第36話 オーカー大金べネル家に置いて帰る。ヤコの成績優秀な訳
オーカーさんのべネルさん宅訪問のひと時は、さらに続く。
そこで、オーカーさんは驚きの言動をした。
「では、ヤコちゃんの当分の滞在費ですが、これで・・・」
セーン、ここは言わなくてはと、
「オーカーさん、実はヤコちゃんは僕の息子二人の使い魔で居たくて、いろいろやらかしているのですがっ」
「いえ、それはそれ、これはこれです。ヤコは私の孫ですからね。これはきっちり納めさせていただきます」
「げっ」
思わず漏らす、セーンのいつもの感嘆の一言。軽はずみを真から表す態度である。
べネル伯父さんは咳払いをして、
「このような高額な費用は遠慮します。たいそうな世話など出来ません。使用人などいない家ですので、どうしてもとおっしゃるなら、セーンと同額のタダでお願いします」
「伯父さん、だから言ったじゃないですか、食費ぐらい払うと」
「しっ、お前が何をやってもタダ働きと、ぼやいているのはお兄さんたちから聞いている。黙っとれ」
「ちぇっ」
そんな会話を聞いたオーカーさん、
「これは驚きましたな、なるほど、そう言えばセーン殿はニキ殿の跡取りのレン殿の息子、まだ当主の座は遠くでございますね」
「そうなんですよね。以前は北ニールの防衛担当者の座が来そうな時期もありましたが、国自体があんな風なので今は無職の日々で・・・」
オーカーさん少し思案しながら、
「そう言う事情なら、さぞ口惜しい事もおありでしょうな。それにその才能を生かせない日々傍から見るともったいない気がします。もしその気がおありなら、無理におすすめは致しませんが、私の国、土ドラゴンの国は、ココモドラゴンの国と小競り合いが絶えません。ドラゴンの姿は最近の若い者は野蛮に見えるとか妙な体裁を言い出し、人型のままでいるものが多くなり防衛にいささかほころびが見えるようになりました。もし、もしですが承知していただければ、人型のままの戦い方、ご教授願えませぬか。国で雇う事になれば報酬をお支払いすることになります。国家の予算から軍隊の指導料としてセーン殿に報酬をお支払いしますよ。どうでしょう、お考えが決まりましたら、ここに控えております私の側仕えが、お世話しますので、お知らせいただければありがたい事です。今日はこのような話することになろうとは思っていませんでしたので、この事は後ほど改めて、と言う事で。では、べネル様、私の様なものが及ばずながら、セーンさんの息子さんの分も合わせての、ヤコの滞在費をお納めいただきたい。べネル様のお宅で暮らすことになりますと、お世話になるだけでは済まず、面倒を起こす可能性が多々ございますので、その折はこちらで当座を忍んでください。そして至急ご連絡いただけば取り急ぎ不足分を収めに参る所存です」
「は・・・」
べネルさん、きょとんとしているので、セーンすかさず、オーカーさんの言いたいことを訳す。『慰謝料の事ですよ、伯父さん。ヤコがもし、やりすぎた場合の話ですってば』
こっそり話そうにも、出来すぎヤコちゃん、察して、
「ヤコ、良い子で居るし。先生には皆と仲良くすることって言われるし、ココモに痛くするなって言われて来たし」
セーンは
「そうなんだー。ヤコちゃん。安心したよ」
と、とりなしておいたが、また、さっきからポケットに入って来ていたヤモちゃんの激しい舌打ちが聞こえる。
夜の訪問だからと、オーカーさん一行、ヤコちゃんを置いて早めに帰って行った。
オーカーさん達、土ドラゴンが滞在中は、借りてきた猫のようにだんまりだったチーセン、ラーセンだったが、でかいドラゴンと察していたのだろう、帰ってしまうと途端にヤコとじゃれ合っていて、『明日はヤコの初めての学校だ』とべネルさんにしかられて一緒に寝る事にして、自分達の部屋へ行った。
「どうもすみません、伯父さん、伯母さん。きっとあいつ等やらかすと思います。俺、もう少し此処に居ましょうか。あいつらを慣らさないと」
セーンが気を使って言うと、ルーナ伯母さんは、
