表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/57

第13話 ジュール、チーラの父、獣人王を殺したのをチーラ知る。死人の帰還?

 

 ユーリーン婆は小さい方の双子が寝入ったようなので、

「じゃあ夜も更けて来たし、メイドさんたちも部屋の用意は出来たんじゃないかしら。上の階の気に入った部屋で寝てね。シューとジェイは一緒の部屋にして、大勢さんだから、一人一部屋の待遇は無しよ」

「だろうね、はいはい」

 そういって、皆2階か3階に行こうとしたが、セーンは困った、

「お婆ちゃん、俺らもかな」

 と、今日、一番の珍妙な台詞が出た。

「あら、今まで別だったの」

「うん、そして今現在、ここ一番の危機になっている」

「あんたがいくら危機だって言っても、チーラさんはもうすぐギャン泣きになりそうな雰囲気よ」

「いえ、私、大丈夫ですわ。双子の面倒を見ないといけないので。今日から乳母は居ませんもの。私、双子と一緒に寝なければ」

「それもそうね。ところであんたたちさっきからその小さい方のを、双子、双子って言ってるけど名前で言わないの?」

 セーンは、

「あ、一応名前は付けたよ。確かに付けた。爺さんと婆さんにあやかって、ニーセンとユーセンにしたけど。なんだかあまり行けて無い雰囲気で。乳母さんの受けとかがね。いい加減さが出ていたかな。で、誰も名で呼ばないんだ」

 とか言い出した。

「えぇっ、信じられない。そう言えば、『セーン』もあんたのママが名付けたらしかったわね。あんたもレンによく似てる」

「最近つくづく、自分でも思っているよ。じゃ、ニーセンとユーセンで良いんだよね。こっちに乳母は居ないし。名前呼ぶよ。チーラさんはどう、いやだったらあだ名とかのアイデア出してね」

「いえ、いやじゃないですわ。その名が良いです」

 ユーリーン婆は、目をぐるっと回した。

「あたしは何も文句言わないから。チーラさんがそれで良いんなら、構わないでしょ」

 ニキ爺さんは、

「ユーリーンや、周りがあまり口出ししない方が良いな。そっとしておこうよ。もう寝るぞ」

 そう言って、すたすた自室に引き上げるので、ユーリーン婆もニキ爺さんに続く。

「良い子ばかり居て、これだから」

 ため息をついて爺さんを追いかけた。

 二人最後までリビングでぐずぐずしていたが、そろそろ自室に引き上げた方が良いかもしれないと思い、ヤコちゃんの籠を持ち、うとうとしているココモちゃんに声をかけた。

「ココモちゃん、部屋に行こうか。ヤモちゃんはまだ帰りそうもないんじゃないか」

 ココモは

「ギュッ」

 とおそらくさえない気分を表現して、セーンに付いて来る。

「チーラさん、上に行かないの」

 動こうとしないチーラに声をかけたセーンだが、チーラは

「私のあの愚かな父親は、それでも私の親だったんですけど、今、きっと、迷惑をかけた誰かに報いを受けているようですわ」

 いつもと違うチーラの様子で、セーンも察してしまった。

「俺らの仲間の一人に殺されたのか。チーラさんは透視能力が有ったの」

「いえ、多分肉親相手の本能のようなものと思います」

「俺らに、思う所とか有るのか」

「あの親がやった事が原因ですから、仕方がないとは思います。でも、顔を合わせて平気かどうか、分かりませんわ」

「誰に殺されたか見えたのか」

「見えましたけど、どなたか存じない方ですわ。セーン様にとてもよく似ていらっしゃるから、驚きましたが、随分お年が離れていらっしゃるから、御兄弟では無いですね」

「あ、分かった。だけど、あいつ、随分思い切った行動に出たな。意外だった。此処に住んでいる奴じゃないから。最近結婚した叔母の相手だ。顔を合わすことはめったに無いんじゃないかな。我慢して此処に居てくれないかな」

「どうせ、行く当てなど無い私ですもの。置いていただけるなら、ずっとお側に居ましてよ」

「ずっと何処にも行かないでね。俺の側に居てくれないと、ばらばらな家族って言うのは、こりごりなんだ。薄情で身勝手だな俺って」

「私の父親程ではありませんわ。私、お先に休ませていただきますわ。皆さん、すぐ戻られますわ。此処でお待ちになるでしょう」

「あ、そうだな。今、戻って来たようから、気まずい奴がいるから、チーラは部屋に行った方が良いな。お休みチーラ、ずっと側に居てくれるから、嬉しいな。で、しばらくこいつらも部屋においてくれないかな。」

