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第11話 チーラ、王の企みを言う 獣人国の噂ではセーンは能力計測の水晶が真っ黒。帰郷

 

 チーラを連れてココモの部屋の前で、

「チーラに見せるから」

 と言いながら入ってみると、

 ヤモちゃんはセーンが言ったにも関わらず、あわててヤコちゃんをクローゼットに入れようとしていた。

 ココモちゃんはヤモちゃんを隠すように見た目は意味なく成長不足の翼を広げ、周りをうろついて誤魔化そうとしている。いい連係プレーと言えるが、練習でもしていたのか。

 セーンは、

「だから、見せておくんだって言っただろ」

 と言うと、ヤモ及びココモちゃん、悲壮感を出してセーンを見る。チーラは、

「あら、私は何を見てはいけないのかしら」

 と言うが、

「いや、俺は見せておこうと思う。チーラさんが協力しないと多分隠せないってば。ヤモちゃん、紹介してやりなよ。国の婆さんが何か発表する時は、よくこう言ったな。パンパカパーン、パパパパンパカパーンみたいな感じ。合ってたかな。ヤモちゃん」

 ヤモちゃん、仕方なくクローゼットからヤコちゃんを出した。チーラはそれを見て、驚き、

「まあっ、っこれは・・・、何て事なの」

 と、涙目で口元を押さえた。

 その反応、セーンは違和感を覚えた。

「多分驚くだろうと思ったが、ちょっと予想とは印象が違うな。チーラさん、どういう事」

 まずいと分かっていたが、言い方が鋭くなったセーンだ。

「だ、だって、こんな事になるなんて、ヤモさんとココモちゃんは全く種が違うはず。それなのに・・・あの魔法使い、パパがニールの地下に住む魔法使いを城に連れて来たのよ」

 そこまで言うと急に泣き出すチーラ。

「何、意味わからないんですけど」

 セーンが鋭く言うと、ヤモちゃんが、

「セーン。言い方怖いぞ」

 と、指摘する。

「ごめん、チーラ。俺らに分かるように言ってね」

「ううん、いいの。きっとセーン様はすごく怒り出すわ。そういう話よ。パパが王様になったら、酷い事ばかり思いつくの。レン様の息子がすごい能力だって噂になっていて、計測不可能って聞いたら・・・」

 セーンはまたその話かと舌打ちしそうになって、ヤモの視線を感じ、大人しく聞く。

「そしたら?」

「ええ、その話を聞いて、パパはその能力が欲しいって、この国の老賢者に相談したの。この獣人の国はほとんど馬鹿っぽい人しか居ないんだけど、その代わり時々物凄く利口な人が生まれて来て、歴代の王様はその利口な賢者と呼ばれる人の言うとおりに、国を治めているの、私の父親は国王に腕力で上り詰めたけど、頭の中も筋肉みたいで、いつもその老賢者にどうすればいいか聞くのよ。分からなかったら、王様なんかやめちゃえば良いのに」

「ふうん、チーラも困ったんだね」

「ええ、で、パパはセーン様の能力が欲しいって、老賢者に相談したら、双子のどちらかと結婚させて、国に住まわせて、子供を作らせたら彼の能力がほぼ手に入るって言ったそうなの。あたし達はそんなこと全く知らなかったのよ。ほんとよ。そして北ニールの地下に住んでいる魔法使いが優れているから、捕まえて来いって言われて。賢者にね。そして、捕まえに行ったらレン様が丁度地下の魔族と戦争していて、それで簡単にその魔法使いを手に入れたの。そしてパパはその魔法使いに、あたし達にセーン様を誘惑して国に連れて来て、2人のどちらかがセーン様と結婚して子供をたくさん作れば良いと言われたの」

「何だって、レンの冗談じゃなく、王の考えだったって」


「そう、魔法使いに聞いたとおりにしたの。そして連れてきたら、魔法使いが、魔法のと言うより魔術で、あたしたちが子だくさんになるように城から魔術を飛ばしたの。魔法使いに、セーン様が直接会ったら企みがセーン様に分かるんじゃないかって言い出して、それほど強力な能力だって言ったの」

「誰が?」

「よく知らないけど、噂になっていたわ。北ニールの城跡から出て来て、王様、すぐに伴の獣人達と国に戻ったわ。直ぐにあたし達にセーン様を誘惑しに行けと命令したわ。そんな時期、王様が飼っていた最後のココモドラゴンが逃げ出したの。瀕死でずっと故郷に帰りたがっているようだったけど、卵をもうすぐ産むはずのドラゴンだったし、あのドラゴンがココモドラゴンのボスだったから強くて、毒にやられているみたいだったけど生きながらえていたの。卵を産む時期が来ていても産まずに、瀕死になっていて。探すまでもなく故郷に居たんだけど、体温も低くなって呼吸もほとんどしていないから、飼育の役の人が、置いて帰ったって。皆、何故産もうとしないのか不思議がっていたけどセーン様が卵を拾ったから、腑に落ちたわ。この事を知っている人はみんな思ったわ。セーン様に拾ってもらうために、産まずに生きながらえていたんだわ。セーン様もそう思うでしょ」

