表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/57

第17話 古のヴァンパイアがセーンの家、獣人国の城を襲う。セーンが助けに行く。ニキの館に来た、レンの今までの事情説明

 

 声をからして、やれやれとニキ爺さんの館に戻ったセーンとココモちゃん。少し神経がピり付いていたセーンは、ここでも何だか異変を感じた。

 自室に瞬間移動していたものの、さっさと眠る準備は出来そうもない。この部屋ではないが、妙な気配がある。その気配を探すと、メイドの若い女性の部屋だ。数人で同じ部屋に眠っていると以前話のついでに聞いた事がある。

「若い女性狙いのー、何だっけな」

 と呟き、行ってみることにするセーン。ココモちゃんは頭の上で神経質そうに、足を動かしている。

 セーンは部屋の前まで行き、ドアを思いっきり開け放つ。

 バァーン

 衝撃の登場にふさわしい効果音だ。以前チーラさん達の登場で学習した。

 誰か知らないが、メイドさんの一人に覆いかぶさる奴。

「誰だっ」

 迫力満点のセーン。びくりとしたそいつが振り返ったが、セーンも悲鳴を上げそうになるが、プライドの様なものが湧き何とか叫ばずに済ます。

「誰かと聞いているんだっ」

 先ほどの勢いがまだあり、激しく問いただすセーン。明かりをつけてみるが、即、後悔する。かなりの衝撃の御面相だ。前に見たヤモちゃんの顔が可愛いく思えた。と思ったが、ヤモちゃんの顔に失礼だろうと思い直した。これは死人の顔だ。すでにしっかり死んでいる。動いているのが不思議だ。

「お前、死人か。死人に若い子の血は要らねーだろがっ」

 も一度セーンは凄んだ台詞を言い、

「とっとと失せろ。棺桶はどーした。入っていろやっ」

 〈随分威勢のいいお若いの。儂を知っておろうが、噂でもな。王の血を寄こせ〉

「あ、生憎この国には王は居ないんだ。どうしてもって言うなら、獣人国に養子にいったリーってのが以前王の地位に居たが。都合で養子に行ったからな、ここには王と名の付く奴はいないな」

 〈獣人国へ養子だと〉

「はいはい、そのようで、ここからだと、それほど遠くは無いですよ。国境はすぐそこだし」

 〈お前でも王になれそうだが〉

「王になれそうなやつと、王になった奴では、全く別物だからね。国境を越えて、2、30分も歩けば城ですから。1時間も移動しやしませんから、どうぞ王の方へ」

 〈親切心の無い奴、連れてこようとは思わないのか〉

「ついて来やしませんからね。オタクから行くべきです」

 〈ちっ〉

 舌打ちしたものの、余程王の血が欲しいらしく、王の居場所が分かったために立ち去った、噂の例の奴だ。リーの心配はする必要は無いと思えた。リーは自分の面倒は自分で見れるタイプだし。

 メイドさんたちはまだ被害には会っていなかった。そっと部屋を出たセーンは、このニキ爺さんの館に結界を張った。初めての作業だが、なぜかやり方は知っている。そして今日の仕事は終わったようなので、ココモちゃんと自室に戻るのだった。



