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#不思議系小説 の時間です。  作者: 佐野和哉


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8/8

恍惚の海

日本いか連合さんの

#春のホタルイカ祭り

参加作品です。

タイトルの由来ですが恍惚の恍という字は小さな光と書きますね。

ホタルイカじゃん!

というわけで、これになりました。


「生きたままホタルイカに生まれ変わるも知性の働き方の違いとキャパシティの差でエラーを起こしてる男」のイメージ。ホタルイカって腕、目玉、皮膚が光るらしくて、そのモチーフを入れました。

またなるべくルシフェリンとか、ホタルイカという名前とか、そういうのも使わずに書きました。

1000文字未満なので、さっくり読めます。

ざぶんと潜るつもりで読んでみてください。

 深く暗い海に、低く重い雲が圧し掛かる。

 漣が爪先を洗うように、後悔と焦燥の砂浜に寄せては返す。

 足を踏み入れる。後悔と焦燥の数だけ青白い光の踊る深く暗い海へ。膝から肩へ。苦しさは悦びへ、悦びは恍惚へ。小さな光が無数に踊る。暗く深い海の中で。

 

 やがて体の温もりも、水の冷たさも、波の揺らぎにも気づかないまま歩き始める。見上げた海には青白い光の群れ。明滅する光の群れ。泳ぎ回る光の群れ。

 腕が、瞳が、素肌が光る。濡れて滑る粘膜の肌が。

 記憶の中を泳ぎ回る青白い光が明滅を始める。仄暗い海の底から。記憶の中で歌い始める青白い光が明滅を繰り返す。仄暗い海の底から。それは好きだった日々、好きだった場所、好きだった人、好きだった音、好きだった匂い、好きだった声、そのときの空、そのときの風、そのときの海、そのときの光。


 ゆらめく影はよみがえる悪い夢のように時を撫でてゆく。頬を伝う涙も体温だけを残して溶けて混ざって消えてしまってく。海になった涙は誰にも気づかれないうちに世界を駆け巡って、駆け巡って、駆け巡って帰って来て、また新しい涙になってこぼれてく。

 その透明に溶けた雫の中にうつる全て逆さまになった世界を包む光る腕。呼吸を止めてみる。血が青くなる。苦しさも忘れてゆく。やがて眼の中に光が舞い泳ぐ。

 足も腕も目玉も素肌も光を放って消えて光って。白い外套、光る涙、滑る素肌、すり抜けた腕、泳ぐように走る脚、走るように泳ぐ街、街は華やいで深海の水族館のお土産屋さんのスノードーム。逆さまの景色が一つひとつ並ぶ無人の店に僕の記憶もひび割れて置き去りになってる。深海の片隅の真っ暗な水族館。訪れる人もなく水槽もエレベーターも非常階段も水没して数百年。目覚めることなど、もうないと思ってた。触れる人など、もう居ないはずだった。

 

 小さな光が揺らめく悪夢。

 小さな光がきらめく悪夢。

 暗く深い海に、低く重い雲が圧し掛かる。

 漣が真夜中を洗うように、後悔と焦燥の砂浜を濡らしている。

 僕は一人で水族館を出た。街は夜明け前。見上げた紫の空にあぶくが舞い上がる。青白い光の群れがそれを追いかけて消えてゆく。大きなシルエットを形作ってた無数の小さな光る生命いのち


 まだ脳は海の中、

 まだ脳の海の中。


短いけど、私こと佐野和哉さんはこういう文章を書いてる時がいっちばん幸せ、というのが表せたと思います。たまたまモチーフがホタルイカとその連想であって、いつもこんなことを想像しては文章にしております。

楽しんでいただけましたでしょうか。

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