「でも、明後日はレンさんの結婚式でしょう。セーンも出席するように言って必ず戻してって、お母様からしつこく言われたのよ」
「あ、それね。婆さんの言う事は気にしなくていいです。伯母さん、むしろ聞く耳はこの際、持たずに捨ててください」
「あら、どういう事」
伯母さんが興味深げに聞くので、
「婆さんの言っていた事は、今から段々忘れますよ。1、2、3、で忘れますっ」
「アハハ、何よセーン。あんたたちホント、面白いわね」
セーンは伯母さんとふざけて誤魔化していると、べネルさん、
「セーン、行ってやらないとチーラさんが悲しむんじゃないか。良い子じゃないか、チーラさんは、儂なら戻る」
セーンは、『伯父さん、いい人なんだな。こんないい人なんだもの、迷惑はかけられない。どうすれば良いかな』と思っていると、ヤモちゃんが、『ヤコが居るからこっちは大丈夫だ、後はセーンの気持ち次第だ』と言って来た。
『ヤコちゃん、そんなに強いの』
先日のヤコを見てはいないセーンは、疑問を感じたが、ヤモちゃんが『あいつは桁違いだ』と言うので、帰る事にする。
「じゃ、明日帰ります」
セーンは決心した。『恥かいたら、吹っ切れそうな気がするな。この無力感は』
オーカーさんが心配げだった件、吹っ切れそうな気もしたのだった。
一方、べネルさんに言われて自室に引っ込んだ、チーセン、ラーセン及びヤコ。
三人で、チーセン用のベッドにひしめき合って寝転がる。三人は、いくらベッドが人数分あろうと、三人くっついている。ベッドから落ちたものから別のベッドに行くこととなる。何時もそうだった。
「で、ヤコはそんなに利口だったかな。俺、不思議」
ラーセンが疑問点を言う。チーセンも、
「うん、いつもとんちんかんな事言っていたのに、お勉強だけ出来るのか。ヤコ、どうやって成績上げた?」
「どうやったかって、これ、最近不味いってわかった。今度から実力で行く。もう急ぐこと必要ないし」
「そうだろうと思った、で、どうやったんだ」
「本当は知らなかったんだ。言っておくけど」
「はいはい、で、言ってみろよ」
「最初に学校に行ったら、テストの日で、僕、先生の机に同じ紙で、赤で書いてある回答用紙が乗っていてね、きっとあれを書き写すんだと思ったんだ」
「ぷはっ」双子は同時に吹き出す。ヤコちゃん、
「何時も良くそろうね」
と、少し羨ましくなる。前からだけど、何だか懐かしい気分だ。
「そりゃ双子だからそろうさ、で、それ書き写したのか。こりゃ百点だー」
「うん、そうやって何日か過ごすんだけど、あの学校は百点取ったら、次、難しいのを教えるんだけど僕、気付いたんだ。僕は赤の回答移していたけど、皆は教科書の字思い出して書いていた。探すの結構大変そうだから、隣の奴に聞いたんだ。あそこの赤い字どうして写さないのかって」
チーセン、
「もう笑うのやめよ、疲れる」
「ふん、聞いたらそいつが言うんだ。『俺ら、大概の奴は赤が見えない』ってね。それで先生は自分の机にポンと解答用紙放っていたんだ。土ドラゴンの中には、僕がやっているようなこと出来る奴もいた。だけど赤い色は見えないから、心配ないと思っていたんだね。そのうち先生は、僕の事、もしやと思って回答を持って来なくなったけど、僕は職員室ぐらいの距離なら分かるし。先生は気にしなくなるし」
「うん、うん、なるほどねぇ。だけど明日からは急がないんだから、やめて様子見だよ」
チーセンが言うと、ラーセンも、
「皆大きくなったら結構能力ある奴がいる。俺らのクラスには、魔法使いの子分みたいなのが居たけど、俺たち二人がかりだからね。今のところ負け知らず。だから、すぐ行動するなよ。大人はみんな心配しているぞ、ヤコはやりすぎに気を付けろよ」
「うん、分かった」
エピソード内容について
エピソードの中に現実の場合には不適切な内容がありますが、あくまでも作中のエピソードであり、作者は不適切な行動を推奨して書いているのではありません。読者の方はご承知の事でしょうが、一言、念のために書いておきます。