 翌朝、チーセンとラーセンがセーンの部屋へ駈け込んで来た。セーンはパチッと目覚める。かなり珍しい事であり、異変に違いない。

「パパ、大変なんだ」

「大変だよー」

 セーンが聞く間でもなく、話始めると思えたが、大変の後が続かない。

「どうした。どう大変なのかな」

 気を使って優しく微笑みながら聞いてみる。この位しないと先の話に進みそうもない。

「あのねー、ママが獣人国に戻ったんだよー。危険なのに」

「僕たち止めたのにー行くって言って、行ったよー」

「どうして戻ったのかな。知ってるのかな。危険なのはどうしてか言えるかなー」

「ミーラ叔母さんとこに吸血鬼が襲ってきて、大変だって。ママは助けに行ったの。吸血鬼まだきっと居ると思う」

「そりゃ、大変だ。パパはママを助けに行く」

「執事さんが、朝ごはん食べて行けって言うんだ」

「それもそうだが、食いやすい物だろうな」

「オートミールだって」

「もっといいものが欲しいが、時間が無い。くそう」

 セーンは悔しがりながら、昨日も来ていた、辺りに散らばって居る服を着ていると、メイドさんが、

「新しい服をー」

 とか言って来るが、

「こいつくるってないかな」と思いながら食堂に行こうとすると、メイドさんは泣き出すしで、双子が付いて来る、

「パパ思った事言ってるよ」

 と注意してくれた。

「わかった。パパの代わりにお前らで謝っておいてね」

 食堂に行ってぬるめのオートミールを胃袋に流し込み。同時にチーラの気配を探す。

 ヤモちゃん達さえ遠慮しているのに、ココモちゃんが頭の上に乗った。

「ココモ留守番」

「ギュッ」

 時間が無いと思い、そのまま瞬間移動しようとすると、気の利くチーセンがココモを掴んだ。『偉い』と思う。


 チーラの気配がする場所まで、瞬間移動したセーンは危機一髪だった。ミーラを庇うチーラに正に襲い掛かろうとしていたヴァンパイア。思わず踵落としの技を使ってしまったセーンだが、後悔した。踵の下で何かがぐしゃりと潰れた感触がした。思わず飛び上がったが、潰れたのは思っていた通り頭蓋骨だった。

「ひぇー」

 思わず悲鳴を上げるが、ヴァンパイアは倒れている。もう一度死んだのか。

 気を取り直して、

「チーラさん、怪我は無いですか。言ってくれれば俺も一緒に行きましたよ。危ないですよ。単独行動など」

「助けに来てくださって、有難うございます。助けが間に合いましたから、怪我などしておりませんわ。ご心配おかけしてしまいましたが、ミーラが酷い目に遭っているので、急いで助けに来てしまいました。それにしても私に情報をコンタクトしてきたのは、死んだはずのセーン様のお父様でした。レン様とおっしゃるでしょう。時々王様の居場所に遊びにおいででしたから、私、気配を良く存じ上げておりましたのよ。ですから本当は生きておいでだと思って此処に来てしまいましたが、来てみればレン様の気配は有りませんでした。そしてミーラにヴァンパイアが襲い掛かろうとしている所で、とてもかなわない相手で、困ってしまいました。でもセーン様が助けに来られましたから、嬉しかったですわ」

「そう。でも、次はきっと俺と行動してね。いつも間に合うとは限らないよ」

「そうですわね。ごめんなさい」

「別に謝らなくて良いけど・・・ミーラさんが襲われるなんて想定外だな。だけどリーは何処へ行ったかな」

 ミーラさんが目をパチッと開けると、セーンの疑問に答えた。

「このあほうヴァンパイアに襲われそうになったら、本当はレン様だったんです。レン様が化けたリー様だったんですけど。レン様は噛みつかれてしまいましたわ。ヴァンパイアにかまれたらヴァンパイアになってしまうという言い伝えがあります。『しまった』とか言われてどこかへ行ってしまわれましたわ。私の本物の夫は何処へ行った事やら」

「なるほど、まったくもって何処へ行った事やらですよね。この辺りにはリーの気配はないですよ」

 セーンは辺りを探りながら、リーもレンもこの辺りには居ないのが分かった。これではミーラさんを守るものが居ない。

「チーラさんはひとまずミーラさんを連れて家に戻ってください。この辺りにはホントにレンもリーも居ない。此処にミーラさんは置いておけない」

「ミーラを連れて戻って良いのですか。ニキ様達はどう思われるでしょう」

 チーラは不安げだったが、

「爺さんが何を思うかって、最近は婆さんの意見に従っているけど、婆さんが何を思うかってのは、最近小さい方の孫の面倒を見るのに必死だから、他の事は構っていられないようだな、気になるような事は別にないよ。爺さんの家は使用人さんも、使い魔の壁の上一家も良い奴ばかりだから、気を使う事は無いよ。ミーラさんは安心して暮らせるよ」

「まぁ、有難うございます」

「俺はこっちで、リーとレンを探しているから、居ないと思ったらすぐ帰るからね」

「はい、お帰りをお待ちしていますわ」

 チーラはにっこりして瞬間移動で家に戻った。

 セーンは、『チーラ最近にっこりが多いな』とぼんやり思った。


 一方、ニキ爺さんの家では、ユーリーン婆さんの所へ、レンが戻って来ていたが、犠牲的精神の負傷と言えば聞こえが良いが、単なるへまと見た婆さん。

「まっ、どうしたの。レンともあろう者が、ヴァンパイアって動きが鈍いんじゃないの」

「言えてるな。まさかやって来るとは思わなかったんだ。リーが老ヴァンパイアに狙われているとか言って、奥さんも仕事も投げ出して逃げるもんだから、俺としては斡旋した責任を感じて、リーに化けて仕事とか色々やっていたんだ。リーは老ヴァンパイアの怒りを勘付いてな。恐らく王の地位の所為だろう。なんだか普通の奴には分からない情報が頭の中に来るようだな。俺としては、あの記録は昔話と思っていたが、本物だったようで、とにかくこの傷、何とかしてよ」