「んー、そこんとこは俺には分からん」

「そうかしら、とにかくそれからはセーン様が体験したとおりよ。ココモちゃんの利口さには驚いたわ。セーン様もこの事は思ったでしょ」

「まあ、俺の言う事を良く理解しているなと思ったな。分からないふりしている時があるみたいだったな」

「そうよね、それに、あたしを嫌っているみたいだった。何故か、パパの企みを知っているようだったわ。眠っているように見えても、親のドラゴンは人の会話は聞いていたかもしれないわね。でもそれをココモちゃんが何故知っているのかしら。可能性としては卵の中のココモちゃんに親ドラゴンが話していたのかもしれないわ。もう十分生まれてくる時期になっていても、あの親は産まなかった。セーン様が国境に来た時に産んで、通り道に置いていたのよ。きっと」

「そんな知恵があったって言うのか、あの瀕死のドラゴンに」

「そうよ、セーン様にココモドラゴンを復活させてほしいってことが、あのドラゴンの一縷の望みだったの、思い通りになって欲しかったでしょうね。もしや、もう叶うと信じていたかもしれないわ」

「ずいぶん買いかぶってくれるけど、その根拠は何処にあるかって事まだ、言ってないよね」

「みんな知っているのよ、この国は噂好きなの。セーン様が北ニールの教会に行って、水晶に手をかざしたら、真っ黒だったってこと、知らない者はこの国には居ないわ」

「くーっ、やっぱりね。デマだよ、そんなの。濃い紫だった。これは北ニールの俺らの神に誓える」

「いいえ、セーン様はすぐ帰ったから知らないのよ。セーン様とニキ様が帰った後に、その水晶は真っ黒になったそうよ」

「そんな話、きいてないよ、能力判断の証明書、原本らしいの手紙でくれたけれど。真っ黒な水晶の話は本人の俺に言ってない。どうも信じられないよ」

「きっと教えたくなかったんだと思うわ。それにパパはその能力をいただくつもりだから、あえて話題にしなかったのよ」

「えーと、その能力いただきの件、俺はいまいち理解できない」

「あのね、あたし達のどちらかが、セーン様を誘惑して、結婚して、セーン様の子供を生むわけ。そうしたら、遺伝でセーン様の能力を持った子が生まれるという事。そしてその能力を魔法使いが、パパに移す呪文をかけるのっ。魔法使いが城からセーン様に私を孕ませる気になる魔術を仕掛けたのっ」

「ハアッ、ラマセル魔術仕掛けただとうおっ」

 セーン、やっと理解した。セーンとて、さほど理解が早いわけではなさそうだ。水晶真っ黒の噂の件、真実かどうかは疑わしいと思えるのだが・・・

「おのれっどうしてくれようかっ」

「とりあえず、セーン様はお国へ戻られては?私、覚悟は既に致しておりますの」

「何の覚悟だっ。あほう、たまには親に逆らえよ。チーラ。お前は今から別棟に行って双子のちびにココモちゃんを見せてやるとか言って連れて来い。でかい双子はもう察して移動中だな。一緒にニールに行くんだ。ヤモちゃん、帰るぞ。ココモちゃんとヤコちゃんも連れて行く。・・・どうした、動きが遅いが、具合でも悪いのか」

 ヤモちゃんはチーラの言った事が微妙に胸に刺さり、つまり微妙に心が傷つき、ふてくされて、ココモちゃんのお愛想すり寄りをぐうではねつけている。

「ヤモちゃん、魔術は孕ませ方向だけで、ココモちゃんはヤモちゃんが好きなのは事実だからな。不自然なのは孕ませたとこだけだから、邪険にするなよ」

「かったるいんだよ、こいつ」

 何時に無く感情的なヤモちゃんに、セーンは少し冷静になる時間が居るんだろうと察し、

「ココモちゃん、ヤモちゃんはしばらくそっとしておこうな。お前自分の荷物揃えるの、出来るよな」

 言えば、ココモちゃんは嘴で、自分の入っていた籠に(今は入るには小さすぎる代物)エサ入れやタオルなど入れている。ヤコちゃんもココモちゃんの真似を始めた。随分利口だと思えた。

 チーラの動きも鈍かったから、チーセンとラーセンが弟達を連れて来た。セーンはそれを見て彼らは世話無しで済むんだなと思う。

「みんな揃ったな、じゃあ行くか。しかしニキ爺さんちと、リューン叔父さんとどっちの方が無事な確率が多いかだけど」

 ヤモちゃんはやっと冷静に、

「ニキ爺さんちじゃないと。壁の上一家は今、ぐーたら気味だからな。異変が分かる位置に居るべきだな」

「じゃぁそーしよう。ヤモちゃん移動半分受け持て」

「良いけど、みんな自分の面倒は自分で出来そうな感じだ」

「じゃぁ、手をつないで俺らは行先に気を付けておけば良いだろな」

 こうして、セーン一家大移動で、獣人国からずらかったのだった。


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