第19話 セーン、ココモドラゴンの国に連れて行かれ、毒入り食べ物を食べて、急いで帰る
セーンはそろそろ到着だろうと、眼下の南国の島々の様子を見ていて思ったが、まだ飛び続け、この島々ではないらしいと分かった。ココモちゃんも、
『もうすぐ、違った』
文句を言っている。
『後、直ぐでございます。直ぐでございますから』
お兄さんドラゴン、必死で言い訳している。段々ご機嫌斜めになっていると見て取れる。ココモちゃん、辛抱の糸が切れそうだ。セーンの予想では、セーンの腕を離して、思わず文句を垂れるだろう、その時はもう一匹の足に捕まろうと思って構えていた。しかし、
『僕は、それほどあほうじゃないんだ』
『そうだったのか、もうかなり大きくなったしな。さすがココモちゃん。おみそれしました』
セーンはココモちゃんの成長をまのあたりにして、何だかしみじみして来る。親ほどの時間と手間をかけてはいないものの、成長した子を送り出すような気分になる。しかしまたココモちゃんの問題発言が、テレパシーで送られてきた。これ、お兄さんドラゴンも、聞こえているんじゃないのかと思うが、
『セーンが家に戻るときは、僕も戻るから。送り出されないからね』
お兄さんたちは空気を読んでいて、無言だ。きっとそうはさせないと思っているはずだ。
『セーンと家に戻るもん』
言い募るココモちゃん。
『分かったよ』
と言っておく。
その内、下は城下町風の様子になった。湖の中央に大きな美しい城があり、湖畔に家々が建っている。
城の中の比較的広い空き地に2匹で降り立つ。4、5匹ほどは同時に降りる事が出来そうだ。
掴んでいたココモちゃんを離し、一瞬で人型に変わった二人だ。その前にはココモちゃんはセーンを離し、
『もうすぐじゃなかった』
一応言いたいことを言って、2人を睨んだ。
「少し、休憩なさってから、王に会っていただきましょう。その後晩餐です」
2人は若いと思うが、セーンとココモちゃんの会話を聞き、学習している。食い物の話は、必須だ。
『僕は昼ご飯を食べて無かった。セーンもだ』
ココモちゃんの指摘が有難いセーン。王の謁見に空き腹は応える。
「では軽食を用意いたしましょう」
「すぐだからね」
「すぐ、お持ちいたしますから」
会話に段々慣れを感じる。
控えの間らしき所に通され、ソファでセーンは少し寛げたが、ココモちゃん、
ドアを開けると、
「食い物寄こせー」
と叫んだ。誰も反応しないと、
「食わせないなら、セーンともう帰るっ」
恐らく皆呆れているのだろう。『別に王子様の躾とかする義理は無いしな』と思うセーンだ。
怒りに任せて、ココモちゃんはセーンに、
「セーン、もう帰ろか。腹すいた」
「此処からは瞬間移動は遠すぎる」
「えーっ」
ショックは隠しきれないココモちゃんだ。知恵もあり、此処からは小声で、
「でもさっき家に戻ると言ったよ。どうやって戻る?」
「どうするかな。考え中」
ココモちゃん、絶望のご様子。ソファに横たわる。分かりやすい奴だ。そして、
「あいつらをのして、痛い目に合わせて、戻らせる」
計画は出来上がったようだ。むっくりと起き上がると、
「セーン、僕帰りたい。ヤコちゃんにも何も言わずに来たし」
「そうだね、ヤモちゃんはどうなの」
聞いてみると、
「ヤモちゃんとは分かれた。皆が反対するから、ヤモちゃんが困る」
セーンは、なるほどと思った。ココモちゃんは知っていたのだ。
ココモちゃんの怒りの叫びの効き目があったのか、セーンの予想よりかなり早く軽食を持って来た。あの二人とは別人だ。少し年配だろう。
「お待たせしました。王子様セーン様、軽食を済ませられましたら、この紐を引いていただくと、着替えをお持ちいたします。長旅でお疲れでしょう。軽く汗をお流しする準備も出来ております。軽食の後ご希望でしたら、ご案内いたします」
「いえ、それは遠慮しますから」
「はい、ではごゆっくりどうぞ」