「はいはい、こっちじゃ、レン死亡説が出ていたのよ。リューンさんがレンの気配が無くなったとか言って。それに変な魔物があんたやジュールに化けてやって来ていて、皆でやっつけたけど、どういう事」

「それはな、獣人の国の向こう側に魔物の国が有って、地下のじゃなくて地上のがあるんだ。そいつらがココモちゃん狙いで此処に来たんだ。ドラゴン達は種類別に争っているようだ。ココモドラゴンと敵対しているドラゴンが、魔物にココモちゃんを殺せと命令したようでだな。それで此処にやって来た。奴らはなんにでも化ける。化けるのが得意なんだ」

 そこへレンが来たと知ったクーラが来て、

「それでさぁ、ジュールは死んじゃってるの」

 なんせ、死体無しの為いまいち、納得できないでいるクーラだ。

「ジュールは、以前から獣人国の王が気に入らなくて、命を狙っていたんだ。地下に攫われていた時、魔王だけでなくあの獣人国の王にも能力を吸われていたんだそうだ。それで、機会を得て、王を殺したんだが、その後、王の側近に仕返しで殺された。と言うふうに獣人国ではそういう話になっているが、ジュールは同じ目的のココモドラゴンの密偵とも付き合いがあってな」

「同じ目的?」

「あの王は、ココモドラゴンの女王を捉えていて、人質にしていた。そして家来で同時に捕まっていたドラゴン達を利用して戦争をしていたんだ。魔物の国と互角、それ以上の勝利の時もあったそうだ。結局女王は亡くなってしまい、その恨みを晴らしてほしくて、ジュールに近づいていたんだ。獣人国の王の情報を知らせていて、ジュールは殺害のチャンスを知って、この前、王は殺したな。その時側近に討たれてはいたが、軽症でね。その時の現場の流れで、ココモドラゴンに助けられて、そのまま彼らの生息地に行っちまったな。で、ここでは死亡ってことになっている。俺がジュールが襲われていると分かったときは、魔物の兵に似せた獣人の兵士だったが。その時もココモドラゴンの密偵に助けられていて、国境近くにまで行ったときに、俺は元気なジュールに会った。そこにヘキジョウさん達一行と、ヤーモちゃんが来たが。すぐに、ヤモちゃんが連れ帰ろうと追いかけて来たな。それから、ジュールが王を倒しに行くと言っているから。俺も付き合って、その後リーがずらかったから。俺は仕方なく代わりを務めたんだ。仕方なくだからな。そしたらその間に、偽物がヤモちゃん達とニールに行ってやがった。ざっと話すと、こういった所だ」

「ふうん、ママ。こいつは本物のレンなの」

「ちぇ」

「あはは、そう言いたくなるね。本物よ。あたしは、リーに化けてたって言う時点で本物と思ったけどね。さ、ヴァンパイアの毒も抜けたし。後はセーンのばた狂いを何とかしに行ってほしいな」

 クーラはここでセーンが話に出て来て、首を傾げる。

「セーンがどうしたって?」

「今、リューンが報告してきたけど、ココモドラゴンにぶら下がって、生息地に移動中よ」

「ふん。あっちにはジュールが居るし、帰る気になりゃ戻って来るだろ」

「ま、迎えに行ってくれない訳。チーラさんだって、セーンはすぐ戻るって言ったのに戻ってこないから、さみしそうよ。で、リーは何処に逃げてるの」

「あいつがどこで何しているかなんぞ。俺が知るわけ無いだろ。ヴァンパイアが居なくなったと分かったら、出てくるさ」

 そこへ、ニキ爺さんが来て、

「ユーリーン、ニーセンとユーセンの守はどうした。俺の靴を嚙みだしたぞ。腹を下さないかな」

「きっと、古の遊びじゃないかしら。大丈夫よ、慣れてるってば」




最近、《思いついて書く。即、予約投稿》の龍冶の作風炸裂の作品となっており、そう言う訳で推敲が足りないです。気が付いたら、分かりづらいストーリー展開が多々ありましたので、この回、長くなりましたが、レンの話すことで内容を付け足すことにしました。次の投稿で、『セーン、ココモドラゴンにぶら下がって、生息地に移動中』の話になります。レンの話を間に入れたので、順序がずれています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