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第15話 セーンとチーラ、双子が国で魔力取られていたと知る。クーラのドラゴンの情報

 

 翌日ニキ爺さんとユーリーン婆さんは遅ればせながら、ジュールの葬儀は終わってしまったのだが、出かけて行った。おそらくクーラを連れて戻ってくるだろう。

 いつもはセーンの従兄弟は寝坊で遅めの朝食だったが、今朝はココモちゃんの叫び声で目覚め、

「今日から、俺らも早起きするしかないのかな」

 と言いながら朝ごはんを食べている。

 セーンの上の双子、チーセンとラーセンは興味深げに二人を見ていた。セーンはほぼ理由を知っていた。

 チーセン、とうとう話しかけることにしたようだ。

「あのう、聞いても良いですか」

「え、俺達に?何かな」

「何か音楽とも違う音が昨日の夜ずっとしていたけど、何の音ですか」

「いや、いや、あれで、一応音楽と違うかな。同じのが聞こえたんだな、ちょっとステージ上げたらなかなかだ。同じとこでミスるんだよな。わりーな同じのばかりで。今夜はきっとクリアするから。決心しているんだ」

 シューがキリッと言うが、双子は意味が分からずぽかんとしている。

 ジェイが察して、

「俺ら、テレビゲームの新しい奴をセピアから取り寄せたんだ。多分このニールでこのゲームを持っている奴は居ないな。君らはテレビゲームした事あるかな。て、ゆうか、獣人国ではテレビゲームは売っているだろうかな」

「そう言う名前のは聞いたことありませんから。売ってはいないと思います」

 ラーセンが答えた。

「じゃあ、参考までに見せてやろう。朝飯後、俺らの部屋に来いよ」

 セーンは一応親として釘を刺しておいた。

「見るだけだぞ。やりだしたら肩凝るからな。道場で練習していたことも続けろよ。肩凝ったら多分動きが悪くなるな。教える奴は居ないけど」

「僕たち最近は動くようなことしていないよ。集中力鍛えるとか言って、目を瞑って座っているんだ。つまらないからやめたかったんだ。こっちに来れて良かったな」

「はぁっ」

 思わず聞き返すセーン。言い方怖かったらしく。皆怯える。

 しまったと思い、にっこりして、

「何時から集中力に変わったのかな」

 と言うと、横に居たチーラも勘付き、

「何てこと。まだ小さいのにあんまりだわ。あいつ、死んで当然よ。いい気味」    

  とまで言い切り、涙ぐんだ。

 双子も、従兄弟も意味が分からず、おどおどするが、セーンもこうなったら言った方が良いと思い、

「あのくそ野郎の王はな、チーセンとラーセンの能力を吸い取っていやがったんだ。俺から引き継いだ力だけど、まだ小さいからそれほどは無かっただろうが。道場に行くのが嫌になったはずだ。くそうお前らだけ先にニールに行かせて、俺が始末しておきたかったな。あ、それにしてもあの偽ジュールはどうして王を殺したのかな。何処の回し者だったんだろ」

 皆に説明から、本人だけの考察へと話が変わるセーン。首を傾げだし、聞いていた皆も首を傾げる。

 チーラは下を向いて不謹慎な笑い顔をごまかす。それに気付いたチーセンとラーセンは。

「ママが笑うの初めて見た気がする」

 それを小耳にはさんだセーン、

「そんなバカな」

 と言いながら、何時笑ったか思い出そうとした。しかし、思い出すのはこっちに移動してからの、にっこりだけだ。そして結婚式の時のニッコリだ。

「あ、結婚式以来、わらってなかったかっ」

「ええっ、そんなバカな」

 従兄弟は驚く。

 セーンはつくづく、

「こっちに逃げてくる気になれて、ほんとに良かったな。それもこれも、ヤモちゃんがカスタマイズした卵を産む気になったおかげだな。ありがたや、ヤモちゃん。あ、そうだ、あの瀕死のドラゴンが俺に卵をくれたおかげだった。ココモドラゴンのボス、君はきっと天国に居るんだろな・・・ココモちゃんはしっかり育てよう」

「そうですわね」

「あ、俺ずっとしゃべっていた?」

「はい、どうしましたの。心の中で思っていらしたおつもりだったのかしら」

「ふう、ま、いいか」

「パパって面白いね」

 チーセンとラーセンが笑った。セーンは内心、

『こいつらもあまり笑った事なさそうだな。少なくとも、俺は笑い顔は見た事なかった』


 ニキ爺さん達は予想通り、クーラ叔母さんを連れてもどって来た。クーラ叔母さんがやって来たからには、なぜか騒々しくなる。

 ココモちゃんの件は、人間以外の生物は届け出る。と言うニール国としての法律があることを、クーラから聞いたセーン。だが、使い魔的なものは除外されている。

 それで仕方なく、今まで法律違反していたけど知らなかったのでと申し出て、ココモちゃんはペットあつかい枠にして届けておいた。

 セーンは届け出の時、知ったのだが、この星の南の言わば赤道近くにある島々の中に、ドラゴンが生息している島があるそうだ。ドラゴン保護地区になっている。しかし種類は明らかに違うという事だ。ココモドラゴンはセーンとしては2匹しか見た事は無いから、何とも言えないが。その島に生息しているドラゴンは、黒い色ではないという事だ。では何色なのかと気になるところだ。保護国に聞けばいいのだろうが。まだ聞けそうも無かった

