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第14話 ヤーモちゃん成長、戦える。 魔物とドラゴンとは掟で禁止。ココモ空腹

 

 そもそも、リューン叔父さんの話によると、レンの気配もないそうだから、使い魔諸共何かにやられて、どちらも死人らしい。

 セーンは内心、レンの使い魔っぽいのが側に控えているのに、どうやって正体を暴いて始末できるのか疑問だ。ヤモちゃんが、『そっち行こか』とコンタクトしてきた。セーンも『助太刀に来い、使い魔頼む』と言っておいた。すると、ヤーモちゃんが、『レン担当しょか』と言って来た。『出来るのか』思わず言うと、『僕、つおい』ちっとも強そうにない言い草だが、どんなお手並みか見たくなって、『じゃ、頼む』と言っておいた。

 皆はジュールは変と言う認識と言うか打ち合わせらしいから、セーンはしれっとジュールに近づき、

「クーラんとこ、戻らなくていーの。ジュール」

 と、意見を言いに近寄った風にして、首を圧で切り取った。すると、驚いたことに、中からウジ虫風のが沢山飛び出して、セーンは思わず悲鳴を上げ、飛びのいた。

 すると、レンが大口を開けて笑い出す。表情がかなり不気味に思える。そこへヤーモちゃんが壁から飛んできて、おそらく少し前から、リビングの壁に張り付いていたらしく、人型になったと思ったら、あっという間にレンの首を転がした。まだウジは居なくてほっとするセーンだ。

 レンの使い魔は本物ではなく、見る間に見かけが奇妙な生物に変わって来たが。ヤモちゃん、担当なので外に放り出して始末してくれた。情けないが、セーンはあまりグロイてのは苦手だ。

 騒ぎを聞きつけて、ニキ爺やユーリーン婆がやって来た。おまけにココモちゃん及び、ヤコちゃんまで付いて来ていた。

「まっ、何、こいつら」

「セーン、リューンから聞いたんだな。俺も何日か前、話を聞いていたから、レンやジュールの声がしていて随分はっきり話す霊魂だなと思ったんだ」

「あは、爺さん達、先に休んでいて良かったよ。鉢合わせはいくら何でも気まずいだろって思ったね」

 ユーリーン婆には、

「気まずいってー」

 と呆れられた。そして、

「でも、レンは諜報部員の時、レン死亡したかも説が2、3ヶ月おきに広まって、結局生きてたって事分かっていたのよ。いつもよ。だからあたしはレンの死体見るまで、信じないの」

「じゃ、この死体は、本物じゃない訳」

「そうよ、見た目もだけど、死んだ時期が違うじゃない。死んでるなら死体は同じくらい傷んでなけりゃ」

『婆さん場慣れしているな』 と思ったセーン。

 ココモちゃんと、ヤコちゃんは、セーンに甘えに来た。頭や肩に乗って来たが、ヤモちゃんには不機嫌にしていたので、近づかない。

「ちぇっ」

 また不機嫌そうにしたので、このままでは、当分寄り付かないだろうとセーンは判断し、

「ヤモちゃん、来てほしいんだったら、愛想よくしなよ。こいつら、きー使っているだけじゃないかな」

 ヤーモちゃんは、ドラゴンたちに混じって甘え、セーンの反対側の肩に顎を乗せた。すると、ココモちゃんはマネして肩に嘴を乗せた。ヤコちゃんは頭の上に今度は移動し、座り込んで寝ようかと言った風情になった。これは不味くないかと思うセーン。

「眠そうだな、皆。じゃ俺、部屋に行くよ」

 リビングルームから出て行こうと立ち上がると、ヤーモちゃん、

「まだ言う事あったんだった」

「明日じゃダメなの。こいつら寝ちまいそうなんだけど」

「すぐ済む。ほんとかどうか知らないけど、リーが『魔法使いが、予言した。空から滅びの悪魔がやってくる。それまでにこの国が世界を統一しておくのだ』だってさ。ほらだよね。それにほぼ、筋肉馬鹿の国が世界統一は無理だよね」

「ほらと言うか、ヘキジョウさんを自分らの国に呼ぶ、口実と違うかな」 

 セーンは思いついて、その件の見解を言っておいた。内心『ほらかどうかは、何かが来たら分かるさ』と思った。この言い草、口に出して言わなくて良かったと思う。もし本当に来たら、セーンは予言も出来ると噂されるはずだ。


 リビングルームでは今にも眠ってしまいそうにしていたヤコちゃんだが、セーン用の部屋と書いた木で作ったカードがぶら下がっている部屋を見つけて中に入ると、途端に活発になった。ヤコちゃんもココモちゃんと同様、芝居ができるとわかった。

