第34話 魔法使いの企み。一方ヤコは学校で成績優秀、オーカー、ヤコの留学進められる
北ニール、今は滅びた地下の魔の国。そこに住んでいた知る人ぞ知る魔法使いの長老、イレブン。今日は一段と不機嫌なご様子。魔の空洞で地上が被害に及んでいても、地下奥深くにまで影響はなかった。レンが魔族の王に戦争を仕掛けた時、さっさと地下奥深くに隠れ住んでいた。魔法使いイレブンである。
「あの間抜け、役目も果たさず爆発か、バカバカしい事よ。腹を立てる気も失せたわい」
「ははっ」
付き人達は謙って頭を下げる。
「ちっ、どいつもこいつも煩わしい。下がっておれ」
「ははっ」
付き人達は益々謙って頭を下げる。
イレブンの側で寛ぐコモドラの自称王を名乗った男、そしてココモちゃんを無理やり人型にして逃げられたココモちゃんの大叔父だ。ココモちゃんを無理やり人型にしたのは、彼の側に居て不機嫌な様子の魔法使いイレブンである。
自称王、
「さてイレブン、つまりセーンの奴はあの魔の空洞に気が付いたのか」
「そのようで、例の歌の効力で無効化してしまいましたよ。奴には小細工は通用しませんね。そうは言っても、正面からの実力行使は実力に自信の無い奴には向かない手です」
「呑気そうに言うが、お手上げなんじゃないか」
「ははは、儂を見損なってはいけませんな。儂が始末しようと思って、始末できなかったものはいませんよ。そう焦る必要も無いでしょう。今は勘付いて用心していますが、そのうち油断し始めますから。あいつはそう言う性格ですよ」
「しかし、奴には使い魔が居るぞ」
「現在は、あなたの甥っ子さん一味にやられて、大した戦力ではありません。手ごわいのが残っていますが、所詮ヤモリの魔物です。ドラゴンと比べるとパワーが全く劣ります」
「では、間違いなくしとめる事が出来るのだな」
「ええ、ええ、それはもう補償いたしますよ。只、今は奴も用心していますからね。少し冷却期間が必要でしょう。しかし、あの性格の男はそう長くは集中できませんからね」
セーンの性格、このような所にも知れ渡って居るとは少し残念である。
一方、こちらは土ドラゴンに引き取られたココモちゃんとヤコちゃん。ご機嫌いかがかな・・・ふたりは毎日おやつを仲良く食べていることは、セーンとヤモちゃん、感じてはいたが。
オーカーさんは、ヤコちゃんを学校に通わせると、通わせだして八日目に、校長室に呼び出された。
ヤコちゃんは学校創業以来の、天才的な利口さと誉も高く、教師たちはオーカーさんに報告及び、提案をした。
「このお方は、土ドラゴンの一般的知能指数をはるかに超えていますぞ。こう言う知能の場合、教育庁の方針は、セピア公国への留学です。初年度分から6年度分まで一日ずつでマスターし終わり、7年度分からは何故か半日で終わりだし、明日はハイクラスですが、ハイクラスまで行く生徒はセピアへの留学を薦めます。土ドラゴンの国にセピア公国の大卒の官僚の存在は、私共教師の夢でございました。彼の存在はこの国が近代国家となった証でございますぞ。ぜひ留学させてください。本人もヤル気に燃えておりますぞ」
このように煽てられた、オーカーさんである。学校の校長に呼ばれて行ってみれば、このような提案。オーカーさんは嬉しい反面、こんなに早く手を離れてしまう事に、いささか不安を感じた。
出来の良すぎるヤコちゃんに比べて、期待の長男ココモちゃんは、栄養失調で生まれた所為か、学校の成績は鳴かず飛ばず、おまけに遠慮の無い学友と喧嘩ばかりで、こちらは毎日のように担任から呼び出された。挙句の果てはココモちゃん、最近、負けが続くと言って、学校に行かず食っては寝るの毎日。理由を聞くと、こうすれば大きくなると自説を言うが、デブになるの間違いだと言ってやる。運動をして筋肉を付けねばと言って聞かせると、最近はジムに通い出した。オーカーさん、子育ては難しいと、つくづく感じる毎日である。
家に帰ると、ココモとヤコは仲良くおやつを食べていた。オーカーさんは校長達に言われていたので、幾分か気は進まないが、ヤコちゃんに聞いてみる。
「ヤコちゃん、学校の成績がとても良いようだね。儂はうれしかったのだが、校長にセピアへの留学を進められたよ。もうすぐこっちの学校で教えることが無くなるそうだが、ヤコちゃんはまだお勉強したいのかな」
「うん、ヤコ留学する」
ココモちゃんも、
「ヤコ、セピア行くってずっと言っているね。そんなに勉強が好きだって知らなかったな。ハイスクールに行ってそれからどこかの大学に行くんだって。どこかは、まだ決めて無いって」
「そうかい、そうかい。そんなに勉強がしたいなら仕方ない。儂はせっかく一緒に暮らせていたから、手放すのが寂しいが、仕方ないね。しかしココモはどう思っているのかな」
「ヤコちゃんの留学の事?ヤコちゃんが行くと言い出したら、だれにも止められない。僕だってね。そう言う事だよ。お爺ちゃんにとっては残念だろうけどね」
「なるほど、そう言う事か、分かったよ。では、何処のハイスクールに行くのかな」
ヤコちゃん即答する。
「ゼムだよ」
「ゼム・・・」
オーカーさん、その地名に聞き覚えがあった。
実はオーカーさんは抜かりが無く、部下にセーンの家族の動向を追わせており、祖父母、両親、兄弟、親類、何処に住んでいるかすべて把握して、不測の事態には急遽駆けつける準備をしていた。それほどの入れ込みようである。そして、ゼムはセーンの上の双子の息子であるチーセンとラーセンが、セーンの伯父の家からハイスクールに先日から通い出した。そのように報告を受けていた。
「ゼムか。なるほど」
オーカーさんは得心がいった。ヤコちゃんはセーンの子供の使い魔的な役を自ら行っていたとも、以前報告を受けていたのだった。
『使い魔をやめる気はなかったんだな』と得心したのだった。
一方、こちらはゼムのべネル家である。ユーリーン婆さんはミーラさんとレンの結婚式の準備に夢中で、おかげでチーラが自分の息子たちの買い物をセーンとすることができ、万事滞りなく準備できている感じで、ニキ爺さん、そろそろ居候は止めて、帰ろうと思い立つ。ユーリーン婆さんは後の準備は現場で、といった所。帰ろうとニキ爺さんが言い出したが、セーン、
「俺は残るよ。チーとラーがちゃんとやって行けるか見届ける」
と言い出した。ユーリーンは『さては、勘付いたな』と思う。セーンの理由は別にあった。(もちろん、ユーリーン婆の目論見は察していたセーンだが)
チーラは、
「まあ、あの子たちは意外としっかりしているでしょう。以前はセーンも言っていたじゃない『世話無しで助かる』みたいなこと」
セーン、頑張る。
「そんな事言ったかな。とにかく、俺はしばらく様子を見る。チーラは結婚式に参列したいだろう。帰って良いよ。自分で瞬間移動はお手の物だろう。君たちも世話無しだったね。じゃ、婆さんの手伝い頑張ってね。ミーラさん、僕は参加できないかもしれないけど、気にしないだろ。間に合ったら参加するけど。レンは間に合わなくて良いと、きっと思うから。じゃね」
ユーリーン婆、
「くそう」
年配のお婆さんには似合わぬ呟きだ。




