第26話 ニキ爺さんのヤコの正体の話。ココモちゃんはヤコちゃんと言い合い、ヤモとも 気まずくなる。セーンはココモが居なくなったと分かる
チーラが幼い双子とその間に収まっているヤコちゃんを抱いて、ぼうっと惨状を見ていると、執事さんが側に寄り、
「チーラ様、もう中へお入りください。今日は少し冷えますから、温かいお茶を淹れました。皆さん食堂におられますよ」
辺りを見回すと、いつの間にか皆居なくなり、館の使用人の皆が庭の少し館から離れた場所に穴を掘りだした。
「ヘキジョウさんを埋めるのかしら。でもドラゴンはこの辺りに埋めたくはないわ」
「そうですとも、後で海に捨てましょう」
促されて中に入ろうとすると、セーン達が戻って来た。そういえば帰りが随分遅いと思えば、四人とも大泣きの様子で、ヘキジョウさん達に縋ってなおも、大泣きを続けだした。自分達を見ているチーラに気付いた、ココモちゃんが、
「僕はヤコちゃんの大声で目が覚めたけど、他はドラゴンが館に来た時、分かって、セーンが助けに行こうとしたら、リューンさんに、『使い魔を助けに行く主人は居ないぞ。使い魔の立つ瀬がない』って、止められたそうです。『今から行っても、助けられるのはわずかなものだし。戦ったヘキジョウ達の死を無碍には扱えない』って。意味わからないけど、セーンは分かったし、ヤモも、ヤーモだって意味わかって、そしてリューンさんが、『もし、お前たちが助けに行き、ヘキジョウが数人生き残ったとして、わずかな数のヘキジョウ達、これからどんな気持ちで生きていくのかな』とか、『使い魔の役目を全うさせてやれ』とか、言ったらみんな泣き出して、ヤコの大声で僕が飛び起きたら、その時ドラゴンはやっつけていたので、後は泣いて、帰るのが遅くなりました。ほったらかした訳じゃないです。本人たちが言ったら言い訳っぽいから、僕が代わりに言う方が良いと思った。そう思うだろ、ヤコちゃん。大活躍だったね」
「活躍してない、知っているくせに。馬鹿ココモ」
「言ったな、のろまのヤコ」
「ふぇーん」
ヤコちゃんは泣きながら、ヤモちゃんの背中にしょわれに行った。
「ココモが、のろま言う」
ヤモちゃんに言い付けているが、チーラはさっきのあの姿のヤコちゃんは一体何だったのか、不思議だった。
皆を見ていられなくて、お茶を飲みに食堂に行くと、ユーリーンがチーラに、
「ヘキジョウさん達にとっては、かっこ悪いかもしれないけど、セーンを行かせてあげればよかったのにねぇ。リューンったら、意外と昔気質なのよぅ。それに、ヤコちゃんがやっつけなけりゃ、子供たちがさらわれたのに」
するとニキ爺さん、
「リューンはヤコがやっつけると分かっていたんだろうさ」
「どうしてわかるの」
「あれは最古の原始的なドラゴンだな。あの咆哮は近くで聞くとしびれた。さっきやっと思い出したよ。どうも、忘れっぽくなってきたな。あれはドラゴンの一種だ。クーラが持っていたドラゴンの本に最古のドラゴンの絵があったが、ああいう風体だった。何故か先祖返りのドラゴンを生んだんだな、ヤモちゃんは。ヤモちゃん達魔物は、あのドラゴンの末裔だったのかもしれないな」
「まっ、クーラはそんな事言わなかったわよ」
「クーラは読んでないだろうな。まだ小さい頃儂が買ってやったが、難しすぎて、クーラは読まずにほったらかしていたから、儂が代わりに読んでおいた本だった」
「クーラったら、セーンにドラゴンと魔物のおつき合いは御法度って言うのを遺伝子の話まで持ち出して解説をしていたのよ。まことしやかなほらだったのね。ふん、獣人国でくしゃみでもしているでしょうよ」
するとニキ爺さんは、
「ほらとは言えまい。実際ランダムな遺伝子で生まれたはずだ。それでヤモ一家の様なドラゴンの末裔が存在しているんじゃないかな。しかしヤコちゃんは、どうやら、ヤモちゃんが無意識にか、意識してかは知らんが、あの最古のドラゴンを選んで生んだはずだ」
