プロローグ
作者の執筆パターンでは、いつも見切り発車的に書き終える前に投稿するので、内容と題名などがそぐわなくなる傾向があります。いつも読んで下さる方は承知されているでしょうが、後半には作者の大ぼら的内容の話がほとんどの小説に出てきます。時にはとんでもない内容が含まれることがありますが(前作の魔の空洞等)、そういう性格の作者が書いた話ですから、ご理解いただける方はどうぞ楽しんでください。付き合いきれなく思われる方は、どうぞ立ち去ってください。そうは言っても、最後まで読んでいただきたいものです。きっと、こんな小説でも読み終わればあなたの糧となっていると、作者は勝手に信じています。
ここはセピア公国の片隅にある町の町唯一の娯楽施設、映画館と一体になったショッピングセンターの一角にあるゲームコーナー。
従兄弟で同じ年齢のシュー・ソールと、ジェイ・グルードは、遊ぶ資金を全てスロットマシンですってしまい、がっくりきている所で、行きずりの親切すぎる見知らぬ男から金を渡され、どうしたものかと固まって考えていた。
「さあさ、今日のおじさんは気前が良いんだ。気にせずこれでゲームしてみようよ。きっと勝つから、そうしたらおじさんに金を返せばいいじゃないか。おじさんとしては、別に返してくれなくても良いんだけどね。僕たちが、気にしているみたいだから、こう提案しているのさ。勝ったら返せばいいってね」
気前のいい人風に、にっこり笑う得体のしれないおじさんである。
「どうする、ジェイ」
少し、悩んだ末に誘惑に負けそうなシューが、相棒のジェイに意見を聞く。
いつものパターンで決定はジェイがする。
「要りません。俺らもう飽きたから帰ろうと思っているので・・・」
「ふうん、ジェイは飽きたって、でも、こっちの坊やはまだ遊びたいって顔だね」
ジェイはシューを睨むと、
「帰るぞ」
と、シューの腕を持って出口へ引きずっていこうとした。シューはその手を振り切り、
「嫌だね、俺はもう一回試したいんだ」
ジェイは腕を振り切られながらテレパシーで、
『こいつ怪しいぞ、ブロックしていやがる』
『ブロックねぇ』
仕方なく、
「俺、やっぱり帰ろ」
と言って二人で出入り口付近の方へ行こうとすると、
「そうはさせられないんだがね」
そう言って、シューのもう一方の腕をひねった。
「痛いっ」
すかさずジェイはその男に渾身の一発をお見舞いした。
男がよろけた隙に、2人で走って逃げた。自動ドアを抜けると、外には数人の見知らぬ男たちが居て、ジェイとシューを取り囲んで、
「そう怯えなくていいのに、あるお方が君たちに用があるのさ。話だけでも聞いて、断りたけりゃ断って良いんだ。さあ行くよ」
二人は瞬間移動ができる男に捕まり、気を失いそうになったが、何とか踏ん張って移動先へ到着した。
着いた所にはやけにハンサムな男が居て、にっこり笑うと、
「君たちは、従兄弟君だね。私は君たちの伯父さんなんだよ。宰相のリーだ。よろしくね。君たちのお爺さんのニキの甥になる。父親はすでに若い頃魔物にやられて死んだんだが、その一人息子の俺がイーバン公爵家に養子に行ったのさ。ユーリーンの実の母親は先代王の後妻になって王太子を産んだ。と言うのも前王妃は娘しか生んでなくて、ユーリーンの母親の産んだ子が王になり、次の代のがどうやら例の魔の空洞に吸い込まれて死んだようでね。そいつが現王だったんだが。そう言う訳で、今は、王になれる奴はユーリーンの孫の内の誰かって事になるんだよね」
聞いたことのない話をされ、戸惑う二人だ。
「どういう事?」
「話が変だって?そうなるんだよ。みんな魔の空洞にすいこまれたからね。その話じゃないって、あ、知らないのかな。ユーリーンのママだった前王妃は先々代王の娘でね。だからユーリーンの孫は全員王位継承権があるよ。生き残った王家の血筋は、ユーリーンの子孫って事になるよ。俺も先代王の孫だよ。先代王の娘(俺の母親の事だよ)がソロスロ家長男に降嫁しているんだ。だが俺は宰相やっているからね。実の所、王より宰相の方が役処としては、重要人物なんだ。分かるだろ。どっちが出来る男がなるかってのね。王になる血筋が、君たち二人でどん詰まりだな。他にもいるだろってか。年上のが大勢ねぇ。皆断られているんだ。君らが一番年下でね。ジェイは違うって?違わないよ。ユーリーンやリューンのパパも先先々代王の落とし胤のその息子だったんだ。つまりユーリーンとリューンのパパはユーリーンのママとは従兄妹どうし、そして先代お館様とは種違いの兄弟だったんだよ。王家って言うのは親類同士でお付き合いする傾向があるね。それでかな、能力者が出やすいね。そういう才能の血の濃さかな」
シューとジェイは、話を聞いてすっかり嫌になった。
「来なきゃよかった。リー、俺らを帰す気ないな。どっちかが王になるって言うまでは。どうするジェイ」
「じゃんけんはどう」
「嫌だね。ジェイは後出しで勝つだろ」
「あみだくじ?」
「透視するよね」
『逃げるか』
『せーの』
そこで、リーに二人は腕をむんずと捕まえられた。
「逃げようったってそうはいくか。どうせお前らは決められないんだろうが。俺が決めてやるよ。ジェイだな」
「なんで俺なんだよ。シューにしろよ」
「シューはめんどくさい親達が居るからな。その点、ジェイは父親が長年の恋人と新婚で浮かれ中、考えが及んでいない。つまり反対されないって事だ。それに、ジェイは隠し子扱いだし」
がっくりと頭を垂れるジェイ。
「可哀そうだな。ジェイ、俺にはどうしようもない。ごめん」
「変わってやろうって気にはならないのか」
「ぜんぜん」
「酷いや。お先真っ暗って感じ」
「くそう、ジュールの奴に隠し子がまだいそうな気がするよ。探してみるから、期待せずに待ってろよ」
「何だよ、シュー。その言い方。俺を置いて帰る気か。俺だって帰る」
すると、リーにまた拘束されたジェイ。
「ジェイはもうここに居なくちゃね。気が変わらない内に生存している人々に発表しよう。少しは希望が湧いてくるんじゃないかな」
「ちっぽけな希望なんか、遭っても無くても大して変わらないんじゃないかな」
必死で抵抗するジェイに、真顔でリーが否定する。
「それは違うよ、ジェイ。皆、復興を目指している。で、とりあえず祭り上げる王を皆は求めているんだ」
少し怖い。