第30話 セーン話し合いにヤモとヤコついて来られる。ヤモに使い魔だからセーンが決めろと言われ、無理にヤモを置いて帰り、ヤーモ立腹
セーンは口ごもるオーカーさんを見ながら、およその話に見当をつけていた。
少し時間を戻しておこう。
セーンは何時まで待っても、コモドラ一行が攻めて来ないので、自分が勘付いている事を察したと分かった。おそらく魔法使いが加わった所為で、そいつに気付かれたと思った。次はもう少し、大人しく待つべきだと反省したが、果して次はあるだろうか。
そう言う訳でセーンは、クサクサしてチーラの部屋に戻ろうとすると、ヤーモちゃんに捕まり、又子守役になった。ヘキジョウさんっ子をしょって、やれやれと思っていると、リューンさんに、直ぐ来るように言われて、
「何の話かな、ココモちゃんとオーカーさんが来たって言うけど」
と言いながら出かけようとすると。チーラに、
「まぁ、きっとココモちゃん達を全員引き取って暮らしたいんじゃないの、土ドラゴンの先王は。ココモドラゴンのあの王とは結ばれなかったし、せめて忘れ形見たち家族の面倒を見たいって思っているわね。なんだか切なくなるわ。ふう」
と言われていた。
それを知ってか知らずか(多分知ってる)ヤコちゃんが「ヤコも行く」とセーンの側に寄って来た。
「お前が行くのはまだ早くないかな。リューンさんには連れて来いと言う指図は無かったし。それにヤモちゃんは急に話を知ったから、どうする気かな、分からないぞ。まだお前は、実の爺さんに愛想よくするのは早いと思う」
と言ってみた。はたして理解できるかどうか・・・
「なに、それ。行く」
セーンがため息をついていると、当事者ヤモちゃんがやって来て、
「ヤコは行かない。ヤモとヤコはまだ行かない」
「行く」
ヤモちゃんはまだ決心はつかないだろうとセーンが思っていると、
「ヤモはセーンの使い魔だ。お前が決めるはず」
ぎょっとするセーン。
続いて、ヤコが決め台詞を言う。
「セーンが決めるはず。ヤコはついて行くはず。ココモに会うはず」
仕方なくヘキジョウさんっ子をしょうのは止めようとするが、勘付いたヘキジョウさんっ子一斉に泣く。
どこからかヤーモちゃんの怒りの声が・・・
「セーン。泣かすなっ、今、しょわせたのに降ろすな早すぎるだろ」
「でも、ヤコちゃんをしょわないと、瞬間移動するし」
するとヤーモちゃんのごもっともな忠告が、それにしてもどこに居る?
「連れて行くな、行けば成り行きで決まっちまう」
「だよね、俺もそう思うけど」
「行く」
ヤコちゃん、ヘキジョウさんっ子の上からセーンにしょわれる気だ。飛び上がって、
「ヤコは翼で軽くなる」
「まさか」
瞬間移動と翼は関係ないが、説明は不可能と思うセーン。仕方なく行こうとすると、ヤモちゃんが、
「で、セーンはどうする気だ」
「ヤモちゃんが決めてよ」
「・・・」
無言のヤモちゃんに、
「ヤコはココモと居たいけど、おじさんドラゴン、ヤコ達の事何も言って無い」
セーンは、ヤコはつくづく利口だと思った。
「そうだよな、お前らとはそもそも、まだ会っていないし。気に入らない可能性だってある」
『それはどうかな』
ヤモちゃんが呟いたが、そう言う事にして、セーンは出発した。ヤモちゃん、ポケットに入る。違う種だと主張すべきだろう。
そして、リューンさんの船にそろった面々。皆、音頭をとる性格ではなさそうだ。沈黙のオーカーさん。やはりここでも、魔物とドラゴンは御法度の可能性有りかも知れないと、セーンには思えた。しかし、オーカーさんが重い口を動かしだした。ホント、重そう。