 やや広めの寝室は、ヤコちゃん仕様の飛行訓練場所の様だ。

 かなり速いスピードで天井付近をぐるぐる回っている。このままでは、ココモちゃんの方が早く眠りそうだ。

 しかし夜に暴れる子がよくやる悲劇が起こって、ヤコちゃんはシャンデリアに派手にぶつかり、落ちて来た。ヤコちゃん生まれて初めて哀れっぽく鳴く。

「キュヒューン」

 怪我は無いようだが痛いのかもしれないと、癒してやったが、それでも続く。

「キュヒューン」

 セーンは察した、

「これは親を呼んでいる声だろうな。わざと落ちて来て、哀れっぽく鳴いているんだ。俺らと寝るよりヤモちゃんと寝たいんだな。ココモちゃんもそう思うだろ。しっかし、来そうもないぞ。見放されたな、ヤコ。アハハ」

 気楽に大口を開けて笑っていたセーンだが、ヘキジョウさん達の雰囲気が違う事に気付いた。

「何だか争っている感じだけど、仲間割れか。皆仲間内じゃ、穏便に済ませそうだったのに」

 セーンはココモちゃんとヤコちゃんの側に居なければならないと感じていたので、気になったが様子見に行くことは出来ない。

「ヒューン、ヒューン」

 ヤコちゃん、哀れっぽさマシマシで鳴く。

 そこで、セーンは思い至った。

「ヘキジョウさん達、ヤモちゃんを怪しんでいるのではないかな。ユーリーン婆だって感じが違うと言っていたし。確かに何かヤモちゃんは思うところありそうだったけど、ヤモちゃんで間違いないのに」

 セーンは少し心配になったが、部屋から出る訳にも行かないので、

「ま、しばらく小突いても、何も出て来なきゃ、本物だってわかるだろ」

 と思っていると眠くなるしで、気が付いたら朝だった。

 育ち盛りは餌を求めて朝は大騒ぎだ。そういえばココモちゃんとヤコちゃんは昨日は神経質になってあまり食欲は無かったなと思う。

 セーンは急いで台所へ食べ物を調達しに行くことにする。ドアを開けるとココモちゃんは最近では一番の走りっぷりだ。ヤコちゃんは天井近くを飛ぶが、昨日学習したようで、ライトやなんと、監視カメラさえある障害物多めを避けて飛んで、ココモちゃんを追いかける。そんな途中で、見た事もないご面相の奴を見かけて揃って立ち止まった二匹と一人だ。

「ヤモちゃん?」

「ああ」

「どしたの」

「知っているだろ。薄情にも来てくれなかったな」

「本物ですからって、言いに行った方が良かったって。でも、そんなになる前に皆分かっていたんじゃないか。魔物なんだし。なんかヤモちゃんが皆の気に障る事、言うかするかしたんじゃないか」

「何かしでかしたと思っているのか」

「しでかしていないの。してないんだったら。今から抗議してやろう。どうなんだ?」

「『ドラゴンと魔物は付き合ってはならない』という掟があるらしい」

「あー、その件な。だけど、俺思ったんだが。昨日の夜、俺の従兄弟のシューとジェイが言っていたけど、ヤコちゃん、お前が卵を何と言うか、カスタマイズしたんじゃないのかって話していたが、よく考えたら、俺もそうじゃないかと思う。ほら、レン似の顔にして生んだ奴が居たじゃないか。ヤモちゃんもドラゴン風にして生んだんじゃないか。ってのも、ココモちゃんまだ翼成長してないだろ。何日か前に読んだドラゴンの本の中には、翼で飛べるようになって、番いを探しに行くって書いてあったから、まだ子作りは出来ないはずだろ。ココモちゃんがいくら寝込みを襲って来たにしても、そんな真似してみただけで、生物的にまだ無理だと思うな」

「ほう」

「そう言う事」

「それ、昨日言いに来てほしかったな」

「あは。俺、掟の話とか知らないし、きっとヘキジョウさん達はヤモちゃんが違うやつが化けているんだと思って、正体暴こうとしているのかって思って、そのうち気付くだろうと思ったんだよな。眠いし」

 話していると、ヘキジョウさんのガタイの良いのが来て、

「坊ちゃん、今の話は本当ですかい」

「あ、本に書いてあったのは本当だよ。ヤコちゃんはヤモちゃんがカスタマイズして生んだんだと思う。と言うのも、ココモドラゴンには似て無いだろ、全然。だから俺、不思議だったんだ。昨晩、俺の従兄弟がヤコちゃんを見てすぐそう言っていたから、冷静に観察したらそういう結論なんだと思う」

「そうですかい。それを聞いて俺も安心しましたよ。ヤモ、悪かったな。かんべんな」

「ふん」

 セーンが癒して普通の状態に戻したら、ヤコちゃんは親と認識して、喜んで頭に乗った。

「空腹より肉親愛を取ったね、ヤコちゃん。昨日もヤモちゃんを呼んで初めて声出して鳴いてた」

「それで、連れて来なかったって」

「うん、ココモちゃんを一人に出来ないからね。寝てたから」

「だけど、今居ないぞ一人と違うか」

「あ、台所に行ったんだ。空き腹だったからな。ヤコもだよ。連れて来てよ」

 と言っておいて、セーンは台所に走った。

 ココモちゃんの飯くれのほぼ叫び声が、家中に響いた。

「こりゃ、耳栓が居るな。平和な奴」



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