第33話 ルーナ伯母さん手料理の夕食の場、ミーラの発表、翌日ニュースで流れた事
べネル伯父さん宅の食堂でルーナ伯母さんの手料理の夕食をいただくことになった、ニキ爺さん一家である。ニールでは味わえないセピアの料理は珍しい味付けと言うだけではなく、ルーナ伯母さんのプラス愛情と言う感じである。
セーンだけではないだろうと思えたが、コックさんの料理とは全く別物の気がしていた。チーセンやリーセンはこの食事でこれから育つのかと思うと、セーンは少し羨ましかった。ユーリーン婆さんが代表で褒める。褒めるなら一番年配の女性の言葉が重いと言えるだろう。
「いつも思うけど。ルーナさんはお料理がとてもお上手ね。味付けが素晴らしいだけじゃなくって、パワーが感じられるのよね。それに今日のお料理は、そのパワーが強いわ。張り切ってらっしゃったのね」
「まあ、お母様ったら、お上手ねぇ。私、煽てられると、何処までも登っていくたちなのよ。舞い上がっちゃうわ」
ニキ爺さん、
「いやいや、ユーリーンはお世辞は言わないたちだからね。このおいしさは特別だ。べネルは良い人と暮らせて、幸せ者だね」
「まっ、ニキはあたしじゃ不幸なの」
「そんな事、言っちゃいないだろ、やれやれ」
「あはは、父さんたちは相変わらず仲の良いことで」
和やかに話が弾んでいた中で、ミーラさん、一人俯いている。チーラは気になって一言コンタクトしている、
『ミーラ、ふてくされて雰囲気壊すのは止めて。いつもの社交家は何処へ行ったのかしら』
セーンは二人の会話は分かっているので、聞くとはなしに、聞いていると、
『ふてくされてはいないわよ。少し考え事していて・・・そうね、この場ではふさわしいふるまいじゃなかったわ。言ってくれてよかったわ、ありがとうチーラ、私、少し浮いてしまう所だったわ』
『あら、あの事以外に悩みがあったの。後で聞くわ』
しかし、ここでユーリーン婆さんに気付かれた。ユーリーンは気になりだしたら、追及が続く。
「どうしたのミーラさん、悩みでもあるの。此処には人生経験豊かな、老若男女、居るでしょ、ごらんの通り、話してごらんなさいな。話せばこの間の話みたいにどうって事なくなるものよ」
ニキ爺さん、一応婆さんに一言いう。
「ユーリーンや、食事時に悩み相談は止めてくれ、儂は食事に集中したい」
「あら、爺さんは食事していて大丈夫よ。大体、ニキに人生相談する人はいないし。たいして良いアドバイスは無いでしょ。耳栓でもいるかしら」
「ぷはっ」
チーセン、ラーセンは吹き出す。チーラ、
「良いのよ、あなた方はまだ子供ですものね、ルーナ様、マジで二人分の耳栓はございますかしら」
チーラの珍妙な言い方に、シューとジェイも吹き出しそうになる。
首を傾げるチーラに、一応セーンは忠告した。
「チーラの言い方、最近は、丁寧語と今どきの子の言い草がごっちゃになったね。統一しないと。面白いおばさんだと思われるね」
ユーリーン婆さんは、
「あら、面白いおばさんで良いんじゃないの。チーラさん、良いのよ、そのキャラで通してね。ミーラさんも似たような感じなんでしょ。悩みをぶちまけたらきっと元のキャラに戻れるわ。この前は一瞬、戻っていたみたいだけど」
「有難うございます。あたしなんかの事、気にしていただいて光栄ですわ。じゃあ、思い切って発表しますわっ。実はニールに来る前に、レン様から、結婚の申し込みをされましたの」
「げっ」
セーンが思わず漏らした一言で、一部に沸き起こった非難の視線が痛い。
「すまない、前に冗談で言った事、思い出してしまった。あ、これも言っちゃまずかったか」
「ホントに、いい歳になっても軽はずみなんだから、セーンは」
婆さんが嘆くと、爺さんは、
「仕方ない。親子共々、軽はずみな所があってね」
ミーラさん、達観した気持ちを言う、
「無理もありませんわ。歳の差がありますものね。レンがその話をした時も、以前に息子から冗談半分に、双子と結婚してはと言われたことがあるって言いました。ですから私としては、このお話を承知しましても、ご家族の方はどう思われるかしらと思って、こちらに来てみて、それからお返事しますと言っておきましたの」
ユーリーン婆さんは、
「良いんじゃないの、結婚ってのは本人同士の事だもの。外野でどうこう言うんじゃない事だと思うの」
「はい、その通りと思います」
セーンはさっさと同意しておいた。少し気まずい。
「はは、今日はめでたい話で盛り上がるな、良かった良かった」
べネルさんも上機嫌になっている。すると、ニキ爺さん、
「べネル、めでたい場合の食卓に必要な飲み物が、居るんじゃないのか」
爺さんに酒を要求された、べネルさん。セーンは今日は酒を出さない気だと分かっていたのだが、べネルさんはどうするかなと思っていると、
「その件ね、父さん。実は別件で、今日は出せない事情があってね。そうじゃなきゃ、最初から出していたんだが」