「こんな事を急に言い出す自分の身勝手さが、分からない訳ではないが。どうも、言いたいことを言わずにはおれない年寄りになった。ココモは皆さんとあの館で暮らせば何の問題もなく過ごせる事は分かっている。身勝手な爺の言う事を聞いてもらえるとありがたい。儂の若い頃は、セピア公国からもっと南にあるところの島々には、何種類もドラゴンが生息していて、本能だけで生きているような連中ばかりで、違う種類となると、小競り合いばかりしておった。その頃はココモドラゴンが幅を利かせていた。と言うのもココモは理由は分からないが、時々、突出して能力の高い奴が生まれて来ていて、そいつが君臨する時期は、他のドラゴンは歯が立たない。歯向かうドラゴンは滅ぼされた。土ドラゴンは特に目の敵にされていた。と言うのも土ドラゴンはココモよりやや大振りで、普通のココモドラゴンが相手なら、土ドラゴンの方が強かった。それでココモの王となれば目の上の瘤の様な土ドラゴンの息の根を止める事を画策していたな。だが、時にはココモにその優れた能力のドラゴンが生まれて来ない期間もあった。そういう時期に土ドラゴンにココモは滅ぼされる可能性が有ったのでお互いいがみ合う関係が続いていた。戦争は続き、途切れることは無かったが、ある時期のココモに能力者が不在となりその時期から形勢が逆転した。土ドラゴンはどんどんココモの生息地を侵略していき、ココモは絶滅かと言う時期、能力者が生まれた。やっとの誕生だが、その時はもうココモは滅びまであと一歩と言った所だった、ココモの王となったあのお方は特に優れた知能で、わずかなココモドラゴンで、土ドラゴンと対等な戦況となったのだが、そうはいくものかと、土ドラゴン達は王に刺客を送り、まんまと王に毒入りの食べ物を食わすことに成功した。卑怯な事だった。その毒は無色無臭で、利口な王にも見破られることは無かった。その毒を作った魔法使いが悪知恵が働き。王をそのまま殺すことをせず。少しの解毒剤を飲ませながら。その能力を利用しろと土ドラゴンの陣営をそそのかした。魔法使いは王の戦時の采配を見て、予知能力を持っていると言っていた」
「ひどーい、マーホオーつかい」
ヤモちゃんの合いの手、初対面のオーカーさん相手でもさく裂した。血のつながりが有ると、本能で分かるのだろうか。ポケットの中ではヤモちゃんが『チッ』舌打ちが聞こえた。
「まったく、その通りだ。ヤコちゃんは良い子だね」
「うん」
ココモちゃんはヘラリとヤコちゃんを見る。
「儂はその頃、ただの兵士でしかなかったが、その頃君臨していた王は儂の叔父で、彼からココモの王の世話係を命じられた。それで、あの方の側に居られた。あの方を知れば知るほど、儂はその能力も然ることながら、掃きだめに清々しく立ち上がっている光り輝く存在の様。ドラゴンに神が居るとすればその生まれ変わりの様な、神々しささえ感じた。ココモドラゴンの姿をしてはいるが、中身は全く別物の様なお方だった。儂は何とか毒を全て消してしまえる量の薬を手に入れ逃がしたかった。あの頃は愚かだった儂は、考えなしの薬を探す動きを見張りの兵士に気付かれた。そして、叔父の王には儂の気持ちを勘付かれ、あのお方は魔の国に連れて行かれてしまった。愚かな儂の所為だ。あの方には多くの献身的な家来や側仕えが居て、魔の国へ連れて行かれるときには、その献身的なココモの家来が自ら王を追って魔の国へ向かった。先はどうなるか分からなかったはずだが。だが、あまりに多くのココモの兵が自国にやって来て、煩わしく思ったのか、魔の国の王は獣人国の王に家来ごとココモの王を売りさばいた。そう言う事で、セーン殿はあのお方を獣人国で見知る事となったのだよ」