「はい。喜んでいただけて私も嬉しくなりました。ではお先に休みますわ。ココモちゃん、ヤコちゃん一緒にねんねしてちょうだい」

 元気が無かったチーラだが、少し微笑んで部屋へ行った。ココモとヤコ、チーラに珍しく誘われて興味深げについて行く。何か良いものが出てくるとでも思っているようで、妙に人間味が出ることのある2匹、不思議な生き物である。

 セーンは何度も自分の側に居てと願ったが、それと言うのも、チーラに此処に来る直前、随分辛くあったったと思っていた。チーラの心情を考えると、セーンは少し反省と言うより不安を感じたのだった。

 そんな時、玄関からどやどやと大勢入って来た。

 セーンはリビングのドアを開けると。大人になった様子のヤーモちゃんが走って来た。

「セーン、僕会いたがったんだ。すごく」

 飛びついて、抱きつくと、

「それで、獣人国の兵の加勢をしろってリーが言うから、ホントはしなくて良いんじゃないかと思ったけど、セーンに会えるかもって思って行ったんだ。そしたらセーンは僕らと入れ違いにニールにいっちまったし、ヘキジョウは怒るし、困っていたんだよ」

「だろうな。ヤモちゃんはヤーモちゃんに、自分の代わりの仕事しろとか言ってなかったんじゃないかな」

「そう思う?セーンも。だけど皆は、ヤーモが代わりになるって思っているんだよ」

「そうなんだ。と言う事は、ヤモちゃんがはっきり言っておかなかったからじゃないかな」

「はぁーっ、皆、俺の所為だって言うんだよな、セーン。俺が悪いのか」

「あは、ヤモちゃん、最近ふてくされを覚えたな」

 冗談言いながら、セーンはヤーモに『どうした』と聞いてみた。すると、『皆、様子が変。獣人国に居る魔法使いが、何か僕らに仕掛けている。ジュールが獣人国の王を倒した。そんな事予定になかった』

『うんうん、俺が様子を親父に聞いてみるよ。ヤーモちゃん達はもう寝ろ』

 ヘキジョウさん達が部屋を出た後、セーンは親父にどういう事か聞こうと思い、ふりかえった。親父の使い魔の様子から、ジュールはどうやら様子が違っているようだ。

 セーンはふと思いついて、リューン叔父さんに聞いてみることにした、先日のコンタクトよりも近くなっているし、素早く聞いた。『リューン叔父さん、ジュールさんの様子が変だと皆感じているけど、彼、どうなってるの』

『セーン、変な事を聞くなぁ、ジュールは先週死んだだろ。知らなかったのか。レンが連絡してきたが、2人の軍隊の隊列に妙な生き物が襲ってきたとレンが言って来た。獣人国の依頼で魔族との国境まで軍隊を引き連れて移動中だった。見知らぬ所を通るから瞬間移動はしなかったんだが、その方が、仇になったな。仮眠中に急襲されたんだ。襲ってきた奴らは、レンとジュールを狙っていて、ジュールがやられたのに気付いたレンが俺に助けを求めて来た。俺はすぐレンの居る所へ行ってみたが、襲って来た奴らは既に逃げているし、ジュールはやられて既に気配は消えていたんだが、死体も無くなっていた。レンの方もかなり深手で、使い魔達がユーリーン婆の所へ連れて行くと言って、国境近くまで隊列を戻したんだ。そして、レンには一応今日の日付を、葬式の日として教えておいたんだが、そっちは誰も葬式に来なかったな。クーラだけ来たが、自分の夫で主催者側だからな。それにしても、こっちにはレンの気配が来ないんだが、どうなって居るんだと聞きたいところだ』かなりな情報を、素早く叔父さんはコンタクトしてきた。

 セーンは途方に暮れた。レンとジュールは獣人国で何かに襲われていた。そして、リビングのレンとジュールはかなり親しそうに寛いでいる。

 セーンはジュールに言ってやりたい。『クーラはつれないのか、ジュール。だけどお前、死んでいるそうだぞ』

 しかし、この雰囲気でジュールの始末が出来るだろうか。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