「そうなのか、それじゃ辛抱して居よう」
べネルの言葉で爺さんは納得したが、何かと真から納得感の欲しいらしいユーリーン、
「あら、あたしにもっと納得できる説明をしてよ、べネル」
ため息をついて、べネルさんは、
「母さん、父さんは納得しているんだから、いいじゃないか」
「あたしも納得したいのっ。言わないの、言えない事情って何」
セーン、一言いう。
「俺が酩酊になりたくないのっ」
「ならなきゃいいじゃないの」
「出来れば皆も酩酊状態は避けたい」
「あら」
婆さん、やっと思い至ったか、
「今日はお子さまのお祝い事だったし」
納得できたのなら、理由は何でもいいやと思ったセーンである。
次の日の朝、ユーリーン婆さんは、
「チーセン及びラーセン。今日は学校に行って挨拶し、次に必要なものの買い出しに行くわ」
双子やシューのジェイの寝転がる部屋へ行き、宣言する。違和感を覚えて首を傾げる婆さんに、シューが一言、
「今日は日曜だからね、学校は休みだよ」
「あら、そうだったの。所で皆は、倒れているの、それとも寝たの、着の身着のままだけど」
「多分、倒れて寝たね。ほぼ、朝方だけど」
「何が面白いのかねぇ、ぴこぴこぴこぴこと」
そう言いながら食堂に居るミーラに、
「今日はミーラの相手に集中できるわ。結婚式の準備でもする?」
昨日から達観感のあるミーラ、
「どちらも2度目でしょ。式はしないわ」
「2度でも3度でも、お祝い事はした方が良いわよっ。それにミーラは1度目があったとも言えない気がするわ」
ミーラ、
「相手が死人じゃぁね。でもレンはきっと嫌がるわ」
チーラも思い出して、
「そう言えばあたしのも、誰も親類とか居なかったわね。何せ、嫌がるセーンを無理やり国に連れて帰ったんだから」
ミーラ、
「でも、逃げて帰ろうと思えばセーンは出来たはずだって言うのが、レンの見解だったわよ」
「ふふん、皆そう言うの」
ユーリーン婆、
「じゃ、今日は二人の合同結婚式の準備の買い物にしましょ。行くわよショッピングセンターへ。セーン、セーンは何しているの」
婆さんのお呼びで、セーン三人の所へ行ったものの、
「俺はしない、しなくていいなら、ショッピングセンターでもデパートでも連れて行くけど」
と宣言する。もう流されて何かやってしまう年ではない。キリッと皆を見回す。
婆さん、あっさり、
「じゃ良いわ、ニキに付いて来てもらうから」
セーンはがっくりしながら、爺さん達が熱心にテレビを見ている所へ行き、一緒に見ることにすると、ニュースを流していた。
『・・・路地裏で何かの爆発に巻き込まれたかのような状態で見つかりました。被害者は検視の結果なんと128歳、この年齢により、どうやら北ニールの魔法使いと身元が分かりました。おそらく、被害者の引き受けた仕事関係からのトラブルと思われます。捜査上に手掛かりは有りません。何せ魔法使いのトラブルでは、警察関係者の捜査には限界があります。こういう事件は迷宮入りの事が多いですね。〇〇さん』
『げっ、もうニュースでやってら』
セーンはぎょっとした。また例によって、識者にアナウンサーが聞いている。識者は応えているが、何か言えるのか。
『そうですね。このセピア公国にも、魔法使いが近年多く住んでいるようです。自分の国がああなってしまっては、商売の地域をセピアに移した魔法使いが多いですね。しかし自業自得ではないでしょうか、あの惨状の原因である『魔の空洞』は、魔法使いが作るものだそうですよ。いやはや、この国もああなってしまわないことを、願うばかりです』
『本当ですか〇〇さん。この国もああなる可能性が有りますかね。実は今回の事件は、目撃者はいないのですが、奇妙な証言が警察の聞き込みで出て来ています。警察では事件に関係のある証言はマスコミには伏せていますが、この件は関係なしと、私たちに流した情報があります。魔法使い関連なら、もしや重大な情報かも知れないですよね』
『おや、いったいどんな情報でしょう』
『はい、実は事件の夜、ある有名なオペラの挿入歌を歌う声が聞こえたそうです。辺り一帯の住人は皆聞いていて、その歌声はプロの様に素晴らしくて、皆聞きほれたそうです。そしてどこで歌っているような感じだったか聞くと、どうやら事件のあった路地に近い家の人ほど、良く聞こえていたようなのです。どう思われますか、〇〇さん。実のところ〇〇さんは、ニール国の超能力者にお詳しいと噂です』
『そう言われていますが、その歌声、もしやオペラの題名は『愛が全て』で、主人公カップルのデュエットの挿入歌ではありませんか』
『大当たりです』
『それはある超能力者が、魔物の能力を失わせる目的で歌っていたと言う証言があります。私に言えることはそれだけです』
セーンはテレビでセピア全国に知れ渡ってしまった件について、
『オワッタ』
と思った。