「そうだったのですか」
相槌を打ちながら、セーンはこのオーカーさん、いまだにココモの王に、恋焦がれている感じがした。重症の片思いっぽい。話の中にはココモの王にオーカーさんが好かれていた感の思い出は語られなかった。セーンはヤモちゃんに気がかりな事、コンタクトしておこうと思う。
『皆が彼の住処に連れて行かれたとしたら、多分大事にされると思うけど。この勢いで一緒に暮らさないかと言う話になれば、ヤモちゃんの台詞、セーンの使い魔ですから、セーンに決めてもらわないと。なんて、言わないでおいてほしいな。きっと俺、誤解される気がする。ヤモちゃん達、当時者で決めてくれ。俺が痛い目に合う可能性は避けてほしいな。俺は喧嘩のできない立場なのでは?』
『セーンが決めて、ヤモに言ってよ、今』
『どうしても俺に決めさせたいんだな。だから、ヤモちゃん達がしたいようにしろって俺が決めて、言ってるんだよ』、『なぜそう言うかな』『えーと・・・』
セーンとヤモちゃんでコンタクトを必死でしすぎて、皆に感付かれている事に気付いた二人だ。
周りを恐る恐る見ると、全員の注目を浴びているのが分かった。
ココモちゃんが、代表で言った。
「セーン、僕ら他の人のコンタクトも聞こえるんだ。最近は僕もわかるし、えへ」
「えへへ」
セーンも誤魔化し照れ笑いをしていると、ヤモちゃんがまた、『決めて言ってよ』と言って来る。ココモの話聞いてたか?
その時、
「あーもぅ、阿呆ども、まだオーカーさんは何も言っていないじゃないかっ」
ヤーモちゃん、イライラが激しくなって、ついにヘキジョウさんっ子の懐から飛び出して来た。付いて来ていたんだ。
きっと、オーカーさんは驚いたはずだが、その件は顔には出さず、
「はい、そうですよね。しかし、私の気持ちは皆さんのお察し通りなんですよ。そうは言っても、はっきり口に出すのが、礼儀でしょうね。ココモの家族は私の家族ですから、出来ればこれからは共に暮らしていきたいのですよ。事情が色々有りそうですけどね」
セーンはもうこうなったら行動に移すべきだと思い、
「じゃ、俺はもう帰るよ。帰りはヤーモだけで良いや。あ、ヘキジョウっ子も、もちろんだけどね。後は残った人たちで、話し合う事あれば話し合ってね。お達者でとでも言っておこうかな」
すると、オーカーさん、
「セーン殿、この恩はこの子らの面倒を見て行くことで返していくつもりだ。必ず皆を幸せに暮らさせると誓わせてもらおう。土ドラゴン一家はセーン殿一家にこれからは災いなどおこる事は無いと断言しよう」
「あ、そうなんですか。どうも、」
もごもご挨拶して、セーンはさっさとヤモちゃんをポケットからつかみ出し、瞬間移動で立ち去った。ポケットからなかなか出ないのは、ヤモちゃん、決心がついていないのかもしれなかったが、
『ま、いやになったら帰って来るさ。皆、つながれている訳じゃないだろ』
ヤーモちゃんに話しかけるが、返事はない。ご機嫌斜めか?
しかし、しょうがないだろうと思うセーンである。『オーカーさんの思い通りに一度はしてあげないとね。暴れだしちゃ困るレベルだろ。あのドラゴンの能力は。それか、思い通りにならなくても暴れずにじっと耐えられたら、何かのパワーが頭辺りから漏れて来そうだし、それ見たら気になるよ、きっと。今更、やっぱり一緒に暮らすとか言えないだろ』
セーンは、言い募ったところで、この意見はチーラさんしか分かってくれ無さそうだと感じた。




