとシュー、
「いやいや、ジェイに任す訳にはいかないね。俺も行くよ」
「ま、上級生に送ってもらうなんて、超ラッキー」
「じゃ、おねがいしますぅ。どうもごちそうさまでした」
ルーナ伯母さん、
「まぁ、お行儀が良い事。じゃ、気を付けて送ってよ、あなた達」
「任せとけ、俺らピンチはいくらでも潜り抜けて来たんだ。これでもね」
ショウカとリリは上級生二人の言い様に首を傾げたが、
「気にしない気にしない」
と言われて、帰って行った。
そんなシューとジェイを見て、チーセンとラーセンは、伯父さんたちに、
「シューとジェイは何かあったの」
気になるので聞くが、べネルさんは
「いや、大したことじゃない」
ときっぱり言った。ヤコちゃんは、何とか口いっぱいの野菜を飲み込むと、
「僕、セーンがまた出かけて行ったから、ついて行ってみる。土ドラゴンさんの軍隊に世話になったし」
と言って立ち上がるが、べネル伯父さんと、ルーナ伯母さんは、両方からヤコちゃんを掴み、
「もう。大人に任せなさい」
「行っても、ヤコちゃんがどうこうする場面は、終わっていると思うの。話に聞くと、ああいう大きな揺れは最後の現象だってよ」
「そうなの」
「ヤコちゃん、俺らはこうなったら留守番で居るしかなさそうだな。さっきパパが道々、俺らに動くなって言ったし」
「ママは僕に何も言わなかったな・・・」
ヤコが呟くと、チーセンが気の利いた事を言った。
「きっと体力を温存しているんだ。ドラゴンは強いからね」
セーン達の住む北のはずれの館は、たとえコモドラ国がどうこうなっても遠方で何も分からないのだが、セピア公国のニュースは流れて来る。それでどうやら『魔の空洞』の現象を止められなかったのが分かった。
セーン、
「それにしても、時間が経過しすぎている気がするな。どういう事だろう」
ヤモちゃんは、
「行ってみないと分からないが、お前は明日結婚式だしな」
と遠慮がちに呟くと、側に居たチーラは、
「セーン。行かなければならないのだったら。行ってちょうだい。あたし達はついでなんだもの」
セーンはチーラがそう言いだすのは分かっていたが、残念に思っているはずで、
「行っても良いの」
と一応聞いてみる。
「ええ、気持ちだけは十分頂いたもの」
どこからかため息が聞こえた。聞き覚えのあるため息。いつもの事だが、すでにヤーモちゃんもポケットに居るようだ。
「ヤーモは子守という大事な任務があるだろ」
セーンが少し困って言うと、
「大きな子が十分できるようになった。お前が名付けた『ヤッヤモ』とかが」
「あ、あいつ本気だったんだ。適当に名付けたけど。皆に言いふらしているな」
チーラも、
「本気じゃなかったの。もう軽はずみはやめてね。壁の上一家を本気で立て直していただかないと。皆も名付けてはどうなの。幼くてもヤル気なのよ。可愛くていじらしいの」
セーン、ふと思った。
「俺もう行かないと、何だったら、チーラが名付けても良いんじゃないか。ミーラだって獣人国の女王になるんだろ。新しいヘキジョウの主人はチーラでお願いしたいな」
「何ですって、縁起でもない」
「でも、今暇そうじゃないか」
「まっ、セーンの無事を祈るのに、忙しいのよっ」
「あは、そう、ムキにならなくったって、無事に戻るよ」
「それなら、セーンが帰ってから名付けて」
「あ、そうだ、候補考えていてよ。それならいいだろ」
「・・・違う気がする」
セーンもう相手はせず、
「言って来るから」
とサッサと出かけた。
ニール国は夜中だが、コモドラは直に夜が明けるだろう。何があったのかおそらく分かるし、まだ日は一日しか過ぎていない。中にどいつが入っているか知らないが、生きて居る可能性が大きい、味方は当然だが、敵でも助ける事が出来ればそうすべきだろう。
体力はある程度保ちたいので、瞬間移動は少しずつにした。セピアの近くに来た時、チーセンとラーセンの様子を探って動くなと言っておく。ヤモちゃんは無言なので、どうしたと聞くと、『あいつは、言う事を聞かないから黙っておく。来るなと言ったら、付いて来る』『それ、言えてるな』
セーンとヤーモちゃん、激しく同意である。