 セーンは届け出の帰りにリューン叔父さんの家にココモちゃんを連れて行くと、ココモちゃんは、何故かリューンが気に入ってしまい、帰って来た後毎日、セーンが朝まどろんでいる内から、今日は、リューンの所へ行くときめているココモ。

 そうそう、毎日は行きたくはないセーン。しかし、南の方向に向かって、うるさく鳴きながら、セーンをつつくココモちゃんだ。鈍い奴でも、その意味するところは分かるというものだ。

 クーラ叔母さんが、一家で一番ココモちゃんの鳴き声に逆らい、朝のお目覚めが遅いのだが、ある日、虫の居所が悪かったのだろうか、

「セーン、このあほドラゴン、何とかならないの。安眠妨害よっ」

「大人じゃないね、クーラ叔母さん。そんな文句なんかいうやつは他には居ないよ」

「いっそのこと、リューンさんにあげたら。リューンさんだって気に入っているわよ」

「気に入っているだけだよ、俺としては親ドラゴンと、最後まで面倒みると約束しているんだ。そう言う訳で絶対リューンさんには渡さない」

「そうね、あんたもやっと本気になる事ができたわね。ところでセーン、あたし、そのドラゴンについての情報、多分あんたが知らないはずの事、色々有るの知ってるのよ。どう、聞きたい」

「聞きたいに決まってるだろ。もったいぶらずに言ってよ」

「ホント、あんたって、ココモドラゴンの話題は食い気味ね」

「分かっているよ。自覚有る。だから言え」

「ふふん、あのねぇ、あたし、城に居たとき城の蔵書、色々見て、一時期はドラゴンにはまっていたの。獣人国が本当の生息地じゃないの。最近あんたも聞いたらしいけど、赤道付近にあるドラゴンの保護国ね、あそこにココモドラゴンの生息地もあるのよ」

「何だと、じゃあ、ココモちゃんは孤独な最後の末裔じゃなかったんだ」

「驚いたみたいね。じゃもう1個爆弾落としたげるわ。そこに居るドラゴンたちはね、魔力だって持っているし、なんと人型になる事が出来るそうよ。ヘキジョウさん達みたいなもんでしょね」

「な、な、な、な、にー」

「まだあるのよ、あたしの解釈ではね、やっぱりヤコちゃんはココモとヤモさんの子だと思っているわ」

「どーして」

「だって、あのボス的ドラゴン、セーンが国に来たと分かって逃げだしたんでしょ。必死だったはず。きっと、ココモちゃんの代で終わらす気なんかないはずよ。子作り能力をいちばん特化して癒してほしいはず。だからセーンの癒し能力を当てにして、逃げ出したはずよ。それと人型に変化できる能力を取り戻したいんだと思う。人型になれるようになったら、絶滅の危機になった場合の対処としては、どの種類の生物とだって、愛があればお付き合いしますってとこじゃないかな。それでやっと、相思相愛的相手のヤモちゃんが居て。子作りはまだ、翼が育った後からです。当分できませんて言うの。目的に沿った癒し効果とは言えないんじゃないの。セーンだってココモちゃんがずっと一人ぼっちで、生きて行く事なんて、望んでないでしょ」

「そうだね、このままじゃ可哀そうだ。だけど、壁の上一家の掟の中に、ドラゴンと付き合うのは御法度だというのがあるそうだ。おれ、後から思いついたんだけど、そういう掟があるって事は、以前は付き合うやつがいたって事と違うか、でも、掟が出来たって言うのは、何か不味い事があったんだと思うな」

「そうね、不味かったのよ。もしもよ、ヤコちゃんが本当にココモちゃんとヤモちゃんの愛の結晶だった場合、考えられる問題としては・・・」

「クーラさん、まだそこにこだわる訳?俺、カスタマイズって事で話付けたのに」

「そりゃ、そう言っておかなけりゃ。それは事実です、なんて言ったら、ヤモちゃんがボロカス状態にされるからでしょ。でも、最初はヤモちゃん、ヤコちゃんの事、ココモちゃんとの卵ですって言い切っていたんでしょ」

「うん、そうだった」

「で、ヤコちゃんを見て、御法度と言われる現象は思い当たるかしら」

「ちょっと、思ってもわからね」

「まぁ、セーンには無理かもね。あたしが見たところ、ヤコちゃん全くココモドラゴンに似てないでしょ」

「そうなんだ、だからカスタマイズだと思ったんだよ」

「あたしら人間に関していえば、ちっとも父親に似てないとか、母親に似てないとかの場合、遺伝できなかった。と言う事よね。つまり親の良い遺伝子を受け継げなかったって事よね、普通、子供は親の良い遺伝子を受け継ぐのよ、両親に良いのと悪いのとが同じタイプの遺伝子の中に有ったら、良い方をチョイスするのよ。自然の摂理よ。でも、親の良い遺伝子をチョイスできなかったら・・・つまりすべてをランダムに選んで行ったら、その先ってのは、滅びじゃない?つまり親の良い遺伝子を受取るとは限らない子が、出来るというのは、もっと言えばドラゴンの遺伝子を受け付けないとしたら・・・ドラゴン的に見てもヤモ一家的に見ても、アウトって事よ。あたしはこの事が御法度の真相だと思うの」      


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