第21話 晩餐後眠ったココモちゃんを置いて、ジュールと戻るセーン
大人だと宣言したココモちゃんは、引くに引けない気分になったと見え、行きたくないのだが、必死で虚勢を張った。皆と手を振って別れ、ヤモちゃんを涙目で見て、きりりと立ち去ろうとする。ヤモちゃんは生物的な造りによって笑えないのかと思っていたセーンだが、ココモちゃんには笑って手を振った。ココモちゃんはセーンを見ながら手を振り返し、笑顔の件は珍しいとは思っていないようなので、きっと今まで、セーンが見ていない所では、ヤモちゃんはココモちゃんに笑っていたはずだ。今日は感動することが多い気がするセーン。
ココモドラゴンの国に行く方法については、ドラゴン達は瞬間移動でこっちへ来たと知ったセーンは驚いた。そうなると、これで行先が分かっている者と一緒ならセーンも瞬間移動できるので、皆と一緒に瞬間移動出来た。楽に本当の自分の国に移動出来て、ココモちゃんは満足気だ。
セーンはニキ爺さんから忠告として、長居するなと言われていたし、ジュールを連れてとんぼ返りするつもりだった。
騎士隊長のタクルさんは察していた。セーンが他の皆と言って来るよ等の挨拶もしないし、荷物無しの手ぶらだ。
瞬間移動した行先は王の居る私室のようだった。何もかも偽物とは違う手際だ。少しふらついたセーンだが、何とか踏ん張り、人型の王を見たセーン。王はかなりのパワーを無意識に漂わせているようで、迫力満点だ。敵に回したくないタイプと言える。どういう事情でパワーを出しっぱなししているのか知らないが、セーンとしてはココモちゃんを帰せば用済みだ。セーンはすぐに帰る算段だが、
「セーン殿、礼を言わせてもらおう。この恩は返せる類のものではないのだが。我がココモドラゴン国の者共はセーン殿の配下に等しいと承知いただきたい。この先、我ら、必要とあらばセーン殿には直々テレパシーで呼んでもらえれば、直ぐにはせ参じよう。兵士不足の折には、必ず呼んで下されよ。息子とテレパシーで繋がっているお方よ。ココモドラゴンとテレパシーで繋がり会話できる人の存在などは、世界広しと言えど、今までは有り得ない事だったのですぞ。セーンと我が息子以外には。そして現在、セーン殿はココモドラゴンの誰であろうと、テレパシーで会話しようと思えば、必要な事を連絡できるはずだ。そして、この事は統治方針の違いから分裂した、あやつらに知られて居るやもしれぬ。いささか仲間割れしている事が悔やまれる。まさかあやつらは、この情報を土ドラゴンもどきに知らせはすまいな。と、考えてもどうしようもない心配の種が出来てしまった。もしも知られておればあの者共が、セーン殿を狙う可能性がある。今晩から我が一族、セーン殿の護衛がしたいものだが、承知してもらえるだろうか。直ぐにとんぼ返りをお考えのようだが」
「えー、良いんですかそんなに気易く配下宣言とかしたあげく、護衛とかの話なんかして」
「承知いただきたい。我らはそう申すしか道はない」
「はぁ、でもこっちは自分の面倒は自分で見るという育ちでして、もしも困ったことが有れば呼ぶことにしますよ。あまりそういう予想は無いですがね」
セーンがかなり重大な話をしているのに、話している間、ココモちゃんは、横に籠に入って飾り風に置いてある南国のフルーツを目にして、どんな味か想像して涎をたらさないように忙しく飲み込んでいる。なんだか南国のフルーツの話題については、デジャブ感がありそうなココモちゃん、自分を見ていると感じセーンを振りかえって、『だれかが、僕に果物やってサービスしようとしているけど、あの時は敵方の二人しかいなかったよね』と疑問点を指摘する。セーンも妙な感覚で、『そのはずだよね』と答えると、横に居たタクルさんが、
「えーと、さき程の王子達をさらっていた敵方の二人なんですが、一人で飛んでいた奴は私等の間者でして、役が終わって先ほどこの城に戻ってきておりましてな。彼は報告の時に、セーン殿が王子に南国のフルーツの話などをして気を紛らわしておいでだったと話していて、それでは王子が戻ってこられた時には、さっそく果物を差し上げたいと皆で申しておったらしく・・・」
「よかったな、ココモちゃん」
セーンはにやっと笑ってしまった。どうやらあの時のココモちゃんとセーンのやり取りはここのドラゴンさん達には筒抜けらしい。
王はその様子に、
「セーン殿にはココモの養育に、一方ならぬ配慮をいただき有難い事だった。王妃もきっと安心しているだろう。こういう機会はめったに無いであろうから、これから、ココモと晩餐などはいかがかな。そしてココモの主な親類と会っていただきたい」
そう言われてセーンは、ココモちゃんの親類達と食事とは気を使いそうで、これで帰りたかったのだが、ココモちゃんがお腹いっぱいになってうとうとし出したころ合いで、立ち去るのが一番良さそうな気がして、ちょっと諦めムードで、答えた。
「それじゃ、遠慮なくと言いたいけど、すぐ用意出来ますよね。ココモに『待て』はできませんよ」
「ははは、それも間者をしていた者から聞いている」
セーンは、ココモはきっと、ここで大事にされるだろうと分かって安心した。
晩餐の席にはジュールも居て、この国の様子を聞くことができたし、セーンが、晩餐に参加した人たちに、今までのココモの様子を話している時だった。お腹いっぱいのココモちゃん、とうとう、うとうとし出した。目論見どおりだ。良く計画できた成り行きに、周りのドラゴン達がそんなココモちゃんをにっこり見守っている中、セーンは王達にいとまを告げ、そっとジュールと共に、ココモドラゴンの国を後にした。
ジュールのドラゴンの友人がセピア公国辺りまで瞬間移動で送ってくれて、後は自分達でニキ爺さんの館へ瞬間移動して帰ってきた二人である。早々と夕食を終えた二人だが、ニール国では夕食は今からと言う時間帯である。皆でリビングルームで夕食待ちの所へ転がり込んだセーンとジュール。皆驚いて、
「わっ」
と叫ぶ。そして二人、互いの相方とも言える立場の伴侶に歓迎と言うより叱責の言葉を揃って受ける。どうしてこうなった。
「んもう、遅いですわ。セーン様。瞬間移動でお出かけのように見えましたのにっ」
「ちょっとジュール、あんた、生きているくせに死んだように見せてっ。あたしの前から居なくなるの、これ何回目?たいがいにしてっ」
2人は言い訳を、何とか口にする。
「えーと、これでも急いだんだからー」
「俺は別に、死にました宣言とかしていない。誰が死んだと言ったんだよ」
そこへ人数が増えた事を察した執事さんが表れ、
「まぁまぁ、皆様落ち着いて、セーン様たちは夕食はどうされます」
セーンは気が引けたが一応、
「えへ、ココモちゃんのパパが食べてけって言うから食ったし、もういらないよ」
「はっ、たったのあれだけで、食ったってわけ。俺はまだまだ食うよ。執事さん、俺はいつも通りでお願いします」




