第29話 襲って来ようとするコモドラに気付いたセーンを魔法使いが察する。王の後見人、他を襲うが返り討ち。襲われたリューンを心配するココモ。リューンの所にオーカーと行き、その後ヤモとヤコとの話し合いを
セーンは奴らが家の中に入って来ないように、外に行き、館全体にもう一度きっちり結界を張った。皆、中に居たので、時間を取られず幸先良いと思う。結界は外からだけではなく、内側からも出入りできないようにした。チーラの忠告の賜物だ。誰も危険にさらす訳にはいかない。
そんな準備をしていた頃、コモドラ一行はまだ自分らの居城におり、隊を組んでセーンの居る館に行くつもりだったようだが。言うなれば、例の王の後見人と自己紹介した先王の弟ケルが前回の犠牲者の弔い合戦を決心した直後、セーンが、奴らがやって来ると勘付いたわけである。
つまりセーンはいささか、かなり?早い準備状態。待つ身のセーン、すでに闘気マックスである。
これにコモドラ軍を指揮する偽王の後見人ケルが気付かぬわけがない、と言うより、実は気付いたのは魔法使いの方なのだが。
「あ奴、もう勘付いておるぞ。これでは奇襲にはなるまい。後見人殿、王にお伺いを立てた方が良いのでは」
魔法使いは王とは名ばかりの何の力もない後見人の実の息子と言う事は、分かっていたが、ここは報酬も半分前払いで貰ったこともあり、ケルに話を合わせていたのだった。
ケルの唯一の得意技、それは悪だくみだ。一旦、魔法使いの側を離れると、すぐに又現れ、王にお伺いを立てて来たかのように、話し出す。
「では奇襲になるところへ攻めることにしようぞ。主だった兵士半数と俺は、獣人国に居るセーンの父親レンに奇襲をかける。残りの半数のうちその又半数はセピアに居るセーンの伯父一家を始末しに行け、そこは魔道具の商いをやっておるから、魔法使いのお方には、興味がおありでは?もしや掘り出し物があるやもしれませぬぞ。と言うより使える品を見繕ってほしいと言うのが王の本音だ。ニールの壊滅は魔王がその本店に有った『魔の空洞』を手に入れ使用したのが原因ですからな。セピアの支店にも何か使えそうな魔道具があるのでは」
「ほほう、それは興味深い事じゃ」
魔法使いは、セピアの魔道具店は既にチェック済みであったが、ここはケルに話を合わせておくことにした。と言うのも彼らと獣人国に行きたくはなかった。以前に獣人国の王に仕えていたことが有った(例のチーセンとラーセンの能力を吸い取っていた件は彼が犯人)魔法使いは、現在獣人国に居るレンとジュールには、関わりたくないのだ。はっきり言ってレンがセーンの能力に近いと知っていた。パワーはセーンよりは劣るが、百戦錬磨で経験値多大の父親であり油断はならないと噂だし、兵士が半分では負けははっきりしていた。しかしケルにそれを教えるつもりはない。
ケルはさらに計画を話した。最後の兵士達の役処だ。
「残りは南ニールの海岸に居るセーンの叔父を始末しろ。セーンが頻繁に訪れている。一泡吹かせてやれ」
魔法使い、リューンの能力も知っていたが、これもだんまりで通す。『魔の空洞』のパワーを押し返した件は有名で、魔法使いの間では恐怖の相手だが、ドラゴンの国にまでは噂は流れていないと見える。
魔法使いは、この襲撃でケルが生きているか死んでしまうか微妙なところだと思い、報酬は前払いで半分、残りはセーンを始末して半分の契約で、半分は手に入れていたのでこのまま住処に戻るのが賢い者だと心得ていた。当初から出発したら途中で住処に戻るつもりの、魔法使いだが、この後、他のドラゴンからは相当な恨みを買ってしまう。表には出られなくなったのだが、この件、決して魔法使いの所為ではない。しかし、前々から根性が悪い所為で、自業自得と言える。その訳は・・・
ケルの計画に従い、ココモドラゴンの兵士、十数体は、セピア公国のべネルの店めがけて、海上から近づいていた。魔法使いは既にいない。それにドラゴン達は気付いており、不信感、ひいては不安を感じてはいた。その感情は別の場所にいるココモドラゴンの多くの者に感じられた。ココモドラゴンの唯一の特徴。ピンチは共有すると言うもの。この場で酷く感じられた者、セピア行きのドラゴンの中には予知できる者が居たのかもしれない。
ドラゴン達十数体は、セピア公国の海岸近く、魔道具の店の前に降り立つことはできなかった。
と言うよりもココモドラゴン達は、セピア公国に近づくことは叶わなかった。セピア公国の軍事レーダーに引っかかった、ココモドラゴン達。飛んでいる所をレーザー銃でことごとく撃ち殺された。ドラゴン的には十数体では戦争など始めるのは、数が少なすぎて、まったくの無意味なのだが、セピア公国の人たちは大きなドラゴン十数体を見て身の危険も然ることながら、国の危険さえ感じた。レーザー銃でことごとくやっつける事が出来たのをテレビ画面で目のあたりにして、ほっと安心したのだった。
