第23話 ココモドラゴンの国に行く途中の船で、ココモちゃんの人型と再会。逃げたココモを追いかけるドラゴンから、皆で逃げ最初の城に行く。ココモは食べ物をもらう
セーン達はこの先の不測の事態に備えて、体力は温存しようと思い、瞬間移動は少しずつ場所を選んで移動することにした。セピア公国の海岸まで行き、次にセピアの船で、出来るだけドラゴン生息地付近を航行している船を探した。セーンは遠い所を戻ってくるセピアの船を発見し、イメージで見せると目指しやすいと思い、ヤモとヤーモにイメージを伝えた。出来るだけ彼らも自力で移動してほしい。それで、『どうだ行けそうか、無理だったらポケットに入ってろ。落ちたら探すのに時間がかかるからな』
ヤモちゃん、『落ちたらほっとけ、浮かび上がったら追いかけるさ』
ヤーモちゃんがふてくされて、『それ、俺の話題か』
『ヤーモはポケットに入ってろ、あの辺りは、ドラゴンがうろつく場所だから、食われたら困るだろ』
『俺は落ちない』
『そうだろーさ、体力温存も必要だからな。入っとけ』
セーンに言われて、ごそごそポケットに入ったヤーモ。体力はまだ無いと自覚している。
ヤモとセピアの船に移動したセーン。ひとけのない船底に見当をつけて着地したつもりだったが。セーンは人声が聞こえた気がしてぎょっとして、耳を澄ますと、何だか聞き覚えのある泣き声と呟きが、
「ふぇーん、腹減ったのにまだ遠い。セーンきてよー、何かくれよー、ふぇーん。あ、セーンもう僕の事見ても分からないかも。う、う、う、ぅおわた」
「ココモー、ココモー、セーン来たよ。変な事言って、意味わからないんですけどー」
そろそろ移動して、小声でココモちゃんに呼びかけるセーン。貨物のおいてある船底は暗くて、黒いドラゴンは見えにくい。そう思っていたが、暗がりで、大泣きの若い男と目が合う。
「え?」
「ふぇーん、セーン僕だよー、向こうに着いたら変な奴に変な薬飲まされたら、人型になったけど、ドラゴンに戻れなくて、と言うか、ドラゴンに戻る事、誰も教えてくれないんだ。あいつら嫌いだ。ドラゴンになったら飛んで逃げるとか言うんだ。まだ飛んだ事ないのに」
ココモちゃんセーンに会って興奮してしゃべるが、人が来そうなのでシッと黙らせる。
ヤモちゃんが外の方をじっと見て様子を窺い、『まだ来ないが、後数分で何人か降りてきそうだぞ、出口はあそこの一か所だけ、どうする、セーン』
『空ではドラゴン達が探し回っているな。この船に見当をつけているし、ひとまず逆にココモドラゴンの国に移動しようか』
すると、ココモちゃん、
『どーして、せっかく逃げて来たのにっ』
『ここから、皆でセピアに行くには遠すぎるんだ。本当は船に隠れて戻りたかったけど、このままじゃ人にもドラゴンにも見つかる』
『戻るんだったら、食い物のあるところだよ』
『それな、それが一番難問だな』セーンしばし考え中だが、名案が出てくる可能性が有るとでも言うのか『畑近くに移動したら、ココモはきっと何か食う。そして捕まる可能性が。近くに家があったら…食いに行くし…』
その時、ココモちゃん、挙動不審者になる。
『えーと、えーと、何だか食い物の匂いがする。セーンのポケットにっ』
ココモちゃんがポケットに飛び掛かると、ヤーモちゃんが人型になって、
『ドアホー、俺は食いもんじゃない』
と、ココモちゃんに殴り掛かった。ココモちゃん空き腹で応戦し、貨物を倒す。
ドタッ
「だれだっ、おい皆、誰か中に居るぞ。また密航者か」
セーンはため息をつく、
「見つかっちまったか」
「やだ、食い物が無けりゃ。さっさと国に戻ろう」
ココモちゃんのゴネにより急遽瞬間移動したものの、いったいどこへ行く。