チーラは、2人の話を聞いて、ヤコちゃんの正体について考えると、我が子達の使い魔にはもったいなくて、大きくなったらドラゴンとしての生き方をしてほしいと思った。
ヤモちゃんに『ココモからのろまと言われた』の件を訴えて、泣いていたヤコちゃん。
ヘキジョウさんに縋りついて泣いていると思っていたヤモちゃんが、急に立ち上がって、ヤコちゃんを睨むので。驚いて見上げると。
「ヤコはちゃんとやる事はやった。泣かなくて良いはず。何故泣く。ヤコの役目はセーンの子を守る事。ヘキジョウが全滅するまでは子供達の側に居たし、その後はヤコが何とかするしかなくて、ドラゴンをやっつけた。完璧じゃないか。何故泣く。馬鹿ココモが何か言ったって?あいつが食い物の事以外の話をしたところで、たかが知れている。あいつと俺らはもう縁切りだ。親でも子でも無いし。夫夫でもないし。種も違う。セーンはあいつが大人になるまで面倒を見るとあの母親と約束したそうだが、あいつは人型になればもう大人の男だった。卵が栄養失調でドラゴンの見かけは幼鳥に見えるが、栄養失調の為にそう見えるだけ、あいつは大人のココモドラゴン、栄養失調で食う事しか頭は反応しない大馬鹿者だ」
ヤモの大演説の締めくくりは、じろりと丸まって泣いているセーンを見て、
「セーンは既に約束は果たし終わっている。大人の大馬鹿ココモドラゴンをこれ以上構う気か」
セーンは泣き腫らした目でヤモちゃんを見上げた。
「ヤモちゃんがココモちゃんは大人って言うなら、そうなのかもしれないね。今、衝撃の事実言ったけど、それがホントなら、この辺でけりを付けたいところだね。ココモドラゴンがまた攻めて来るなら、ヘキジョウさんの仇を取るから、ココモの身内と戦う事になるかもしれないな。後でココモと話を付けよう。今は俺、ちょっと取り込み中だからね、後にする」
「分かったけど、何時までも引きずるなよ」
「ああ、少し待ってね、今考え事しているんだ・・・」
「セーンの所為じゃないからな」
ヤモちゃんはそう言ってヤコちゃんを連れて館の中に入った。
ヤーモちゃんはそれを横眼で見送って、セーンに向き合った。
「館の中の話声じゃ、ヤコは祖先帰りの最古のドラゴンだってさ。壁の上一家は、最古のドラゴンの末裔じゃないかって言ってた」
「それ、誰が言ったの」
「多分、ニキさん」
「じゃ、ほんとの事だろうよ」
「それと、今のヤモの話じゃ、ヤモはココモとやったんじゃないかな。えーと、子作り」
「あのー、言い方がな・・・」
「それにしても・・・、ココモどこ行った?」
ヤーモの何気ない言い方に、かえってぎょっとするセーン、
「居ないぞ、この辺りには。あいつが大人だとしたら、多分さっきの件では、何か思うところあったかもしれない」
ヤーモは、
「嫌だな、こんなに散々な後で、あいつが居なくなるなんて。でも、もしココモドラゴンのどっち側か知らないけど、ココモがどっちかとつるんだら、セーンはもうあいつの事は忘れた方が良いよ。どうせ、今から仕返しするんだろ。どう転んでもあいつ等皆親類じゃないか。セーンにやられそうになって、あわてて仲直りの可能性もありだろ」
「ヤーモちゃん、最近は言いにくい事もズバズバ言うね」
セーンは、ヤーモちゃんに一言言って、その後ココモの気配を探すが、どうした事か、このニールの田舎近辺にココモの気配はない。獣人国も探れるところまでココモの気配を探るが、居ない。セーンは予想していない事態に思わず立ち上がる。
まだセーンの側で、寝転がっていたヤーモちゃんも雰囲気の変化で、思わず立ち上がった。
「居ないのか、ココモ。こりゃ、出て行ったんじゃないか。皆の態度が冷たいとかで。拗ねたな。どうする、探しに行くの」
「いや、ひとまず朝飯にしよう。それからだ」




