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第19話 友人からの相談

 サンクチュアリと王国との間に穏やかな交流が始まって数ヶ月が過ぎた。

 季節は春から初夏へと移り変わる。

 月に一度、私のお菓子を王国へ届けるというお役目もすっかり定着した。


 その日も、王国の連絡係が先月届けたお菓子の礼を伝えにやってきた。

 そして彼は私に一通の手紙を差し出す。

 エリオット陛下からの私信だった。

 今ではこうして手紙のやり取りをするのが私たちの習慣となっている。


 私は早速封を開け、その手紙に目を通した。

 そこにはまず、私の焼いたお菓子への感謝の言葉が綴られていた。

 そして国の復興が順調に進んでいることへの報告。

 その丁寧で誠実な文章から彼の人柄が伝わってくるようだ。


 私は微笑ましく思いながら手紙を読み進めていく。

 だが、その最後の一文に私の目は釘付けになった。


『追伸。これは王命ではない。ただ友人としての相談だ』


 その前置きに私の胸が少しだけ高鳴る。

 友人。彼が私のことをそう思ってくれている。

 それが素直に嬉しかった。


 私は続きを読む。


『我が国と長年交易のある南の砂漠の国で今、原因不明の熱病が流行しているとのこと。高熱が続き薬も効かずに衰弱していくという。もし何かあなたの菓子で力になれることがあるやもしれぬ。……もしよければ、知恵を貸してはもらえないだろうか』


 ◇     ◇     ◇


 その日の夕食後。

 私はその手紙を皆に見せ相談した。

 テーブルを囲むのはいつものメンバー。

 エレノア様、フィオナさん、そしてクラウスさん。


「……南の砂漠の国、サハディールか」


 エレノア様が腕を組み唸るように言った。


「暑くて乾燥した土地だ。熱病が流行ると厄介なことになる」

「原因不明というのが気になりますね」


 フィオナさんが心配そうに眉をひそめる。


「ただの病ではないのかもしれません」


 皆の視線が私に集まる。

 私のお菓子で何とかできるだろうか。

 だが私はまだその国のことも病のことも何も知らない。

 これまでのようにお菓子を送るだけでは解決しないかもしれない。


「……リリア様はどうなさりたいのですか」


 クラウスさんが静かに私に問いかけた。

 彼のその真っ直ぐな瞳は私の決断を促しているようだ。


 私は手紙に書かれた「友人としての相談」という言葉を思い出していた。

 エリオット陛下は私を頼ってくれている。そしてその先には病に苦しむ人々がいる。

 私にできることがあるのなら。


「……私、行ってみたいです。そのサハディールという国へ」


 私のその言葉に皆が目を見開いた。


「現地の気候や産物を知ればきっとその土地に合った特別なお菓子が作れるはずです。それに病に苦しむ人々の顔を直接見れば私の力もきっと強くなる」


 それは無謀な挑戦かもしれない。

 だが私の心はもう決まっていた。

 私の焼くお菓子で救える命があるのなら、私はどこへでも行こう。


 私の決意を感じ取ったのだろう。

 エレノア様がふっと笑った。


「はっ。言うようになったじゃないかリリアちゃん。いいだろう。その旅、あたしたちがっちりガードしてやるぜ」


 こうして私の初めての「出張お菓子作り」が決まった。

 それはこのサンクチュアリから外の広い世界へと踏み出す大きな大きな一歩。

 私の物語がまた新しいページを開こうとしていた。

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