ココモちゃんの瞬間移動に皆がついて行く形になり、着いた先は、今度は最初の着地地点、城の空き地だ。セーンは深く、深くため息をつく。
「どうなる、俺ら」
すると以外にも、
「あっ、ココモだっ」
好意的な声と共に、人型だと明らかにココモに似た男が、城の中から飛び出して来た。
ココモ以外は恐縮して、反省している風に俯き小さくなっていると、城の中から次々に出て来るわ、出て来るわ、ヤモとヤーモちゃん、ますます小さくなっていたものの、ヤーモちゃんは気まずさが頂点に達し、思わず、
「えーと先日はどーも」
と言いにくい話題を自分から言ってしまう。すると、
「いや、あれは俺らも悪かったんだ。いきなり大勢でやって来たら、攻撃しに来たと誰でも思うさ」
驚くような好意的な言い様、ヤモちゃん眉をひそめた。セーンも違和感を覚えた。
そこへ良い人風な微笑みの中年の男が出て来た。幾分か、自称王と言っていた男に似ている。ドラゴン皆親類と言った感じだ。
「セーン殿、先日我ら、大変な失態で迷惑をかけてしまいました。間者の使用人の仕業で、セーン殿に毒の入った食べ物を出してしまい、申し訳無い事です。毒を盛った奴を追いかけていて、セーン殿と行動してはいまいかと、一部の兵士がセーン殿の住処に押しかけ、失礼してしまいましたが、セーン殿は大事なく回復されて我ら一安心いたしておりました。こう言う事情ご存じないかと思いますので、滞在の時間がございましたら、我が国の事情などを説明させて欲しいのですが」
「はぁ、その件、少し興味ありますね」
セーンは此処に来てしまった以上、この場を利用しようと思った。
そんな、話合いの間に、ココモちゃんは割って入り、
「僕はご飯が食べたいです。セーンはこの前の嫌いですから」
と、要求する。かなりの時間待った状態だったので、成長したとも言える。
「おお、そうであったな。ココモには飯。これは鉄則だった。しばし待て、いや待てぬか」
その男は振り返り、そばに居た配下の者に、
「ココモに飯、何でもいいから取りあえずもってこい、凝った食い物は後で良いからな」
『ここも学習したな』と思ったセーンだ。
城内の応接室らしき部屋にみんなで入ると、ココモにはパンの様なもの他はお茶を出された。
セーンは前回、控室に通されて、お茶も出なかったなと思う。前とは待遇の変わった訳は、何だろうと思った。
皆を城に招き入れた男は、前に来た時は居なかっただろうと思うセーン。この気配は記憶にない。セーンは時々能力の開花を感じる。今日もこの場所に居るドラゴンの気配を、全体的に感じた。ココモちゃんの兄弟と、仲間だと思える。では向こうのドラゴン達は・・・、親類と言った感じだ。この城に居るドラゴンの方が血が濃いと思う。前回は、何故分からなかったのか、考えている途中から、例の男が話し出した、
「よろしいでしょうか、セーン殿。何か気がかりがお有りの様だが」
「いえ、どうぞ話してください」
「そうですか、名乗るのが遅くなりましたが、私はココモの母親の弟です。ケルと言いますが、王の後見をしています。この国の王は先王の長男。カツンです。先王とは先日セーン殿も死の間際に会っておられますね。最近は獣人国に捕らえられていましたが、最初は土ドラゴンとの戦いで負傷して、あの国の人質でした。その後、魔の国と土ドラゴンが戦い、休戦の印として、ココモドラゴンの王が連れて行かれました。ココモドラゴンは時々かなり強力な超能力者の様な者が生まれてくるのです。我が一族にも生まれて来て、必然的にその超能力を持ったドラゴンである姉が王となりました。しかし、能力はありましたが、戦いには向きませんでした。そしてこの有様です。ココモドラゴンの掟では、王がこの国から居なくなれば、その後、王になるのは居なくなったドラゴンの子供となります。というのも、その天才的能力は、次に生む一人の子供だけに伝わりますから、そうなりますが、子に受け継がれるのはこの回までで、その後は平凡な能力しかないドラゴンが生まれます」