あいつ、どういうつもりかなと思ったが、とりあえず食っておこうと思うが、これは何だろう。食い物らしいが、見た事の無いものだった。人が食って良い物だろうか。ココモちゃんは食い物と本能的にわかるのか。せっせと食べだした。
「おいしいか、ココモちゃん」
「うん」
「聞いても良いかな、俺のもココモちゃんと同じ物みたいだけれど。何かわかるかな」
「植物と何かの肉」
「うーむ、ココモちゃんの印象で良いけど、何の肉か分かるかな、食べた事あるもので、似たのがあるかな」
「セーンは食べた事ないだろうけど、オタマジャクシに似た味」
「げっ、それいつ食ったの」
「僕がお腹すいていても食い物ない時、ヤモちゃんが持って来た」
「食い物に不自由な事あったのか」
「僕すぐに腹減るからね。次の時間まで待てなかった」
「そうだったのか、気が付かなくて悪かったな。ヤモちゃんにも、黙って此処まで来ちまったな。俺も帰りたくなった」
そう言いながらセーンは、植物らしき所だけ食べることにした。そして、どうやって帰るか考える。
『あの島々、確かドラゴン保護地区とかだったはず。あそこまで行けば船があるかもしれない。行ってみるべきだろうな』
分からないが、ぽかんともしていられないだろう。それにしても、この食い物、何か調味料以外にも入っている物があると感じたセーンは、注意深くそれを取りのぞいた。ココモちゃんの食い物を調べても食い物以外は、何も入ってはいなかった。
『畜生、やりやがったな』
『どうするセーン』
『ずらかる。来るときに見た島に移動する』
『うん』
セーンはココモちゃんを掴んで、比較的大きな島に見当を付けて移動した。
「急がないと、すぐ追っ手は来る」
「うん」
「此処の船は見つかりやすいな」
セーンは海上の様子を探った。ついている、セピア公国の船が瞬間移動できる範囲に見えた。
「次、セピアの船に移動する」
「うん」
ココモちゃんはセーンが次行動を言うたびに返事をした。セーンはココモちゃんを見てみると、何だか知恵がついた感じがする。
「僕、セーンの帰り方覚えているんだ。僕はまたきっと捕まると思う」
「なるほど、他所の船に瞬間移動するときは、人がいない所に移動するんだよ」
「うん」
そして瞬間移動で、ぎりぎりの距離の、セピア公国の船に移動した。タイミングがギリギリだったのが分かった。十数匹のドラゴンが島の上空に現れていた。彼らも瞬間移動できる。しばらくセピアの船の中に隠れ、丁度自国に戻るようなので、距離を稼げた。セピアの船は高速だ。一晩で自国に戻るだろうが。港に着くと人どおりが多くなるから不味い。入港する前に、ニキ爺さんの家まで瞬間移動した。自分の家には、相当距離があっても移動は可能だ。目的地は家の台所だ。
ココモとセーンは勢いがついていて、台所の床にどてっと落ちた。
「痛い。うううっ」
「おや、セーン坊ちゃんとココモちゃん」
「飯くれ~」
「はいはい」
コックさんが急いで用意している間に、手伝いの若い子が、ニキ爺さんとユーリーン婆さんの部屋に走って行っていた。
「セーン様とココモちゃんのお帰りー」
叫びながらなので皆に知れる、実の所ヘキジョウさん達が察していて、家族面々に報告は行っていたのだが。
チーラさんは寝間着から部屋着に着替えるのに必死だった。ユーリーン婆及びクーラは寝間着のままだ。
セーンが昨日の固めのパンと、今朝用のサラダを食べようと口を開けた時点で、走るは、転ぶわで大騒ぎでやって来るのが分かった。チーラの声が珍しくも聞こえる、それも、
「ちょっと、退いてっ。私が先ですからっ」
あの人もここにすっかり慣れたなと思ったセーン。
「まぁっ、チーラさんったら」
クーラが叫ぶが、『チーラ、やれ、やれっ』と言う心境のセーンだ。パンをかじっていると、
バァ-ン
相変わらずの登場。『いいなぁ』家に帰った感じマシマシである。
「セーン、遅いじゃない」
このセリフ、今まで聞いた事はない。
「おやっ」
少し感動する。セーンの感情、一般人とは少し違っていやしないか。