しかし、このテレビ放送、最近ではテレビの普及は、土ドラゴンはもとより、ココモドラゴン国にもかなりの量輸入されており、ココモドラゴンのセピア急襲、及び敗北の様子は、全ココモドラゴン国に行き渡っていた。そして、そこには魔法使いの姿は無かった事も。ドラゴンの国の噂では、『雇っていた魔法使いが、ココモドラゴンの一行を裏切り、攻撃される前にドラゴン達には状況を教えずに見殺しにして、自分だけずらかって逃げやがった。卑怯者じゃないか』
と言う事で、魔法使い探しが、ブームとなり静かに出回って探している。王の後見人ケルは失脚した。現在どこに居るのかわからない。もしかしたら、死んでいるのでは・・・
一方、リューンさんちの奇襲をかけた。コモドラ一行。しかし、リューンさんにとっての辞書には奇襲と言う言葉は存在しない。その件、ニールの国では知らぬ者無しだが。コモドラ一行はご存知ない。コモドラ国には学校が必要だ・・・関係ないか。単なる噂が行かないだけなのか。セーンが以前、土ドラゴン達に見せた技の上手を行くような喝っぽい技をリューンさんが繰り出し、十数匹のドラゴンは哀れ海の波間に消えたか、と思われたが、皆慌てて海上に出て来て、必死で濡れた体を鞭打ち、飛び上がろうとしている。
「君達、何を慌てておる」
リューンさんわざと不思議そうに聞いてみる。理由は察していた。海のクレイジーハンターとセピアの漁師に恐れられている、狂暴な海に住む哺乳類の群れがやって来たのだ。海に落ちるとき間抜けが(どこにでも混じっているものだが)。自分の足のかぎ爪で足を切って、血を海に流していた。ドラゴンはクレイジーハンターの大好物だ。海上を油断して飛びながら魚を探しているドラゴンを10m以上飛び上がってしとめる奴もいるそうだ。幸いなことに彼らは人間は好みではない。食ってみて不味かったらしい。
丁度リューンさんが海で漁を始めていると、コモドラ一行がやって来るは、遠くにクレイジーハンターの群れが居るはで、これは面白い事になりそうだと期待していると、期待以上の出来事となっていた。魚の入れ物の口を開けておき、海中が大荒れとなりどさくさに魚が船に飛び込むことを期待していた、リューンさんの行動である。船は揺れたが、落ちてしまうほどでもなく、飛び込んだ魚を刺身にし、それを酒の肴にしようと思いながら、常備の酒瓶の蓋を開けようと、揺れる船の上で四苦八苦していると、
「リューンさーん」
と聞き覚えのある声が上空から聞こえた。
まさか飛べるようになったのかと見上げると、土ドラゴンに掴まれてやって来た、ココモである。
「ココモじゃないか。連れがコモドラじゃなくなったようだな」
「うん、コモドラは大嫌い。セーンは?」
「何時もセーンが此処に居る訳じゃない。お連れさんはオーカーさんと側仕えだな。俺に用なのか」
「知っておるのか、別に用は無いが、ココモがリューンさんが心配だとか言うから、来てみたまでの事」
「はは、心配には及ばぬのに」
「この前はよわっちそうにしていたけど、芝居?セーンにやっつけさせようと思ったとか」
「ココモちゃん、最近見かけなかったら、随分知恵がついたねぇ」
「そうかな。えへ」
そんな会話をしていると、噂のセーンの登場である。背中にはヘキジョウさんの親無しっ子3人と、ヤコちゃんまでしょっている。ヤコちゃんは自分の場所など無いくせに、小さな子の上からぶら下がっていた。
リューンさんはあきれて、
「お前、確かヤコちゃん言うんだよな。随分無理なしょわれ方だが、そんな年じゃないんじゃないか」
「連れてかないって言うから、無理した」
そんなヤコちゃんに、ココモちゃんは、
「ヤコちゃん、この前はごめんね。ココモ、もう言わないから。それでヤモちゃんにも話したかったけど、この土ドラゴンさんが、話があるって言うんだけど」
すると、ヤモちゃんはセーンのポケットに居ることが分かった。ポケット形状のまま、顔をのぞかせた。ココモちゃん、
「あ、居たんだ。えへ」
何故か、愛想笑い。
ヤモちゃんはしれっと、またポケットに入った。
オーカーさん、確信が無さそうだが、
「ココモ、あそこに居たのが、ヤモちゃんか」
「そうだよ、セーンのポケットとか、壁に居るときはあの格好なんだ。本当は魔物だってさ。ところでさ。話って何だったの」
「あ、話な」
オーカーさん、何故か口ごもる。