「そうですか、しかし、先日違うドラゴン達に王と名乗る男の元に、連れて行かれたのですが、わりと老けた感じですから、先王の長男じゃないですよね。あなたより老けているようでしたけど、あの方は自称王で、本物ではないんですか。」
「ふふ、自称王で、本物ではないとは、よく言ったものだ。あなた方人間は実に言葉が巧みですね」
「そうなんですか、その自称王と、親類らしき人々は、どうしてココモを引き取りたかったんでしょうね」
「その疑問に、はっきりお答えしましょう。この、ココモちゃんも、どうやら先王の長男の能力と同じく、また可能性としては、それ以上の能力と、お見受けしたのです。自称王は自分の能力が大したことは無いのが分かっています。自分の地所だけ治めるのにはちょうどいいでしょうが、国王となると心もとないですからね。それで、ココモちゃんを王に仕立て上げ、自分はその宰相としてこの国の支配を企てました」
「へえ。という事は、今の王はココモの兄で、能力はココモと似たようなものだと言われているんですよね」
「そこへ、今までは自称王だった男が、ココモを王にしろと言い出しました。先王が人質になって国から居なくなった後、まだ能力を引きついでいる長男は生まれたばかりで、実際は王が不在な状態でした。私に王の後見の役を言い付けて去った先王ですが、その影響は無くなりつつありました。そこで私たちの叔父が、自称王を名乗ったのです。それで国は二分しました」
セーンは話を聞きながら、『なるほど、ココモはこの城の奴らにとっては邪魔な存在だな。前にここに来た時は、俺らは敵方だったんだな。それが形勢逆転した訳は何だろう』
彼は話を続けた。
「しかし、自称王の奴は失態を犯しました。まぁ、あまり利口ではありませんからね。セーン殿に毒を盛って、私どもの仕業に見せかけ、ココモを手に入れようとしましたが、失敗に終わりました。自称王は自分らの手の者が毒を盛ったことをセーン殿が勘付くと、予想しました。そして打つ手、打つ手が悪手です。そして、最後の悪手がココモの強制的人型化で、とうとう、ココモに拒絶されましたね」
「ですよね、見事な失策ぶりで、俺も呆れるし、そんなところへココモを連れて行った自分に腹が立っていますが、自称王一味のあまりの愚かなやり方には、興味があるんです。どうしてそんなに愚かなのか、何だか笑ってしまうんですが、何か原因が有るのではと思います。ココモを連れて帰るつもりですが、きっと追いかけてくるでしょうね」
「おや、連れて帰りますか。私どもに預けてはいただけませんか」
「しかし、あなた方にはココモは必要ないでしょうし、そもそも、邪魔な存在ですよね。何故欲しがりますか。またどこかの国に人質として渡すぐらいしか使い道ないのでは?」
「何と、私どもはココモの身内ですぞ。その言い方、不愉快極まりないです」
「はは、喧嘩でも吹っ掛けそうな話しましたっけ。しかし先日とは対応が違っていて、勘繰りたくもなりますけどね。そろそろお暇した方がよさそうですね。これ以上ここに居ると、もっといらん事言ってしまいそうで」
セーンは作り笑いを浮かべ、他の連れ達に、
『せーのであのセピアの船に移動するぞ。ココモ食うのは終わりだ。行先分かって居るだろな』
『分かっているけど、手つないでよ』
『あほう、勘付かれるだろ』
ヤーモに突っ込みを入れられ、睨み合う。セーンは構わず言う。
『せーの』
ココモちゃんはパンの塊をささっと口に入れたまま、消えることにした。




